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多発性骨髄腫

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診断

診断基準は病期により異なるが、以下より3項目を確認することが多い。各項目は多発性骨髄腫に必発の項目ではない。骨髄のコア生検が重要である。

  1. 単クローン性ガンマグロブリン血症(形質細胞による抗体産生。IgGが多く、IgM、IgAも含む。)
  2. 腫瘍性形質細胞もしくは骨髄の形質細胞増加症
  3. 骨融解像(パンチアウト)。中軸・四肢骨格をチェック。
  4. 高Ca血症(骨融解によるものがメイン)
    • 骨融解はIgMが大量に産生される時に生じることが多い。
  5. 尿中へのベンスジョーンズ蛋白(免疫グロブリンL鎖)
    • ベンスジョーンズ蛋白尿は多発性骨髄腫、アミロイドーシス、腫瘍性病変を示唆する。

発生部位

脊椎(主に腰椎)、頭蓋骨、骨盤、四肢骨格

症状

発生部位により様々。

  • 疼痛、跛行、発熱、失禁、痴呆、出血傾向(鼻出血、腸管出血)、失明、多飲・多尿、脾腫大、頻脈、うっ血性心不全、元気消失、発作、失明、運動失調、出血傾向、多飲・多尿、アミロイドーシス(過粘稠度症候群
  • 免疫の低下(免疫グロブリンは増加するが、正常な免疫グロブリンは逆に低下するため)

病態生理

止血異常
血小板減少症、TP上昇(フィブリノーゲンに吸着し、Fibへの変換を障害)
視覚異常
過粘稠度症候群
頻脈、うっ血性心不全
高TPによる微小血管への流量減少、低酸素症

血液学的検査

貧血、好中球減少、血小板減少、好酸球増加

血液生化学検査

  • Alb↓、Glob↑、
  • 高Ca血症(多飲・多尿を引き起こす原因)
    • 機能性形質細胞が破骨前駆細胞を活性化させるリガンドである RANKL(Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand)を介して破骨細胞が活性化されるため
  • BUN、Cre、ALP、ALTの上昇

尿検査

  • ベンスジョーンズ(B-J)尿蛋白(通常のスティック検査では検出されず)、
  • 蛋白、等張尿、円柱、細菌など。

治療

  • メルファラン‐Pre
  • シクロフォスファミド;メルファランを使用しても血中Ca濃度が下がらない場合に使用。シクロフォスファミドに変更後、血中Ca濃度が低下したら、再度メルファランに戻す。
  • ビスホスホネート(ビスフォスフォネート)系
    • 骨表面に蓄積し、破骨細胞誘発性再吸収を阻害して骨の形成に有利に働く。それにより癌性痛緩和用を発揮。その他、血中Ca濃度を下げる、仮骨細胞を抑制する、抗癌作用などが期待できる。
  • エチドロン酸二Na;0.5mg/kg,SID,SC、または5.0mg/kg,SID,PO
  • クロドロン酸Na;20~40mg/kg,SID,PO、または20~25mg/kg,4時間かけてIV
  • パミドロン酸二Na;1.3mg/kgを生食150mlに溶解し、2時間かけて点滴,7日ごと
  • 治療後も

一週間ごと:一般血液検査と血小板数の測定 一カ月毎:蛋白分画・電気泳動法(外注)

注意すべき合併症

抗がん剤による副作用

  • 骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)
  • 胃腸障害
  • 肺浸潤・線維症