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+ | *ストレスをできるだけかけずに、原因物質を体から除外もしくは無効化することが治療の原則 | ||
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+ | #便を大量にださせる→たべさせたり(ダイエット食 w/dとか)、プリンペラン(穿孔注意!!) | ||
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+ | #外科的摘出(開腹・・・まれに開胸) | ||
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+ | ==== 毒物摂取後の時間の経過 ==== | ||
+ | 必ずX線をとる。毒物以外を摂取している可能性もある | ||
+ | *30-60分:催吐剤、胃洗浄、活性炭投与 | ||
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+ | 毒物摂取後1時間以内で有効。<br /> | ||
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+ | ===== 催吐を避けるケース ===== | ||
+ | *食道に影響が出そうな化学物質→強酸・強アルカリ、ボタン電池、マニキュア | ||
+ | *食道閉塞の恐れがあるもの→おもちゃ、でかいスーパーボール | ||
+ | *粘膜損傷の恐れがあるもの→とがったものや化学物質 | ||
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+ | ===== トランサミン ===== | ||
+ | *50mg/kgをボーラス | ||
+ | *ラセナゾリンもボーラスで吐く | ||
+ | ===== キシラジン ===== | ||
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+ | *0.44~1.1mg/kg,IM・SC | ||
+ | ===== ヨヒンビン ===== | ||
+ | *0.1mg/kg,IVでキシラジン拮抗可能 | ||
+ | *α2のアンタゴニスト | ||
+ | ===== 3%オキシドール ===== | ||
+ | 1~2ml/kgで経口投与 | ||
+ | *上限 | ||
+ | **犬≦50ml | ||
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+ | ===== アポモルヒネ ===== | ||
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+ | *もしくは1.5~6mgを溶解し、結膜嚢に入れる。 | ||
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+ | ===== 食塩 ===== | ||
+ | *心疾患がある場合はNG | ||
+ | *事前にある程度食事させておく→食道が損傷しないようにするため | ||
+ | *食塩をカプセルに詰めてPO | ||
+ | *その後すぐに大量の水を強制的に飲ませる。 | ||
+ | **食塩と水の量 | ||
+ | ***小型犬・猫→日本薬局方カプセル#2を2~3錠と水30~50cc | ||
+ | ***中型犬 →日本薬局方カプセル#0を3~4錠と水50~80cc | ||
+ | ***大型犬 →日本薬局方カプセル#0を5~6錠と水100~150cc | ||
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+ | ==== 胃洗浄 ==== | ||
+ | *一時間以内に誤食なら検討 | ||
+ | *麻酔が必要であることを伝える | ||
+ | *禁忌 | ||
+ | **重篤な患者 | ||
+ | **誤嚥により化学性肺炎を引き起こす物質→石油系、有機溶剤系など | ||
+ | **消化管穿孔を引き起こすような腐食性物質→強酸、強アルカリなど | ||
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+ | ===== 胃洗滌のやりかた ===== | ||
