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飼養衛生:中毒

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殺虫剤および農薬・除草剤中毒

有機リン系

マラチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン

  • 作用:ChE活性を不可逆的に阻害
  • 症状:主に神経症状・・流涎、悪心、嘔吐、下痢、縮瞳
  • 治療:アトロピンとプラリドキシム(PAM)の併用

カーバメイト

カーバリル、プロボクスル、BPMCなど

  • 作用:ChEの可逆的阻害
  • 症状:有機リン系と同様(軽症)
  • 治療:アトロピン。 PAMは症状を悪化させる

ピレスロイド

  • 1型・・レスメスリン、アレスリン
  • 2型・・フェンバレレイト
  • 作用:
    • 神経線維の伝導を妨げる
    • 1型はGABA神経の抑制的作用
  • 症状:流涎過多、嘔吐、振戦、体温低下、呼吸困難
  • 治療:皮膚や胃の洗浄、活性炭の投与、対症療法

有機フッ素剤

フッソール、ニッソール(果樹の殺虫剤)、フラトール(殺鼠剤)

  • 作用:TCA回路を停止させてエネルギー産生を抑制
  • 症状:
    • 心機能障害(収縮力低下、血圧低下、心室性期外収縮)
    • 中枢神経興奮(強直性、間代性痙攣)
  • 治療:
    • 胃洗浄、硫酸Mgと活性炭の投与
    • バルビタール剤とジアゼパム(抗痙攣薬)

有機塩素系殺虫剤

DDT、BHC、アルドレン、ディルドリン

  • 作用:
    • 脂溶性が高く、脂肪組織、脳、腎臓、筋に蓄積し、乳汁にも移行。
    • 1971年以降製造販売禁止
  • 症状:振戦、痙攣、乳牛では乳量減少、乳汁凝固
  • 治療:炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤の投与

ヒ素剤

無機ヒ素剤、有機ヒ素剤

  • 作用:チオール基(SH基)に結合、細胞呼吸などの代謝を阻害し、細胞の機能を侵す
  • 症状:流涎、嘔吐、出血性下痢、疝痛、栄養不良、不整脈、チアノーゼ
  • 治療:ジメルカプロール

除草剤

パラコート、ダイコート

  • 作用:スーパーオキサイドを生成し細胞膜の脂質を過酸化
  • 症状:急性・・激しい嘔吐、口腔、消化管の粘膜損傷
  • 重症:ショック死
  • 数日経過・・急性肝不全、糸球体障害、急性腎不全、黄疸
  • 1週間以上・・肺機能障害、肺浮腫、肺線維死→死


有毒化した植物による中毒

発芽ジャガイモ

  • ソラニン(発芽部分)、セプシン(腐敗毒)
    • ソラニンは消化管粘膜を刺激と溶血作用がある。
  • 症状:
    • 神経型・・興奮、歩行困難
    • 胃腸型・・下痢・嘔吐・流涎
    • 発疹型・・水疱性湿疹
    • 治療:ピロカルピン酸化剤などの投与

スイートクローバー

  • クマリン
    • 変敗により抗凝固作用を持つジクマロールに変化
  • 症状:貧血、衰弱
  • 治療:輸血およびビタミンK剤の投与

硝酸塩を多含する牧草

  • 硝酸塩がルーメン内細菌により亜硝酸に還元
  • →吸収されてHbに酸化
  • →メトHbが形成されて酸欠
  • 症状:
    • チアノーゼ、神経麻痺、起立不能、虚脱
    • 血液はチョコレート色になり、消化管粘膜、心臓、腎臓に充・出血を認める
  • 治療:メチレンブルーを静注

綿実油粕および綿実

ゴシポール

  • 症状:出血病変、心不全、心肥大、肺浮腫、うっ血肝

マイコトキシンによる中毒

  • アフラトキシン
  • Aspergillus flavas, A.parasiticus
  • 汚染ピーナッツ、大豆、トウモロコシなど
  • 症状:
    • 鶏・・沈うつ、食欲不振、孵化率低下
    • 一般・・変異原生、発ガン性催奇形性、免疫抑制
    • 馬・・白質脳軟化症
    • 豚・・肺水腫

クマリン系殺鼠剤中毒

ワルファリン(ジクマロール) プロトロンビンなどの合成に必要なビタミンKと拮抗し、血液凝固作用阻害

  • 症状:貧血、鼻出血、喀血、血尿
  • 治療:ビタミンK剤、輸血


有毒植物による中毒

ジキタリス

ジゴトキシン、ジトキシンの配糖体

  • 症状:流涎、嘔吐、疝痛、下痢、心臓障害、頻尿、蛋白尿
  • 治療:
    • 0.1?5%過マンガン酸Kの内服
    • グルタチオンの注射、強心剤の注射

ユズリハ

ダフニフリン

  • 症状:便秘、チアノーゼ、皮膚光線過敏症
  • 治療:直接日光を避ける。 強心、利尿および輸血

トリカブト

アコニチン、アポコニチン、エサコニチン

  • 症状:全神経の麻痺
  • 治療:初期にアトロピン

イチイ

タキシン

  • 症状:嘔吐、流涎、反芻低下、腎炎、膀胱炎、尿閉、血尿
  • 治療:強心剤、胃洗浄、タンニン酸、ヨード剤の経口投与

オトギリソウ

ピペリシン

  • 症状:皮膚炎、脱毛、呼吸促拍、乳量の激減
  • 治療:チオ硫酸ソーダおよび抗ヒスタミン剤の投与

ソバ

ファゴピリン

  • 症状:腫脹、疼痛、食欲不振、泌乳量の激減
  • 治療:チオ硫酸ソーダおよび抗ヒスタミン剤の投与

ワラビ

  • アイノリナーゼ(チアミナーゼ)→馬
  • プタキロサイト→牛
  • 症状:
    • 馬・・・ビタミンB1欠乏症
    • 牛・・・骨髄の造血機能不能→再生不良性貧血

タマネギ

アリルプロピルジスルフィド

  • 症状:
    • 溶血性貧血
    • 貧血、黄疸、Hb尿、心悸亢進
  • 治療:
    • 輸血、輸液