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血液のガス輸送

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酵素の運搬

Hbの構造

哺乳類のヘモグロビンは4つのヘムを含み、それぞれ一つの二価鉄を持つ。二価鉄は酸素と可逆的に結合し、ヘモグロビン1分子は計4個の酸素分子と結合できる。

  • 成熟動物
    • 二個づつのαとβヘモグロビンから成る。
  • 胎児ヘモグロビン
    • 二個づつのα鎖とγ鎖からヘモグロビンが成る。

Hbの酸素解離曲線

  • 血漿中に拡散したO2は速やかに赤血球中に拡散し、HbO2(オキシヘモグロビン)として運搬される。
  • 全ヘモグロビンに対するオキシヘモグロビンの割合を酸素飽和度という。血中の酸素分圧が高まると酸素飽和度は高まり、酸素分圧が100mg以上でほぼ100%になる。
  • 酸素分圧を横軸に取り、縦軸に酸素飽和度をプロットすると、ヘモグロビンの酸素解離曲線がS字曲線として得られる。

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(1) ヘモグロビンの酸素親和性に影響する因子

a. 血液温度

  • 血液温度が上昇すると(運動、組織代謝等)、酸素解離曲線は右方移動する。
  • 血液温度が低下すると(低体温)、酸素解離曲線は左方移動する。

b. 血液pH

  • pHが低下すると、酸素解離曲線は右方移動する。
  • PHが上昇すると、酸素解離曲線は左方移動する。

c. CO2分圧

  • 血液のCO2分圧が高いと、酸素解離曲線は右方移動する。これはCO2の水和によって生じるH+の効果と、CO2のHbとのカルバミノ結合によるHbO2の解離促進作用があるが、主な理由はH+による血液pH低下である。
  • Bohr効果→酸素解離曲線はCO2分圧が高いと右方移動すること。

d. 2,3-ジホスホグリセリン酸塩(2,3-DPG)

2,3*DPGは赤血球中に多量に存在する解糖過程の産物である(運動時や高地におけるO2分圧の低下によって赤血球内に多量に産生される)。デオキシヘモグロビンに結合し、そのO2親和性を低下させる作用があり、酸素解離曲線を右方移動させる。

(2) 酸素運搬の障害

a. 一酸化炭素

COはHbへの親和性が酸素の200倍あり、空気中に1%でも含まれていると死に至る。

b. 亜硝酸(餌:スーダングラス、ビートトップに含まれる)

Hbのニ価鉄は亜硝酸によって酸化されて三価鉄(メトヘモグロビン)になる。これは酸素と結合出来ないので血液酸素含有量が減少する。

主な二酸化炭素の運搬

  • (1) 大部分のCO2は赤血球内に拡散し、水と結合してHCO3の形で存在する。
    • H2O+CO2←→H2CO3←→H+HCO3-
    • H+はHbによって緩衝されるので、反応は右方向に進み続ける。
  • (2) 一部のCO2はHbのNH基と結合し、カルバミノ化合物を生成する。
  • (3) ホールデン効果

デオキシHbは、オキシHb(酸素化Hb)よりも容易にカルバミノ化合物を形成するので、静脈血は動脈血よりも多くの二酸化炭素を運搬出来ること。