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論文検索

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このページは論文検索のFAQやTIPSを公開して行くページにして行こうと思います。

※編集にあたって、どうしても主観に頼らざるを得ない部分もありますので、参照される際にはその点をご了承ください。(この記事は過去にvetcheersのなかのひとに書いて頂きました)

文献検索概論

検索の流れ

  1. 対象となる分野がどこか
  2. 文献検索サイトを選択する
  3. タイトル、アブストラクトから文献を絞り込む

文献検索サイトの選択

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たとえば図書館で微生物学分野の本を探すとき、医学や生物学のコーナーへ向かうでしょう。そしてその棚の中から目的に合った本を手に取るはずです。現在では多くの論文が電子化されていますが、それはweb上で論文を探すときも同じことです。

web上でそれぞれのコーナーに相当するのが、各出版社や政府機関などの運営する文献データベースです。MEDLINEや医学中央雑誌のような医学系、AGRICOLAのような農学系、その他にも日本の文献を包括的に集めたものなど、色々なデータベースが存在し、その"棚"を閲覧するにはそれぞれに対応したサーチエンジンを使う必要があります。そんなサーチエンジンを利用できる検索サイトもいろいろあり、多くの機能が実装されていたりしますが、無料のものだけでなく有料なものも多く存在しています。どの検索サイトを選択するのかは、論文を探すのに重要なポイントです。~

検索サイトの選び方のポイント

上で述べたように、求める文献を探すためには、利用するデータベース検索サイトの選択が重要になってきます。 例えば、PubMedを使っても日本語の文献はみつけられないでしょう。日本語の文献をみつけるなら医学中央雑誌やCiNii、Google Scholarを使うのがベターです。そのように、検索サイトを選択する際のポイントを以下に例示してみます。

  • 分野:生命医学、 法学、 心理学、
  • 年代:80年代、 1年以内、
  • 地域:日本、 アメリカ、 ヨーロッパ
  • 言語:日本語、 英語
  • 種類:論文(Review、Original article、Editorial)、 書籍、 会議録、 政府統計
  • 注目:被引用数、 閲覧数、 雑誌のネームバリュー

検索式

演算子
キーワードを組み合わせてより複雑な検索を行うための記号。
AND,OR(|),NOT(-)など。
ワイルドカード(トランケーション)
キーワードの一部を可変にするための記号。
*,$,?など。

パラダイムの把握

検索自体は簡単なことですが、研究するためという目的を考えると、単純にキーワードにひっかかった文献を読むだけでは意味がありません。研究デザインを精錬するためにも、研究を始める前にその領域でどのようなことが知られ、調べられているのかを把握することが不可欠です。そのためにはいくつかの方法があります。

  • 年代ごとに代表的な文献を探る
  • 引用文献や関連文献を辿る
  • 教科書や総説(Review)にあたる

批判的吟味(Critical Appraisal)

証拠の水準(Evidence Level)

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・それぞれの文献が科学的な証拠としてどれほどのものであるかを、研究デザインによって分類したもの。
・団体や文献によって細かな部分については違いもあるが、
単独の研究として最も優れた研究デザインは、盲検化された上で(Blinded;あるいは目の不自由な方への配慮から最近ではMaskedと呼ばれることもある)
無作為化して対照を設定した研究(Randomized Controlled Trial:RCT)であるとされる。
・全ての文献の中でエビデンスレベルが最も高いのは、様々な文献を系統立てて概説したもので、システマティックレビューという※。
・ちなみに、混同されがちだがメタアナリシス(図. Jeffersonら 2007より例示)とはRCTの結果をいくつか集めて解析する手法のことであり、これを行っているシステマティックレビューは概して質が良いと考えられる。
・なお、教授や先輩獣医師の"意見"(学術雑誌の中ではEditorialの形をとる)にはどうしても思い込みや経験の偏りが存在するのでエビデンスのレベルとしては最も低い位置づけである。~

※1つの結果だけでは、統計的に有意だったとしてもまだエラーが存在する可能性があるため。例えばp=0.05(つまり有意水準が5%)であれば間違っている可能性が5%残っている。
これを第1種の過誤(α error)と呼ぶ。一方、稀に見る疾患などにおけるサンプル数をできるだけ増やして再解析する目的もある。
サンプル数が不足したために有意差を見逃してしまうことを第2種の過誤(β error)と{| class="wikitable"