+ | #全身麻酔をして右横臥位にする。左横臥位にすると液を入れた時に幽門が弛緩して濃度が高いものが移動する。 | ||
+ | #胃チューブを挿入。挿入する長さは、鼻先から最後肋骨まで。洗浄用と排泄用があると便利 | ||
+ | #胃を拡張させるために、温水(体温程度)を5~10ml/kgを入れる。 | ||
+ | #液体を排泄 出てきたものがなにかよく見極める | ||
+ | #胃内容物が簡単に流れないときは、胃チューブの吸引、位置変更、液体や空気でのフラッシュを行う。 | ||
+ | #患者を反転させ、右横臥位にする | ||
+ | #胃チューブから活性炭を投与する | ||
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+ | ==== 活性炭 ==== | ||
+ | *投与量は2~5g/kg。水(1gに対し、5ml)と混ぜたものがよい。 | ||
+ | *毒物服用後1時間以内に投与する。五時間までなら管理人は飲ませてます | ||
+ | *消化管内に存在する物質だけでなく、すでに血中に吸収されている中毒物質の排泄を促進する作用を持つ。 | ||
+ | *毒物を吸着して平衡状態になった活性炭を早く体外に排泄させるために一回だけ下剤投与し、さらに活性炭を繰り返し投与すると効果的(初回投与の半量を4~6時間ごとに、2~3日間投与)。 | ||
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+ | ===== 活性炭が引っ張れない物質 ===== | ||
+ | *強酸 | ||
+ | *強アルカリ | ||
+ | *中性洗剤 | ||
+ | *エタノール、メタノール、 | ||
+ | *エチレングリコール | ||
+ | *パラコート、 | ||
+ | *鉄、硫酸鉄、リチウム、砒素、シアン化物、 | ||
+ | *カリウム、ヨウ素、ホウ酸、臭化物、フッ化物 | ||
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+ | ==== 下剤 ==== | ||
+ | 塩類下剤は最初の活性炭投与の30分後に行う | ||
+ | *ソルビトール(70%);4g/kg(3ml/kg),PO | ||
+ | *硫酸Mg;250~500mg/kg(犬)、200mg/kg(猫)。硫酸Mgに水を混ぜ、5~10ml/kg,PO | ||
+ | *水酸化Mg;10~150ml(犬)、15~50ml(猫)。必要に応じて6~12時間ごとPO | ||
+ | *硫酸Na;250~500mg/kg(犬)、200mg/kg(猫)。硫酸Naを水に混ぜ、5~10ml/kg,PO | ||
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+ | ===== 下剤使用における禁忌 ===== | ||
+ | *閉塞の可能性を回盲結腸部の大きさを参考にする | ||
+ | *ひも状異物 | ||
+ | *粘膜損傷性のあるもの | ||
+ | *消化管通過中に有害物質を溶出するもの | ||
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+ | == 一般家庭によくある中毒物質 == | ||
+ | *チョコレート | ||
+ | *タマネギ | ||
+ | *長ネギ | ||
+ | *ラッキョウ | ||
+ | *アボガド(嘔吐、下痢)、 | ||
+ | *グレープ・レーズン(急性腎不全) | ||
== 中毒物質 == | == 中毒物質 == | ||
− | *[[キシリトール]] | + | *[[キシリトール]](低血糖、肝不全)→ガム大量に食べたりする |
*[[アルコール]] | *[[アルコール]] |
2017年4月9日 (日) 07:38時点における最新版
本ページでは毒性学・薬理学を中心に臨床現場で遭遇する中毒を主に扱います。
駆虫薬・殺虫剤や
飼養衛生:中毒も参考にしてみてください。
目次
中毒物質摂取時の対応の基礎
毒物摂取の治療の原則
- ストレスをできるだけかけずに、原因物質を体から除外もしくは無効化することが治療の原則
- 原則にとらわれてはいけない
- 便を大量にださせる→たべさせたり(ダイエット食 w/dとか)、プリンペラン(穿孔注意!!)
