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内分泌腺:副腎

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二つの異なる組織を持つ内分泌器官

副腎=腎上体
皮質と髄質からなる

副腎皮質

実質的には軸索を失って分泌細胞になってしまった交感神経・節後神経細胞。神経外胚葉起源。 カテコールアミン(主にアドレナリン)を分泌する細胞をクロム親和性細胞と呼ぶ。分泌は低血糖・ストレス因子によって促進される。

働き
鉱質コルチコイド、糖質コルチコイド、性ホルモンが分泌

組織学的に副腎は被膜に覆われ外側から

  1. 球状帯(球状体ではない組織学的な様子を指しているので)
    1. 豚と馬は弓状に配列するので弓状帯とも言う
  2. 束状帯
  3. 網状帯

(1) カテコールアミンの合成

  • 交感神経節前線維の興奮→ACh放出→クロム親和性細胞・・カテコールアミンの合成と放出(刺激-分泌共役)
  • チロシンから生成。
  • 隣り合う皮質からのコルチゾルはアドレナリン合成に重要。

(2) カテコールアミンの作用

  • 神経外胚葉由来なので、標的臓器上の
  • アドレナリン作動性受容体を介して作用する。
*β2受容体に対しては、アドレナリンの方がノルアドレナリンの10倍も強力に作用する。 
  1. 代謝調節(主にβ2受容体を介する)
    1. 肝臓におけるグリコーゲン分解と糖新生の促進
    2. 骨格筋におけるグリコーゲン分解の促進
    3. 膵臓におけるインスリン分泌抑制とグルカゴン
    4. 分泌促進(α) →血糖値の上昇(ストレス適応)
    5. 脂肪組織における脂肪分解促進→血中脂肪酸濃度上昇
  2. 心機能の調節
    1. β1受容体を介して収縮力と心拍数を増加
    2. β2受容体を介して血管拡張→心拍出量の増加

副腎髄質

髄質の分泌活性は交感神経により支配されている。 髄質の主たる細胞はクロム親性細胞が交感神経に最も支配されており

  • アドレナリン(エピネフリン)→A細胞(明細胞)より分泌
  • ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)NA細胞(暗細胞)より分泌
副腎皮質
哺乳類では3層に分かれる。 中胚葉性体腔上皮起源、各種ステロイドホルモン分泌。 皮質の細胞は多量の脂質滴を持ち、ミトコンドリアと滑面小胞体に富むステロイド合成に適した形態。
  • 電解質コルチコイド:アルドステロンなど・・・電解質バランス、血圧調節に重要。
  • 糖質コルチコイド:コルチゾール、コルチコステロンなど・・・代謝調節のすべての面で重要。
  • 性ホルモン:アンドロジェンなど・・・通常生産は少量だが、病的状態で問題となりうる。
*注)様々なステロイドがあるが、糖質、電解質両方の活性を持つ。どちらが強いかで相対的に分類しているだけ。 


(1) コルチコイドの合成

主要な前駆物質であるコレステロールは、質滴中にエステルの形で大量貯蔵されている。

皮質でのステロイド合成経路

  • 糖質コルチコイド系はC-17位に、
  • アルドステロン、コルチゾールはC-11位に、
  • 副腎のコルチコイドはC-21位に水酸基を持つ。

天然のコルチゾルの構造を変えて活性を上げた合成ステロイドが利用できるようになっている。プレドニゾロンやデキサメセゾン、9α-フルオロコルチゾルなど。

(2) 糖質コルチコイドの利用

  • 主な生物作用例
    • 代謝調節・・・肝臓における糖新生の促進→血糖値↑、肝グリコーゲン量↑ :ただし、それ自体に作用発現効果はない。=許容作用
    • 末梢におけるブドウ糖利用の抑制 :ブドウ糖取り込みと、代謝を抑制する。=抗インスリン効果
      • 上記2つの効果によって、糖質コルチコイドの慢性投与では、ステロイド糖尿が引き起こされる。脂肪分解の促進と脂肪の再分配
    • 蛋白異化の促進(心臓、脳を除く。)
    • 炎症反応の抑制
    • ストレス反応 →汎適応症候群:ストレスが加わると、警告反応期(急性疲労)、抵抗反応期(慢性疲労)、疲労期(過労死)の三つに分類される反応が起こる。これらの総称。
    • 糖代謝に対する糖質コルチコイドの作用
CRH
副腎皮質刺激ホルモン |(=コルチコトロピン)放出ホルモン

(3) 炎症反応の抑制

  • 抗炎症作用
    • 毛細血管の拡張防止
    • 組織間隙への体液の浸出
    • 白血球の遊走
    • フィブリンの沈着
    • 結合組織生成の抑制
  • アレルギー反応の抑制・・・生理活性アミン(ヒスタミンなど)の放出を抑制
炎症抑制過程
リソソーム膜の安定化とホスホリパーゼA2活性化の抑制を介して、炎症仲介物質の生成を抑制。

(4) 電解質コルチコイドの作用

  • 電解質バランス・・・遠位尿細管におけるNa+の再吸収と、K+、H+の分泌促進
  • 血圧の恒常性維持
    • 電解質コルチコイドの過剰➔高血圧、代謝性アルカローシス
    • 電解質コルチコイドの不足➔低血圧、代謝性アシドーシス
  • 腎臓の集合管主細胞におけるアルドステロンのNa再吸収促進機序

(5) 腎臓における分泌調節

  • 電解質コルチコイドの主な調節因子は、標的器官である腎臓で生産される。
  • 調節因子:レニン・アンギオテンシン系
  • 糸球体近接装置