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「多発性骨髄腫」の版間の差分

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発生部位:脊椎(主に腰椎)、頭蓋骨、骨盤、稀に四肢骨格
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== 発生部位 ==
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脊椎(主に腰椎)、頭蓋骨、骨盤、四肢骨格
  
症状:発生部位により様々。
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== 症状 ==
疼痛、跛行、発熱、失禁、痴呆、出血傾向(鼻出血、腸管出血)、失明、多飲・多尿、脾腫大、頻脈、うっ血性心不全、
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発生部位により様々。
元気消失、発作、失明、運動失調、出血傾向、多飲・多尿、アミロイドーシス(過粘稠度症候群)
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*疼痛、跛行、発熱、失禁、痴呆、出血傾向(鼻出血、腸管出血)、失明、多飲・多尿、脾腫大、頻脈、うっ血性心不全、元気消失、発作、失明、運動失調、出血傾向、多飲・多尿、アミロイドーシス([[過粘稠度症候群]])
免疫Globは増加するが、正常な免疫グロブリンは逆に低下するため、免疫力が低下した状態となっている。
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*免疫の低下(免疫グロブリンは増加するが、正常な免疫グロブリンは逆に低下するため)
  
病態生理
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== 病態生理 ==
止血異常;血小板減少症、TP上昇(フィブリノーゲンに吸着し、Fibへの変換を障害)
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;止血異常:血小板減少症、TP上昇(フィブリノーゲンに吸着し、Fibへの変換を障害)
視覚異常、頻脈、うっ血性心不全;高TPによる微小血管への流量減少、低酸素症
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;視覚異常:([[過粘稠度症候群]]
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;頻脈、うっ血性心不全:高TPによる微小血管への流量減少、低酸素症
  
血液学的検査
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== 血液学的検査 ==
 
貧血、好中球減少、血小板減少、好酸球増加
 
貧血、好中球減少、血小板減少、好酸球増加
  
血液生化学検査
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== 血液生化学検査 ==
Alb↓、Glob↑、
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*Alb↓、Glob↑、
高Ca血症(多飲・多尿を引き起こす原因)、
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*高Ca血症(多飲・多尿を引き起こす原因)、
BUN、Cre、ALP、ALTの上昇
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*BUN、Cre、ALP、ALTの上昇
  
尿検査
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== 尿検査 ==
ベンスジョーンズ尿蛋白(通常のスティック検査では検出されず)、
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*ベンスジョーンズ(B-J)尿蛋白(通常のスティック検査では検出されず)、
蛋白、等張尿、円柱、細菌がみられることもある。
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*蛋白、等張尿、円柱、細菌など。
  
治療
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== 治療 ==
メルファラン‐Pre
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*メルファラン‐Pre
シクロフォスファミド;メルファランを使用しても血中Ca濃度が下がらない場合に使用。シクロフォスファミドに変更後、血中Ca濃度が低下したら、再度メルファランに戻す。
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*シクロフォスファミド;メルファランを使用しても血中Ca濃度が下がらない場合に使用。シクロフォスファミドに変更後、血中Ca濃度が低下したら、再度メルファランに戻す。
ビスホスホネート系
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*ビスホスホネート系
 
;骨表面に蓄積し、破骨細胞誘発性再吸収を阻害して骨の形成に有利に働く。それにより癌性痛緩和用を発揮。その他、血中Ca濃度を下げる、仮骨細胞を抑制する、抗癌作用などが期待できる。
 
;骨表面に蓄積し、破骨細胞誘発性再吸収を阻害して骨の形成に有利に働く。それにより癌性痛緩和用を発揮。その他、血中Ca濃度を下げる、仮骨細胞を抑制する、抗癌作用などが期待できる。
エチドロン酸二Na;0.5mg/kg,SID,SC、または5.0mg/kg,SID,PO
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*エチドロン酸二Na;0.5mg/kg,SID,SC、または5.0mg/kg,SID,PO
クロドロン酸Na;20~40mg/kg,SID,PO、または20~25mg/kg,4時間かけてIV
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*クロドロン酸Na;20~40mg/kg,SID,PO、または20~25mg/kg,4時間かけてIV
パミドロン酸二Na;1.3mg/kgを生食150mlに溶解し、2時間かけて点滴,7日ごと
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*パミドロン酸二Na;1.3mg/kgを生食150mlに溶解し、2時間かけて点滴,7日ごと
  
