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多発性骨髄腫
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診断
診断基準は病期により異なるが、以下より3項目を確認することが多い。各項目は多発性骨髄腫に必発の項目ではない。骨髄のコア生検が重要である。
- 単クローン性ガンマグロブリン血症(形質細胞による抗体産生。IgGが多く、IgM、IgAも含む。)
- 腫瘍性形質細胞もしくは骨髄の形質細胞増加症
- 骨融解像(パンチアウト)。中軸・四肢骨格をチェック。
- 高Ca血症(骨融解によるものがメイン)
- 骨融解はIgMが大量に産生される時に生じることが多い。
- 尿中へのベンスジョーンズ蛋白(免疫グロブリンL鎖)
- ベンスジョーンズ蛋白尿は多発性骨髄腫、アミロイドーシス、腫瘍性病変を示唆する。
発生部位
脊椎(主に腰椎)、頭蓋骨、骨盤、四肢骨格
症状
発生部位により様々。
- 疼痛、跛行、発熱、失禁、痴呆、出血傾向(鼻出血、腸管出血)、失明、多飲・多尿、脾腫大、頻脈、うっ血性心不全、元気消失、発作、失明、運動失調、出血傾向、多飲・多尿、アミロイドーシス(過粘稠度症候群)
- 免疫の低下(免疫グロブリンは増加するが、正常な免疫グロブリンは逆に低下するため)
病態生理
- 止血異常
- 血小板減少症、TP上昇(フィブリノーゲンに吸着し、Fibへの変換を障害)
- 視覚異常
- (過粘稠度症候群
- 頻脈、うっ血性心不全
- 高TPによる微小血管への流量減少、低酸素症
血液学的検査
貧血、好中球減少、血小板減少、好酸球増加
血液生化学検査
- Alb↓、Glob↑、
- 高Ca血症(多飲・多尿を引き起こす原因)
- 機能性形質細胞が破骨前駆細胞を活性化させるリガンドである RANKL(Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand)を介して破骨細胞が活性化されるため
- BUN、Cre、ALP、ALTの上昇
尿検査
- ベンスジョーンズ(B-J)尿蛋白(通常のスティック検査では検出されず)、
- 蛋白、等張尿、円柱、細菌など。
治療
- メルファラン‐Pre
- シクロフォスファミド;メルファランを使用しても血中Ca濃度が下がらない場合に使用。シクロフォスファミドに変更後、血中Ca濃度が低下したら、再度メルファランに戻す。
- ビスホスホネート系
;骨表面に蓄積し、破骨細胞誘発性再吸収を阻害して骨の形成に有利に働く。それにより癌性痛緩和用を発揮。その他、血中Ca濃度を下げる、仮骨細胞を抑制する、抗癌作用などが期待できる。
- エチドロン酸二Na;0.5mg/kg,SID,SC、または5.0mg/kg,SID,PO
- クロドロン酸Na;20~40mg/kg,SID,PO、または20~25mg/kg,4時間かけてIV
- パミドロン酸二Na;1.3mg/kgを生食150mlに溶解し、2時間かけて点滴,7日ごと
0.05~0.1mg/kg、頻度は様々(目安は3週間に1回)。
経過観察 一般血液検査と血小板数の測定;毎週 蛋白分画・電気泳動法;毎月
注意すべき合併症
- 過粘稠症候群
- 出血
- 二次感染
- 病的骨折
抗がん剤による副作用
- 骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)
- 胃腸障害
- 肺浸潤・線維症