Royal College of Physiciansの証拠水準表

証拠水準 証拠の種類
1a 無作為化対照試験のメタアナリシス
1b 1つ以上の、無作為化対照試験
2a 1つ以上の、よくデザインされた非無作為化対照試験
2b 1つ以上の、よくデザインされた準実験的な研究
3 1つ以上の、よくデザインされているが、非実験的な記述的研究
4 専門機関の報告・意見、あるいは/また、その分野の権威の経験
Single Blind 被験者にわからないようにする
Double Blind 被験者と接する試験者・評価者にもわからないようにする
Triple Blind 統計処理にかける技術者にもわからないようにする

インパクトファクター(Impact Factor:IF)

その“学術雑誌が”ここ数年でどれだけ引用されているのかを表す数。その雑誌の最近の注目度あるいはネームバリューにあたるとでも考えておけばよい。
雑誌の影響度を推量するために引き合いに出されることが多いが、各論文ごとの被引用数とは異なるので、
論文単独の価値判断に利用するのは正しくない。また、以下のような問題もある。

  1. 身内による引用が多くなりがちである
  2. 批判的な引用の場合でも被引用数として計上される
    :注目されているのは確かかもしれないが、それが品質を保証するものとはならないということになる。
  3. 分野ごとにIFの価値が異なる
    :研究者人口の多い分野ほどIFが高くなり、逆にマイナーな分野ほどIFは低くなる。そのため他分野との比較の参考にはならない。
  4. 最近数年ぶんの被引用数しか計上されない
    :その雑誌の過去の業績などは無視されてしまう。
  5. ISI社のみによる基準である
    :あくまで(Web of Knowledgeを運営している)ISI社一社のデータベース「Journal Citation Reports(JCR)」に基づいたものであり、そのISI社に登録されていない文献は対象外となる。またIFを調べるためには契約が必要なので、限られた環境でしか知ることができない。


ホームページやWikipediaについて

ホームページというのはアクセスが簡単だが、いつでも構成が変わる可能性があるので、あまりそれを引用することは勧められていない。公的機関(ex 農水省)や大手新聞社のサイトであればある程度信用もできるというものの、受け取る側の人(雑誌)によって解釈は様々である。いずれにしても、引用する際にはそのページをプリントアウトし、参照した日付も記録しておくことは必須である。
Wikipediaは様々な人の知識が集められて構成されることから「群衆の英知(wisdom of crowd)」と呼ばれ、かのNature誌をしてブリタニカ百科事典と同等にまで正確な情報となりうると言わしめたものである。しかしこれもまた、その性質上いつ誰に修正されるかわからず、保証の得られるものではない。あくまで情報のとっかかり程度に止めておくべきである(つまり、参考にするのはよいがレポートなどで引用すべきではないと考えられる。そしてそれはこの獣医志Wikiについても同様である)。|

文献検索サイト

国立生物工学情報センタ PubMed


米国の医学系文献データベースであるMEDLINEを検索するために開発されたポータル。自分で式(クエリ)を組み立てれば基本的な検索のほかにもそれなりに色々な検索が可能だが、プログラミングの知識がある人でなければ困難。
検索ワードに「"~"[Author]」と入れると、著者名を条件に加えることができる。

医学中央雑誌


略して“医中誌”と呼ばれる、日本産の医学系文献の検索サイト。入力したワードだけでなく、それに類似した用語についても同時に検索してくれるシソーラス機能がついているので、大雑把に検索するときの当たりが多い。学術雑誌だけでなく会議録なども対象になる。

GeNii


国立情報学研究所の運営する文献検索エンジンであるCiNiiのほかに、書籍を検索するWebcatPlusやKAKEN、NII-DBRをまとめて検索するコンテンツポータル。本文へのリンクの中には、無料で閲覧できるものも存在する。