 
0.05~0.1mg/kg、頻度は様々(目安は3週間に1回)。
 
0.05~0.1mg/kg、頻度は様々(目安は3週間に1回)。
Dr.吉岡にて15kg;2万円
 
  
 
経過観察
 
経過観察
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== 注意すべき合併症 ==
 
== 注意すべき合併症 ==
 
*[[過粘稠症候群]]
 
*[[過粘稠症候群]]
出血
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二次感染
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病的骨折
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抗がん剤による副作用;骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)、胃腸障害、肺浸潤・線維症
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=== 抗がん剤による副作用 ===
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*骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)
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*胃腸障害
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*肺浸潤・線維症

2015年5月26日 (火) 15:49時点における版


診断

診断基準は病期により異なるが、以下より3項目を確認することが多い。各項目は多発性骨髄腫に必発の項目ではない。骨髄のコア生検が重要である。

  1. 単クローン性ガンマグロブリン血症(形質細胞による抗体産生。IgGが多く、IgM、IgAも含む。)
  2. 腫瘍性形質細胞もしくは骨髄の形質細胞増加症
  3. 骨融解像(パンチアウト)。中軸・四肢骨格をチェック。
  4. 高Ca血症(骨融解によるものがメイン)
    • 骨融解はIgMが大量に産生される時に生じることが多い。
  1. 尿中へのベンスジョーンズ蛋白(免疫グロブリンL鎖)
    • ベンスジョーンズ蛋白尿は多発性骨髄腫、アミロイドーシス、腫瘍性病変を示唆する。


発生部位

脊椎(主に腰椎)、頭蓋骨、骨盤、四肢骨格

症状

発生部位により様々。

  • 疼痛、跛行、発熱、失禁、痴呆、出血傾向(鼻出血、腸管出血)、失明、多飲・多尿、脾腫大、頻脈、うっ血性心不全、元気消失、発作、失明、運動失調、出血傾向、多飲・多尿、アミロイドーシス(過粘稠度症候群
  • 免疫の低下(免疫グロブリンは増加するが、正常な免疫グロブリンは逆に低下するため)

病態生理

止血異常
血小板減少症、TP上昇(フィブリノーゲンに吸着し、Fibへの変換を障害)
視覚異常
過粘稠度症候群
頻脈、うっ血性心不全
高TPによる微小血管への流量減少、低酸素症

血液学的検査

貧血、好中球減少、血小板減少、好酸球増加

血液生化学検査

  • Alb↓、Glob↑、
  • 高Ca血症(多飲・多尿を引き起こす原因)、
  • BUN、Cre、ALP、ALTの上昇

尿検査

  • ベンスジョーンズ(B-J)尿蛋白(通常のスティック検査では検出されず)、
  • 蛋白、等張尿、円柱、細菌など。

治療

  • メルファラン‐Pre
  • シクロフォスファミド;メルファランを使用しても血中Ca濃度が下がらない場合に使用。シクロフォスファミドに変更後、血中Ca濃度が低下したら、再度メルファランに戻す。
  • ビスホスホネート系

;骨表面に蓄積し、破骨細胞誘発性再吸収を阻害して骨の形成に有利に働く。それにより癌性痛緩和用を発揮。その他、血中Ca濃度を下げる、仮骨細胞を抑制する、抗癌作用などが期待できる。

  • エチドロン酸二Na;0.5mg/kg,SID,SC、または5.0mg/kg,SID,PO
  • クロドロン酸Na;20~40mg/kg,SID,PO、または20~25mg/kg,4時間かけてIV
  • パミドロン酸二Na;1.3mg/kgを生食150mlに溶解し、2時間かけて点滴,7日ごと

0.05~0.1mg/kg、頻度は様々(目安は3週間に1回)。

経過観察 一般血液検査と血小板数の測定;毎週 蛋白分画・電気泳動法;毎月

注意すべき合併症

抗がん剤による副作用

  • 骨髄抑制(貧血、血小板減少、白血球減少)
  • 胃腸障害
  • 肺浸潤・線維症