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菌剤

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細胞壁合成阻害剤

β‐ラクタム系

  • ペプチドグリカンの合成を阻害して細胞壁の合成を阻害する
  • 特徴は動物細胞に細胞壁はないので、高い選択毒性を示す、増殖中の菌には強い作用を示すが静止状態にある菌には効力が低い
  • ペニシリン、アンピシリン、セファゾリンなどがある

ホスホマイシン

  • アセチルグルコサミンの合成阻害により細胞壁形成を阻止する
  • 特徴は抗菌力が弱く、副作用が少ない点

サイクロセリン

D-アラニンアナログで、ムレインペプチドのポリマー合成を抑える。特徴はアミノ酸代謝にも影響するので副作用が強い点

バシトラシン

環状ペプチド抗生物質で、ペプチドグリカン合成におけるリピッドサイクルを阻害する。特徴はグラム陽性菌にのみ有効で、宿主の脂質代謝に影響し、副作用が強い点

バンコマイシン

ポリマー形成を阻止し、モノマーの細胞質膜への輸送が阻害され、細胞質内にモノマーが蓄積して菌の発育を阻害する メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症に対し、治療薬として用いられた

蛋白質合成阻害剤

アミノグリコシド系薬剤

  • 70Sリボソームの30S粒子に結合し、蛋白合成初期段階を抑制する
  • 特徴は選択毒性を示す、聴覚障害、腎障害などの強い副作用をもつ
  • カナマイシン群、ストレプトマイシン群、などがある

クロラムフェニコール、チアンフェニコール

  • tRNAに結合した70Sリボソームの50S粒子に働き、ペプチド鎖の合成を阻害する
  • 特徴は再生不良性貧血と骨髄機能障害などの強い副作用をもつ

テトラサイクリン系薬剤

  • 30Sリボソームに作用してアミノアシルtRNAがリボソームに結合することを阻害する。
  • 特徴は広い抗菌域を有すること。(真菌以外すべて)
  • ミノサイクリン、ドキシサイクリンなどがある。マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア
  • 感染症の治療には欠かせない
  • 静菌的に作用
  • テトラサイクリンは消化管で金属イオンとキレート結合すると吸収されなくなる

マクロライド系薬剤

  • 50Sリボソームに結合してアミノアシルtRNAがリボソーム上のA結合部位からP結合部位へ転位するのを阻害する。
  • 特徴は選択毒性を示す、副作用は少ない、グラム陰性菌に対する作用は弱い。
  • エリスロマイシンやジョサマイシンなどがある

リンコマイシン

マクロライド系同様、50Sリボソームに結合し、蛋白合成を阻害する


核酸合成阻害剤

DNA合成阻害剤

DNAジャイレースとトポイソメラーゼ?に作用してDNA合成を阻害するキノロン系のノルフルキサシンとノボビオシンがある

RNA合成阻害剤

RNAポリメラーゼと結合し、その活性を阻害する。代表はリファンピシン 特徴は動物細胞には影響は少ない、抗菌域は広いが耐性菌が出現しやすい。スピロヘータ、リケッチアには効かない

ニトロフラン誘導体

DNAに作用し、DNAを崩壊する。フラゾドンなどがある。連用すると脳神経障害を起こし、発がん性もある

補酵素阻害剤

サルファ剤とトリメトプリム

  • 細菌の増殖に必須なビタミンである葉酸合成を競合阻害する
  • 代表はサルファ剤とトリメトプラムを併用したST剤
  • 特徴はサルファ剤とトリメトプラムを併用しないと効果が少ないこと

その他

イゾニアチド、エチオナマイド、ピラジナミドはNAD生合成をニコチン酸の類似体として阻害する。特徴は薬剤の透過性の悪い結核菌にも有効

細胞膜障害剤

コリスチンとポリミキシンB

環状ペプチド抗生物質で、ステロールを含まないグラム陰性桿菌の細胞膜に作用する

抗真菌ポリエン抗生物質

  • ステロールを含む真菌の細胞質膜を障害する
  • 特徴はステロールを含まない細胞膜に作用しない、副作用が強い
  • アムフォテリシンB、トリコマイシン、ナイスタチン、ペンタマイシン、ピマリシンがある