Webcat


それぞれの雑誌がどの図書館に所蔵されているのかを調べることのできる検索エンジン。文献の複写依頼を出すときや、近くの図書館で文献を参照できないのかを調べるのに利用される。[[WebcatPlus>http://webcatplus.nii.ac.jp/]]というのはそれを拡大して一般の書籍情報も見られるようにしたものだが、使い慣れたWebcatで済ませているユーザーのほうが多い([[GeNiiユーザビリティ調査 2006>http://webcatplus.nii.ac.jp/enquote_result.html]])。

Web of Knowledge


「一流紙は全て登録する」というコンセプトのもとに作成されている独自のデータベースWeb of Scienceなどにつながる入口。文献の引用・被引用関係やプロフィールを全て自前で入力しており、引用・被引用関係からはインパクトファクターの算出(Journal Citation Reports:JCR)や類似文献の探索が、プロフィールからは検索結果を年代や分野や地域など様々な項目について頻度分析や絞込みが可能になっている。そのように検索と解析が統合されており、文献の位置づけを知ることができるという点で非常に強力だが、所属している大学で契約していなければ利用できない。
CAB Abstractsや速報情報にあたるCurrent Contentsなどへも連動する。

Google Scholar


その他の文献検索エンジンとはちょっと毛色が違い、データベースというよりもウェブ上のファイルを洗いざらい検索するイメージ。ヒット数は他の検索エンジンとは比べ物にならないほど多いが、ノイズ(関係のない検索結果)も多いというのが最大の特徴。 一般的なGoogleと基本的な操作は一緒で、日本語で検索すれば日本語の、英語で検索すれば英語の文献がヒットする。検索対象は分野や発行元を問わず学術専門誌、論文、書籍、要約、記事など。引用文献もたどることはできるが、引用文献リストに基づいているわけではなく、あてにできない。
「author:~」と入力すれば著者名を条件に加えることができる。

文献管理ソフト

文献をデジタル管理するためのソフト。文献管理だけではなく、論文執筆の際に半自動的に引用文献リストを作成する機能も備えている。また、中には文献データベースと連結していて、ソフトウェアから直接文献検索を行えるものもある。

Win・Mac用

  • [[EndNote>http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/endnote.html]]
  • -Web of Knowledgeと連結しており、ワンクリックで文献リストに登録可能。そちらを経由して登録した文献については、ソフトウェアの文献リスト上でインパクトファクターや被引用数を確認できる。通常のデスクトップ版は高価だが、ISI社と契約していれば[[web版>http://www.myendnoteweb.com/]]は無料で使用できる。
  • -Word用プラグインをインストールすると、Word上で文献リストを参照・編集することも可能。
  • [[RefWorks>http://www.sunmedia.co.jp/e-port/refworks/]]
  • -Elsevier社のデータベースScopusと連結している。
  • -医中誌からも連結可能(ダイレクトエクスポート)。
  • -こちらもWord上で文献リストを参照・編集することが可能。

Win用

  • [[Ref for Windows>http://members3.jcom.home.ne.jp/refwin/]]
  • -日本の研究者が作成しているフリーの文献管理ソフト。
  • -ソフトウェア上でPubMed検索可能、組版プログラムであるTeXに対応しているなど高機能。EndNoteとのインポート・エクスポートも可能。
  • -解説書(テキストブック)や質問集が公開されていたり、掲示板でサポートされていたりと、ユーザーに優しくてとっつきやすい。

Mac用

  • [[iPapers>http://ipapers.sourceforge.net/iPapers.html]]
  • -インターフェイスがiTunesと似てるので親しみやすくて良いです。
    PDFを管理できます。インテルマックは対応してるかどうかは不明
  • [[refEDITX>http://www.vector.co.jp/soft/dl/mac/edu/se331174.html]]
  • -インテルマックに対応しているので非常に重宝してます。奥田 充さんと言う農林水産省勤務の方が作ってくれた物で、パッチ入れなくても日本語に対応しているため分かりやすいです。
  • [[BibCompanion>http://www.surf.nuqe.nagoya-u.ac.jp/~nakahara/Software/BibCompanion/]]
  • -日本語対応。管理人も使ってます。多機能!
  • -設定はmacユーザーはエンコード形式はマックOSX日本語を使用。行末コードはLF使用がおすすめ。DR(mac)でもいいですが、LFの方が無難。