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公害

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公害の定義

  • 1)人間活動によって社会に有害な影響を及ぼす現象。
  • 2)人や物に対する加害な大気や水などの自然媒体を通して行われ、継続的である。
  • 3)公害の発生源は、不特定多数であったり、特定されていても因果関係の立証が困難である場合が多い。
  • 4)有害な影響には、人間の身心に及ぼす影響や生活環境に及ぼす影響のほか、動植物や財産に及ぼす影響が含まれる。

などが公害審議会で審議された結果、公害対策基本法で、「事業活動その他の人の活動に伴って生ず る相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤沈下および悪臭によっ て、人の健康または生活環境に関わる被害が生ずること」と定義づけられている。


大気汚染

大気の正常成分または異常成分が空気中に人工的に増加し、もしくは混入されて、人またはその生活環境の影響を与える場合。

1)大気汚染物質

  • a粒子状物質(エアロゾル)
    • 降下ばいじん:重力または雨水と共に沈降する比較的粒径の大きなもの
    • 浮遊粉塵:粒径が小さく気流とともに移動し沈降しないもの。10μm以下「浮遊粒子状物質」
  • 健康影響…0.1μm以下 大部分は呼出される
    • 0.1~0.5μm 細気管支や肺胞に沈着
    • 5μm以上 鼻腔や上気道で捕捉
  • 「大気汚染防止法」では発生形態から以下のように分けられる。
    • ばいじん…工場、事業場などにおける主として燃焼過程から発生
    • 粉塵…ものの粉砕、選別その他の機械的処理または堆積に伴って発生、飛散
    • アスベスト(政令で特定粉塵に指定)
    • 粒子静物質…ディーゼル黒煙

2)ガス状物質

  • a硫黄酸化物(SOx)…SO2、SO3、H2 SO4など
    • 気管支、喉頭、鼻粘膜に刺激症状
  • b一酸化炭素…自動車排気ガスによるものが大部分
    • Co*Hbの増加によってO2*Hbが減少して組織の酸素不足が生じる。
  • c窒素酸化物(NOX)…N2O、NO、NO2、N2O3、N2O4など
    • 低濃度長時間暴露で閉鎖性呼吸器症候群
  • d 光化学オキシダント…上記の一次汚染物質が大気中で光化学反応を起こすことにより生成される二次汚染物質

3)大気汚染の影響

四日市喘息、ロンドン事件、ドノラ事件、ロサンゼルス事件

4)大気汚染防止対策

  • a硫黄酸化物対策
    • 施設毎に、排水口の高さに応じ硫黄酸化物の排出の許容限界を定めるK値規則方式が採られている。
      • Q=K×103×He2
      • Q;硫黄酸化物の排出許容量 Nm3/h
      • K;地域毎に定められている定数
      • He;補正された排出口の高さ(m)
  • b窒素酸化物対策
    • 固定発生源:昭和48年の第一次規制以来昭和58年の第5次規制まで行われた。
    • 移動発生源:交通管理なども含めた総合的な対策(自動車排ガス規制)
  • c光化学大気汚染対策
    • 窒素酸化物と炭化水素(光化学オキシダントの生成物)の原因物質の排出規制

水質汚濁

1)水質汚濁物質

  • a無機系汚濁物質
    • 無機系汚濁物質を含む廃水のうちで、特に排出基準で厳しく規制されているのは、有機物質を含む廃水で、有機水銀、六価クロム、シアン、カドニウム、マンガン、銅、PCB、鉛、ヒ素などは人間・動物水系の生態系に害を与える。
  • b有機系汚濁物質
    • 生活廃水…し尿、家庭排水などの有機物が主体。
    • 産業排水…食品工業関係、製紙工業。

これらの廃水の大きな特色は、水に不溶性の浮遊物質(SS)や水質汚濁の判定指標として用いられるBODにより測定可能な溶解性の有機物質を多く含むことである。

2)水質汚濁の影響

  • a水道原水の汚濁
    • 湖沼や貯水池の富栄養化に伴う藻類の異常増殖による水道水の異臭・異味。地下水からトリクロロエチレンなどが検出
  • b工業用水の汚濁
    • 工業用水の河川水などの水質汚濁による影響
  • c農業被害
    • 排出される汚水が農業用水へ流入
  • d漁業被害
    • 水面の浮遊物、廃棄物の堆積→漁業環境の悪化、漁具の被害
    • 油濁、赤潮の発生→水産生物の死滅、生育不能
    • 重金属、PCBなどの有害物質の蓄積、付着→漁獲物の販売不能、魚価の低下
    • 漁船内の油濁など→漁船および漁具の汚れ、腐蝕
    • 農業→魚介類の被害

3)水質汚濁防止対策

  • a環境基準の設定
    • 公害基本対策基本法に基づいて昭和45年に設定された水質汚濁に関わる環境基準には「人の健康の保護に関する環境基準」と「生活環境の保全に関する環境基準」がある。
  • b排水規制の強化など
    • 全国一律の排水基準が設定
  • c閉鎖性水域の対策
    • 広域的な閉鎖性水域の水質改善をはかるためには、その水域に流入する汚濁負荷の総量を削減することが必要。

4)土壌汚染

  • 「土壌の汚染に関わる環境基準」では、全ての土地の「特定有害物質(カドミウム、銅、ヒ素、鉛、 六価クム、総水銀、アルキル水銀、全シアン、有機リン、PCB)」を指定したが、平成6年にジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1*トリクロロエタン、チラウム、ベンゼン、セレンなどが追加指定された。

5)悪臭

昭和47年に「悪臭防止法」が制定。悪臭物質としては、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン、を指定。その後、悪臭防止法施行令でプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸が加えられ、さらに平成3年に10物質が追加され、全体では22物質となった。

  • 防止対策:
    • 酸化(酸化剤による酸化、直接燃焼、触媒燃焼)
    • 吸収(薬液吸収と吸着剤)
    • マスキング

6)騒音

振動、悪臭とともに「感覚公害」と呼ばれる。昭和43年に「騒音規正法」が制定され、各種騒音の規制が行われたが、一般騒音(道路騒音を含む)についての環境基準は昭和46年5月に設定された。

  • 防止対策:
    • 音の発生防止
    • 発生した音の伝播防止

7)振動

昭和56年12月「振動規正法」が制定。指定地域における振動を発生する特定施設や建設工事についての所要の規制。最近、低周波振動によるガラス窓、戸、障子惑いは人体への影響が問題になっている。

  • 防止対策:
    • 発生源対策
    • 伝播防止対策
    • 受振部対策

8)地盤沈下

地盤沈下は、主として都市部における地下水の汲み上げによって発生してきたが、地下水の採取規制により、全国的に地盤沈下の問題は減少している。

9)放射線汚染

  • 放射性降下物
    • 137Cs→筋肉などの軟部組織に蓄積、性腺被爆
    • 90Sr→骨髄被爆
    • 131 I→甲状腺被爆