外毒素と内毒素の比較

外毒素 内毒素
存在場所 菌体外に分泌あるいは遊離する グラム陰性菌の外幕構成成分
化学組成 蛋白質またはペプチド リポ多糖(LPS)
熱安定性 熱で変性、失活しやすい(易熱性) 耐熱性で、失活しにくい
抗原性 強い 弱い
抗体(抗毒素)の産生性 抗原性が強いので、抗体は産生されやすく、中和されやすい 中和抗体は産生されない
トキソイド化 ホルマリン処理によってトキソイド化する トキソイド化は起こらない
(外毒素)主な毒素と産生菌 破傷風菌-破傷風毒素 内毒素ショック、発熱性
(内毒素)主な生物活性 大腸菌-志賀毒素 シュワルツマン現象など

薬剤耐性のメカニズム

交差耐性
異なる薬剤でもその耐性のメカニズムが同じ場合、単一の遺伝子の変異で他の薬剤に対しても耐性になること

薬剤耐性のメカニズムには<薬剤不活化酵素>1次作用点(標的部位)の変化排出 膜の透過性の変化がある

薬剤不活化酵素の産生

薬剤の不活化は、薬剤が分解、修飾されることで起こる


薬剤分解酵素
  • β‐ラクタム環を有する薬剤(ペニシリン)
  • βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)
  • セフェム系薬剤(セファロスポリン)
  • βラクタマーゼ(セファロスポリナーゼ)


薬剤修飾酵素:
  • アセチル化-アセチル基転移酵素
  • リン酸化-リン酸基転移酵素
  • アデニル化-アデニル基転移酵素 による修飾を受けて活性を失う

1次作用点(標的部位)の変化

薬剤の標的部位である酵素、リボソームなどの構造が変化し、薬剤との親和性が低下すること によって耐性を獲得する。また、標的部位の構造は同じでもその酵素や基質の量が増加すれば、耐性になることがある

排出

-膜に存在する蛋白によって、毒性のある薬剤を細胞外へ積極的に輸送することで耐性となる

膜の透過性低下

  • 薬剤の作用点が細胞質内に存在する場合、膜の薬剤透過性が低下すると、薬剤が細胞質に到達できず、耐性となる
菌交代症
化学療法によって目標とした病原菌を排除できたが、抗菌剤のスペクトルからはずれた菌が代わって同じ病巣あるいは別な臓器に感染を起こすこと

滅菌比較

滅菌法 滅菌物 特徴
火炎滅菌 白金耳や試験管口
乾熱滅菌 ガラス器具や試験管、金属製品 流動パラフィンを使用
煮沸滅菌 ハサミ、ピンセット 滅菌法としては不完全
高圧蒸気滅菌 微生物培地、手術用器具、治療器具、包帯、衣類、ガーゼなど 121℃、15分間であらゆる生物は死滅
濾過滅菌 液体や気体
ガス滅菌 プラスチック、ゴム製品および布製品 発がん性あり
放射線滅菌 プラスチック製品や手袋などの易熱性のもの
紫外線滅菌 手術室や無菌室 可視光を避ける必要あり

消毒薬比較

消毒薬 特徴
アルコール類 芽胞には無効、生体に無害、使用が容易、安価
フェノール類 有機物の混入による影響は少ない
アルデヒド類 グルタールアルデヒドは皮膚、粘膜など生体には使用できない
ビグアニド類 芽胞、結核菌に効果がない
逆性石鹸 芽胞、結核菌には無効、無臭、皮膚、粘膜に対する刺激性は少ない
両性界面活性剤 汚物には不適、無臭、刺激性は少ない、pH8~9で最大効果
ヨード化合物 酸性で効果有り、ヨードホールは有機物による効果の低下も少ない
塩素化合物 ウイルス、芽胞に効果はあるが結核菌には無効、溶液が酸性に傾くと塩素ガスを発生するので酸性洗浄剤との併用は避ける
酸化剤 カタラーゼ陽性菌には無効
重金属類 現在ではほとんど使用されない
色素類 刺激性がなく、蛋白による殺菌力の低下が少ない