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伝染病学総論:細菌の死滅

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物質的因子

温度:多くの細菌の栄養型は55〜75 ℃で30分加熱すると酵素の失活、構造タンパクの変性が起こり死滅する。

  • 芽胞形は、100℃に抵抗するが、120℃・10分で死滅する。菌種、湿度、メジウムによって菌の熱抵抗性は変わる。(高温の殺菌作用は、湿度が高いほど高い)

☆加熱によるもの

乾燥状態→細胞物質の酸化または焼却作用による。

  • 火炎滅菌:白金耳とガスパーナーの組み合わせ。(耐熱器具の滅菌)
  • 乾熱滅菌:180℃.60分もしくは160℃.2〜4時間。

湿熱状態→細胞のタンパク凝固作用による。

  • 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ):121℃.30〜60分または115℃30分。グリセリンの滅菌に用いる。粉末、油類には使用不可。
  • 間けつ滅菌:100℃.30〜60分。これを1日1回、3日間行う。高熱で分解するある種の糖、芽胞菌の滅菌に使う。
    1. 低温殺菌・・・62〜65℃.30分
    2. 煮沸滅菌・・・シンメルで煮沸、15〜20分。

☆加熱によらないもの→加熱により分解変性する培地、血清、溶液などに用いる

  1. 濾過滅菌…菌よりも小さい孔をもつ濾過器を使う。(ウイルスは浦過されない)
  2. ガス滅菌…プラスチック、ゴム器具や部屋全体の滅菌。主にエチレンオキサイドガスを使用

☆菌の長期保存

凍結保存もしくは凍結乾燥…細菌細胞は超低温に抵抗性が強いことを利用。

  • 水分:栄養型の細菌は乾燥に弱い。芽胞は乾燥によく抵抗する。
  • 表面張力:それ自身は生存に影響がないが、有害物質は表面張力が低下すれば細胞表面に蓄積され、毒性を示す。
  • 浸透圧:細胞壁をもつ細菌は、ある程度以上の浸透圧により増殖が抑制される。好塩菌は、低張で溶菌し死滅する。
  • 酸度:pH3以下で発育抑制。毒性は、有機酸>無機酸。
  • 放射線:紫外線は、核酸や酵素タンパクに変性を与えて細菌を死滅させる。芽胞にも強い殺菌力を持つが、浸透圧に乏しい。
    • 日光消毒…240〜280nm(もっとも効果大:265nm)
    • 殺菌灯…2537Å付近の人工波長を放つ。
    • X線、γ線…イオン化による酸化作用で深部にある細菌とその芽胞を殺菌する。                             
  • 音波:20キロサイクル1秒以上の超音波で死滅する。機械的作用と酸化作用で細胞壁を破壊し、溶菌を起こす。
  • その他:機械的衝撃(ガラス玉、強い加圧等)による破壊。電流(熱と遊離イオン)による殺菌作用。

化学的因子 →殺菌的、静菌的、抑制的作用

  • 非選択性化学物質:全ての細菌、動物に対して毒性を有する。生体に応用するのは不可。
  • 選択性化学物質:ある範囲の細胞菌種にのみ毒性があり、他の菌種または動物細胞に毒性の少ないもの。
  • 抗生物質:抗生物質は微生物(特にカビや細菌)が産生する物質で、その希釈液が細胞やその他の微生物の発育を防止、あるいは破壊する能カを持つもの。

非選択性化学物質

ハロゲン化合物:塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、クロラミン(飲料水の消毒)、さらし粉、ヨード剤(ヨードチンキ、ルゴール液、ヨードホルム)

<作用>

酸化作用による。ヨード剤は、タンパクをヨウ化して殺菌する。

<有効>

細菌、ウイルス、芽胞(結核菌には、作用しにくい。)

重金属イオン:マーキュロクロム、硝酸銀、昇こう水、チメロサール。

<作用>

タンパクのSH基と結合し、菌増殖を抑制する。(現在まり使われていない。)

芳香族化合物:クレゾール石鹸液、フェノール、へキサクロロフェン、クロールへキジン。

<作用>

腐食性、刺激性が強い。コロイド溶液で、細胞の中に入り、タンパクその他と結合して不溶性物質をつくる。

<有効>

細菌。(ウイルス、芽胞には無効。)

脂肪化合物:エタノール、イソプロピルアルコール

<作用>

細胞表層の脂質の溶解とタンパク変性による。(脱水作用)

<有効>

細菌、ウイルス、リケッチア、スピロへータ。(芽胞には無効)

界面活性剤

  • 陰性界面活性剤…石鹸、胆汁酸塩など
  • 陽性界面活性剤…塩化べンザルコニウム、塩化べンゼトニウム

<作用>

無臭で毒性、刺激性が低い。

<有効>

細菌、ウイルス。(芽胞、結核菌には無効)

酸化剤:過酸化水素、過マンガン酸カリウム

<作用>

酸化による。

アルデヒドおよび殺菌性ガス

  • ホルマリン(ガス消毒剤)→ 芽胞に無効。
  • エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド(ガス滅菌)→10%濃度ガス、2時間で芽胞が死滅。

酸およびアルカリ

ホウ酸、酢酸、安息香酸、過酸化酢酸 →水素イオンと酸化作用により殺菌または抑制的に作用する。 &br;NaOH、石灰→水酸化イオンは、細胞壁や膜を溶かし殺菌する。

色素類

  • トリフェニルメタン系、アクリジン系、アゾ系→DNAの2重鎖に結合し、菌の増殖を阻止する。
  • クリスタルバイオレット、アクリフラビン→ 静菌作用。(現在あまり使われていない。)