クリエイティブ・コモンズ・ライセンス北野成昭(キタノナルアキ) 作『獣医志Wiki』はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

感電

提供: 獣医志Wiki
移動: 案内検索

ElectricShock
臨床現場にはさまざまな機器が動物に接する機会があり、大動物小動物いずれも電気を使う上で必ずリスクに晒されている。

漏電
電気製品の電源部分は絶縁されており、ケース(電気製品の外側)に電気が流れることはありません。しかし、 経年劣化などで絶縁が破綻すると、 ケースに電気が漏れることがあります。 これを漏電といいます。
感電
身体に電気が流れて、電撃(電気 ショック)を受け、「ビリビリ」と感じ るときがあります。これを感電という。

つまり漏電し感電することにたいして獣医医療従事者は気をつけなくてはならない。 参考)日本光電EM安全対策マニュアルより

導入部分

小動物においてはコードを噛んでいることがきっかけで来院するケースが個人的に多かった。また旧式の洗濯機から漏電し屋外に飼っている動物が感電していることもあった。 いずれにせよ外見上感電とわからないケースもまれにあるので臨床症状とTPRから予測することが重要な場合がある。

臨床症状

  • 口腔内は火傷の影響により、「黄褐色、灰色、蒼白、黒色」に粘膜が変色する。それは、舌や頬、鼠径部の粘膜にも認められる。
  • 口腔の知覚過敏や肢の火傷、広範囲の組織壊死なども認められる。
    • 上記二点はコードを噛んでいた場合でよくみられるが、体に間接的に感電した場合もある程度時間経過してから発現することもある。
  • 呼吸困難、神経原性肺水腫(神経性や肺の毛細血管の損傷による漏出)、呼吸停止、発作、心室細動などの不整脈、消化器系や筋骨格系の損傷
    • 呼吸器系・消化器系の症状はやや遅れて(一日以内)発現することがある、心拍に飛んでいる様子がないか(麻酔器のモニターでもいいので)ECGでチェックすることを奨める。
    • やけどが顕著である場合「やけど」の項目を参照

診断

病歴;電気コードやその他の電気機器への曝露 身体検査;口腔粘膜の損傷。口周りの毛が焦げてないか、ヒゲが片側だけ短くなってないか X線;肺門領域や後葉での肺水腫像(18~24時間以内では現れないこともあるため、再検査を考慮)

  • 肺組織は通電すると肺水腫を起こしやすい

治療

  1. 感電後、主に治療が必要な疾患は、口腔内の火傷の肺水腫(心原性肺水腫より難治的)である。
  2. 熱傷は通常の火傷とは異なり、損傷が深部にまで達しているため、肉芽が形成されたりして治りにくい。また、治癒過程で動脈や静脈が破裂して出血が見られることもある。
  3. 肺水腫に関しては、受傷後まもなくみられることもあるが、数日経過してみられることもあるので、要注意。
  • フロセミド(感電による肺水腫には有効ではない)→ICU管理で酸素化する。ただ使用する価値がないわけではない
  • 気管支拡張薬(アミノフィリン、テオフィリン、テルブタリン)
  • 輸液(肺水腫に注意)→ショックに陥った状態で来院した場合はショックの改善を優先させる(しかし肺水腫のジレンマがあるためオーナーに説明しておくといいかもしれない)
  • 気管挿管→呼吸困難なら。敷居が高いなら栄養カテを咽喉頭手前まで設置してそのラインからO2かがせるのもいいけど、事前にDIYしてラインつくっておく必要がある。
  • デキサメサゾン;2~4mg/kg,IV→肺組織の炎症によるうっ血でのガス交換が低下するのを防ぐために管理人は積極的に使っているがあくまでこれは気休めである。
  • 鎮静剤(モルヒネ、オキシモルフォン、ブトルファノール)
  • スクラルファート(口腔内の火傷に対する治療)

予後

個体の因子と受傷の度合いによるが不良であることが多い→呼吸器系のコントロールができればがんばれるが長期入院が必要 尿量をモニターしておく 肺水腫に陥っていない期間が一日以上できれば自分は少し安心しています