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カンピロバクター

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カンピロバクター病Campylobacteriosis

  • カンピロバクター属菌の17種の内、人獣共通感染症として重要なのは、C.jejuni、C.coli及びC.fetus。
  • 食品媒介性感染症(食中毒)
  • サルモネラ、腸炎ビブリオ、ウエルシュ菌の次ぐ発生
  • C.jejuniは広範囲の鳥類、哺乳類が健康保菌し、食肉や水を汚染。カンピロバクター食中毒の90%以上がC.jejuni。動物にはめん羊の流産以外の病原性ない。
  • C.coliは豚から主に分離
  • C.coliはC.jejuniに比べ薬剤耐性率が高い。


病原体

  • 1963年 C.jejuni、C.coli、C.fetusがVibrio属からCamplybacter属に独立
  • 発育に3~15%の微好気状態が必要
  • 乾燥に弱いが低温で湿潤な状態では長期間生存
  • グラム陰性、らせん状の小桿菌。両端あるいは一端に鞭毛
  • 乾燥状態でVNC(viable not culturable)状態となる。
  • ヒトや動物の口腔、腸管、生殖道の粘膜に生息

VNC状態

  • viable not culturable
  • 生きているが培養できない状態を言う
  • 土壌菌で培養できるものは約2%、海洋細菌でも0.1~1%。
  • 生きていることの証明;培地で成長、酵素活性、ATP活性、核酸とリボゾームの染色等
  • 生物学的意義は不明
    • 自然環境適応戦略?
    • 死への過程?
  • 培養可能状態へ戻る(蘇生resuscitation)


動物のカンピロバクター病

  • 牛の流産
    • C.fetus subsp.venerealis
      • 牛伝染性生殖器カンピロバクター病の主因。雄牛の包皮腔内に生残する菌が交配や人口受精を通じて雌に感染し、低受胎や流産を起こす。
      • C.fetus subsp. fetus腸管や胆嚢内に保菌され散発的に流産。
  • めん羊の流産
  • C,fetus subsp. fetusやC.jejuni による。
  • 診断
    • 菌分離(包皮腔液、精液、膣粘液、流産胎児)
    • 蛍光抗体法
    • 膣粘液凝集反応
  • 予防
    • 菌分離陰性の種雄牛からの精液の採取
    • 精液への抗生物質添加


ヒトのカンピロバクター病

  • C.fetus感染症
    • C.fetus subsp. venerealisは牛の胆嚢に保菌されることがあり、生食による散発的な感染。
    • C.fetus subsp. fetusの感染では、敗血症、髄膜炎、心外膜炎、大動脈瘤など。易感染患者で多い。
  • C.jejuni感染症
    • 世界的に食中毒菌として重要視
    • わが国ではサルモネラ、腸炎ビブリオに次ぐ
    • 食肉や飲料水を介した経口感染
    • 食肉として鶏肉が重要
    • 未殺菌乳の摂取による例もある
    • 動物側の清浄化は困難
    • 食肉加工工程の改善による汚染防止必要
    • 調理時の二次汚染の防止
    • フルオロキノロン耐性菌の増加が懸念
  • 症状
    • 開発途上国では子供に限定、非炎症性の下痢
    • 先進国では年代に関係なく発症。炎症性腸炎。
    • 潜伏期1?7日
    • 急性の腹痛、鮮血・白血球・粘液を含む水様下痢
    • 先駆症状として発熱を示すこと多い
    • 一般に自然治癒
    • ギランバレー症候群との関連示唆
    • 易感染患者で敗血症、髄膜炎を起こすことあり

ギランバレー症候群

  • 風邪や下痢の1~2週間後に発症
  • 重度の運動神経に起こる末梢神経炎
  • 脳・神経系に多いガングリオシド(シアル酸を含む糖脂質)との共通抗原による自己抗体が神経を傷害
  • C.jejuni感染症では重症化しやすい
  • 原因は不明な点が多い
  • C.jejuni O19型菌とガングリオシドGM1の関係がよく知られる
  • 診断
    • 菌分離
  • 治療
    • 重症例で対症療法と化学療法
    • 第一次選択薬はマクロライド系(エリスロマイシンなど)
    • フルオロキノロン系に耐性が増加

国内でのニュース

焼き肉バイキングで14人がカンピロバクター食中毒 女子中学生が死亡 - 産経ニュース

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