- 催吐
- 内視鏡による摘出
- 外科的摘出(開腹・・・まれに開胸)
毒物摂取後の時間の経過
必ずX線をとる。毒物以外を摂取している可能性もある
- 30-60分:催吐剤、胃洗浄、活性炭投与
- 1時間以上:活性炭投与(吸着目的)
催吐処置
毒物摂取後1時間以内で有効。
4時間以上経過している場合、出せたとしても吸収されているので意味がない
催吐を避けるケース
- 食道に影響が出そうな化学物質→強酸・強アルカリ、ボタン電池、マニキュア
- 食道閉塞の恐れがあるもの→おもちゃ、でかいスーパーボール
- 粘膜損傷の恐れがあるもの→とがったものや化学物質
トランサミン
- 50mg/kgをボーラス
- ラセナゾリンもボーラスで吐く
キシラジン
猫で使用
- 0.44~1.1mg/kg,IM・SC
ヨヒンビン
- 0.1mg/kg,IVでキシラジン拮抗可能
- α2のアンタゴニスト
3%オキシドール
1~2ml/kgで経口投与
- 上限
- 犬≦50ml
- 猫≦10m
アポモルヒネ
- 0.03mg/kg,IV
- 0.04mg/kg,IM
- もしくは1.5~6mgを溶解し、結膜嚢に入れる。
食塩
- 心疾患がある場合はNG
- 事前にある程度食事させておく→食道が損傷しないようにするため
- 食塩をカプセルに詰めてPO
- その後すぐに大量の水を強制的に飲ませる。
- 食塩と水の量
- 小型犬・猫→日本薬局方カプセル#2を2~3錠と水30~50cc
- 中型犬 →日本薬局方カプセル#0を3~4錠と水50~80cc
- 大型犬 →日本薬局方カプセル#0を5~6錠と水100~150cc
- 食塩と水の量
胃洗浄
- 一時間以内に誤食なら検討
- 麻酔が必要であることを伝える
- 禁忌
- 重篤な患者
- 誤嚥により化学性肺炎を引き起こす物質→石油系、有機溶剤系など
- 消化管穿孔を引き起こすような腐食性物質→強酸、強アルカリなど
胃洗滌のやりかた
- 全身麻酔をして右横臥位にする。左横臥位にすると液を入れた時に幽門が弛緩して濃度が高いものが移動する。
- 胃チューブを挿入。挿入する長さは、鼻先から最後肋骨まで。洗浄用と排泄用があると便利
- 胃を拡張させるために、温水(体温程度)を5~10ml/kgを入れる。
- 液体を排泄 出てきたものがなにかよく見極める
- 胃内容物が簡単に流れないときは、胃チューブの吸引、位置変更、液体や空気でのフラッシュを行う。
- 患者を反転させ、右横臥位にする
- 胃チューブから活性炭を投与する
活性炭
- 投与量は2~5g/kg。水(1gに対し、5ml)と混ぜたものがよい。
- 毒物服用後1時間以内に投与する。五時間までなら管理人は飲ませてます
- 消化管内に存在する物質だけでなく、すでに血中に吸収されている中毒物質の排泄を促進する作用を持つ。
- 毒物を吸着して平衡状態になった活性炭を早く体外に排泄させるために一回だけ下剤投与し、さらに活性炭を繰り返し投与すると効果的(初回投与の半量を4~6時間ごとに、2~3日間投与)。
活性炭が引っ張れない物質
- 強酸
- 強アルカリ
- 中性洗剤
- エタノール、メタノール、
- エチレングリコール
- パラコート、
- 鉄、硫酸鉄、リチウム、砒素、シアン化物、
- カリウム、ヨウ素、ホウ酸、臭化物、フッ化物
下剤
塩類下剤は最初の活性炭投与の30分後に行う
- ソルビトール(70%);4g/kg(3ml/kg),PO
- 硫酸Mg;250~500mg/kg(犬)、200mg/kg(猫)。硫酸Mgに水を混ぜ、5~10ml/kg,PO
- 水酸化Mg;10~150ml(犬)、15~50ml(猫)。必要に応じて6~12時間ごとPO
- 硫酸Na;250~500mg/kg(犬)、200mg/kg(猫)。硫酸Naを水に混ぜ、5~10ml/kg,PO
下剤使用における禁忌
- 閉塞の可能性を回盲結腸部の大きさを参考にする
- ひも状異物
- 粘膜損傷性のあるもの
- 消化管通過中に有害物質を溶出するもの
一般家庭によくある中毒物質
- チョコレート
- タマネギ
- 長ネギ
- ラッキョウ
- アボガド(嘔吐、下痢)、
- グレープ・レーズン(急性腎不全)