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魚介類の衛生

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魚介類およびその加工品に由来する疾病

  1. 腸炎ビブリオ:魚介類の食中毒の大部分を占める
  2. コレラ :日本では輸入エビが原因とされる集団発生があった
  3. ボツリヌス :原因食が『いずし』による発生が圧倒的に多い
  4. サルモネラ :日本では死亡したクジラを食したことによる集団食中毒発生があった
  5. SRSV(型球形ウイルス):生カキが原因食であることが多い
  6. 肝吸虫症 :人への感好→コイの生食,
  7. 肺吸虫症 :人への感染→カニの生食
  8. 広節裂頭条虫症(日本海裂頭条虫症):人への感染→マスの生食
  9. アニサキス症:人への感好→イカ・アジ・サバ・ニシンなど
  10. クドア症(原虫:粘液胞子虫)→国家試験や教科書的にはトラフグ、ブリ、マダイ、クロダイ、イシガキダイ、ヒラメに感染する。国内では奄美クドア症などがある。ヒトでの感染は症状は軽いが高齢や若齢の人は注意。マグロで人が感染する事例がある。

有毒化

1)生息環境による毒化

a.毒化魚類

  • フグ毒 テトロドトキシン(TTX )
    • 化学的性質:日光に安定、水に易溶、耐熱性である
    • 中毒症状 :主徴は麻庫で、その経過は非常に速く食後20分ないし3時間で現れる
    • 致死時間は1.5~8時間で、4~6時間が最も多い
    • 毒性:
      • 1)季節によって著しい消長があり、産卵期(12月~6月)に最も強くなる
      • 2)また個体差が著しく同一魚種の毒性は一様ではなし
    • 存在部位 :卵巣・肝が毒性が高く、次いで腸・皮膚である
    • 中毒防止 :フグ調理師免許取得者による調理を摂取する
    • 他にイモリ、ツムギハゼ、ヒョウモンダコなどに存在
  • シガテラ シガトキシン(脂溶性)、シガテリン(水溶性)
    • カリブ海産の巻Ciguaを原因とする中毒で、下痢・唱吐・関節痛などを示し、刺激性疼痛を特徴とする。死亡率は低い。
    • バラフエダイ(フタツボシドクギョ)、バラハタ、マダラハタ、ドクカマス、サザナミハギ等の南方毒魚など

b.貝類の毒化

  • 麻庫性貝毒(PSP)
    • サキシトキシン(STX)、ゴニオトキシン(GTX)
      • イガイ・ホタテガイなど二枚貝の有毒化による中毒
      • 原因:渦鞭毛藻の一種Alexandrium catenella などの毒が貝類に蓄積
      • 症状:テトロドトキシンに類似し、神経伝達を遮断する
  • 下痢性貝毒(DSP)
    • オガ夕イックアッシド(オカダ酸)
    • ホタテガイ・ムラサキガイに多く、下痢を主徴とする
      • 原因:Dinophysis fortiiなどのプランクトンによる毒化

2)食物連鎖と生物濃縮

食物連鎖
生物生態系において、食物エネルギーが植物から出発して採食、捕食が繰り返され、一定の生物群を通って移行する状況
生物濃縮
食物連鎖に介在する魚介類において、自己に本来必要としない物質(特に環境汚染物質)が、連鎖の各段階で拡散されずに魚介類の体内に蓄積され、その汚染物質の中でも、残留性の強いものは低濃度でも連鎖の過程に入れば濃縮されていく ex)DDT(有機塩素剤の一種)、PCB


微生物汚染と浄化

1)一次汚染

a.細菌性

  • Flexibacter columnaris カラムナリス病 サケ、マス
  • Vibrio anguillarum ビブリオ病 ハマチ、ニジマス
  • Aeromonas salmonicida せっ瘡病 ヤマメ、ニジマス
  • Aeromonas hydrophila 鰭(ヒレ)赤病 ウナギ
  • Pseudomonas fluorescens 白雲秒 コイ
  • Streptococcus spp. レンサ球菌症 ブリ、アユ、ニジマス

b.ウイルス性

  • Infectious hematopoietic necrosis virus
  • 〔Rhabdo〕 伝染性造血器壊死症(IHN) ニジマス、ベニザケ
  • Viral hemorrhagic septicemia virus
  • 〔Rhabdo〕 出血性敗血症(VHS) ニジマス

c.真菌性

  • 真菌性肉芽腫 アワビ
  • 綿かぶり病 サケ・マス

2)二次汚染

  • 魚介類を取り扱う環境および漁獲後の汚染
    • a.細菌性
      • Salmonella、Shigella、Escherichia、Vibrio cholerae
      • V.parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)、Clostridium boturinum(E 型)
    • b.ウイルス性
      • 伝染性肝炎、小児麻庫、伝染性下痢症など

3)人工浄化

汚染のない海水を満たした浄化槽に保持するなど、生食される機会の多いものは特に安全性の保証が要求される


鮮度および鮮度判定

1)鮮度

  • 魚介類は捕獲後、常温では死後硬直が早く、自己消化し、急速に鮮度低下する(腐敗)
  • 鮮度保持→魚体が塩基性メジウムになる前の状態に保持:冷凍法
  • 死後硬直を抑制、自己消化を止

2)鮮度の判定

  • 官能検査 硬直状態、色、臭い、弾力注
  • 理学的検査 硬度、弾力性、電気抵抗、筋肉抽出液の表面張力
  • 細菌学的検査 大腸菌の有無、大腸菌群数・腸菌群数の測定
  • 細菌の活性(カタラーゼ、ペルオキシダーゼ)検査
  • TTC(色素還元)法
  • 化学的検査 揮発塩基窒素(VBN)測定法
  • 密閉法(Conway)
  • 通気法(A.O.A.C.法)
  • 蒸溜法:30~40mg%で初期腐敗
  • K値測定法
  • 死後硬直過程の筋肉成分を測定し、K 値(%)を算定するもの
  • 低いほど鮮度良好で、50 %を超すものは鮮度不良


加工品の衛生

1)水産加工品の大部分は、煉(レン)製品、塩蔵、乾燥および缶詰である

  • 煉製品
  • 魚肉のすり身に澱粉その他の添加物を加えて製造したもの→低温処理が特に重要
  • 塩蔵
    • 生魚を、塩漬・塩蔵により保存性を付加したもの
      • →食塩濃度上昇ゆ浸透圧上昇、水分活性低下ゅ微生物の発育阻止
      • →原料魚はできるだけ生鮮・清浄なものを使用・塩蔵後も低温保持が必要

2)魚介類に起因する人の病気

  • a.細菌性
    • サルモネラ感染症
    • 腸炎ビブリオ食中毒
    • ボツリヌス中毒ガス壊痕
    • 豚丹毒
  • b.ウイルス性
    • ウイルス肝炎
  • c.寄生虫性
    • 肝吸虫症
    • 異形吸虫症(横川吸虫etc.)
    • 肺吸虫症
    • 広節裂頭条虫症
    • アニサキス症
    • 棘口吸虫症