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本薬剤は嫌気性菌に対して有効である。なお肝不全にメトロニダゾールを投与するのは高アンモニア血症などで嫌気性菌を押さるために投与される。
 
本薬剤は嫌気性菌に対して有効である。なお肝不全にメトロニダゾールを投与するのは高アンモニア血症などで嫌気性菌を押さるために投与される。
 
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**ラクツロースを併用推奨
 
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*(バベシア)→プロトコールが確立されていない
 
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*ウサギで血便してたらとりあえず入れる
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== 薬の作用機序 ==
 
== 薬の作用機序 ==
 
微生物内でニトロ還元酵素系の反応により還元され ニトロソ化合物 (R-NO)に変化し、 このR-NO が殺菌作用を示す。
 
微生物内でニトロ還元酵素系の反応により還元され ニトロソ化合物 (R-NO)に変化し、 このR-NO が殺菌作用を示す。
  
 
=== 炎症性結直腸ポリープ(ICRP) ===
 
=== 炎症性結直腸ポリープ(ICRP) ===
東京大学獣医内科学教室の報告によるとダックスのICRPの錠剤細菌叢が変動し、短鎖脂肪 酸(SCFA)産生菌が減少している傾向にある報告がある。
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東京大学獣医内科学教室の報告によるとダックスのICRPの常在細菌叢が変動し、短鎖脂肪 酸(SCFA)産生菌が減少している傾向にある報告がある。
 
短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌が減少することで
 
短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌が減少することで
 
*腸上皮への栄養供給
 
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の上記が低下すると言う事が考えられている。本薬剤によりSCFA産生菌が増えるのではないかと言う報告がある
 
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*胃腸障害
 
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=== メトロニダゾール中毒 ===
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*犬において中枢性前庭疾患→斜頸と眼振
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*対して猫は前脳と小脳症状を呈する。犬よりも低い用量で症状が発現する傾向にある
 
*長期投与により末梢ニューロパシーと顆粒球減少症
 
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*(犬)60mg/kg/dayで前庭,小脳の機能障害が発現
 
*(犬)60mg/kg/dayで前庭,小脳の機能障害が発現
**(管理人より)中枢神経での副作用言われていますが2千くらいの子犬に処方しましたが経験ありません。もともと中枢神経に問題あった奴に3
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**30mg/kg/dayで前庭,小脳の機能障害が発現した報告もあり、個体差があることに注意する
*中枢性前庭疾患→斜頸と眼振
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**よってインフォームするのはなかなか難しい。インフォームすることで変に心配されて治療すべき状況に飼い主が治療を受け入れなくなってしまい、余計状況が悪くなったりすることがある。
 
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**(管理人より)中枢神経での副作用言われていますが2千くらいの子犬に処方しましたが経験ありません。もともと中枢神経に問題あった子で成犬に経験があります
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*メトロニダゾールの中毒の場合
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**治療は投薬の停止で5-14日位で元に戻る事がある
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**積極的治療を行なう場合以下のプロトコールを個人的に行なっている
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***GABAを介して神経症状が誘発されているので点滴を流して相対的に濃度を減らす
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***ジアゼパムを0.4mg/kg IV shotで投与する
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***その後ジアゼパムを0.5mg/kg PO TID
 
== その他 ==
 
== その他 ==
 
*昔の報告で免疫調整機能があることが報告されているが、後追い研究の結果を見ている限り免疫調整機能はあるように思えない。結論として免疫調整機能はないと考えられている。
 
*昔の報告で免疫調整機能があることが報告されているが、後追い研究の結果を見ている限り免疫調整機能はあるように思えない。結論として免疫調整機能はないと考えられている。

2017年7月31日 (月) 01:59時点における最新版

本薬剤は嫌気性菌に対して有効である。なお肝不全にメトロニダゾールを投与するのは高アンモニア血症などで嫌気性菌を押さるために投与される。

薬品名

メトロニダゾール (英):Metronidazole

商品名

  • Metronidazole

個人的に海外のこれがお勧め。あんまり苦くない。粉にもできる。よって子犬小猫に使用する時便利。

  • フラジール(塩野義)
  • アスゾール
  • アネメトロ(ファイザー)→リンク

適応

  • 脂溶性のためCNSに作用する
  • 嫌気性細菌に有効
  • ジアルジア
  • トリコモナス
  • 大腸バランチジウム.
  • 肝性脳症→肝不全
    • ラクツロースを併用推奨
  • (バベシア)→プロトコールが確立されていない
  • ウサギで血便してたらとりあえず入れる

薬の作用機序

微生物内でニトロ還元酵素系の反応により還元され ニトロソ化合物 (R-NO)に変化し、 このR-NO が殺菌作用を示す。

炎症性結直腸ポリープ(ICRP)

東京大学獣医内科学教室の報告によるとダックスのICRPの常在細菌叢が変動し、短鎖脂肪 酸(SCFA)産生菌が減少している傾向にある報告がある。 短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌が減少することで

  • 腸上皮への栄養供給
  • 腸の運動性の維持
  • 抗炎症作用

の上記が低下すると言う事が考えられている。本薬剤によりSCFA産生菌が増えるのではないかと言う報告がある

SCFA産生菌
Bifidobacterium や Lactobacillales など

薬用量

動物種 薬用量 注意項目
10-30mg/kg bid  PO 5日間
10-25mg/kg bid  PO 5日間
mg/kg
mg/kg
mg/kg
羊・ヤギ mg/kg
うさぎ 20mg/kg BID
フェレット 20mg/kg BID
水に100-600mg/Lでまぜて自由飲水 免疫ミルクと併用すると良い
爬虫類 50mg/kg 食欲刺激の目的で用いられる
両生類 20mg/kg SID 下痢での用量。嫌気性菌の感染の際は2-3倍に増やす
フクロモモンガ 25mg/kg BID 好きなジュースに5mg/mlで調剤して処方
ハリネズミ mg/kg
齧歯類 10-20mg/kg BID しょ糖とまぜる→嗜好性がわるいと食欲がどんどん下がっていくから
ミニブタ mg/kg
野生動物 mg/kg
無脊椎動物 mg/kg
魚類 mg/kg
霊長類 12.5-25mg/kg BID 胃腸炎にて使う事が多い。タイロシンと併用してClostridium対策をした方が良い


    • 犬でトリコモナス30mg/kgでも効かなかったら50mg/kg TIDまで増量

注意事項

  • 胃腸障害

メトロニダゾール中毒

  • 犬において中枢性前庭疾患→斜頸と眼振
  • 対して猫は前脳と小脳症状を呈する。犬よりも低い用量で症状が発現する傾向にある
  • 長期投与により末梢ニューロパシーと顆粒球減少症
  • (犬)60mg/kg/dayで前庭,小脳の機能障害が発現
    • 30mg/kg/dayで前庭,小脳の機能障害が発現した報告もあり、個体差があることに注意する
    • よってインフォームするのはなかなか難しい。インフォームすることで変に心配されて治療すべき状況に飼い主が治療を受け入れなくなってしまい、余計状況が悪くなったりすることがある。
    • (管理人より)中枢神経での副作用言われていますが2千くらいの子犬に処方しましたが経験ありません。もともと中枢神経に問題あった子で成犬に経験があります
  • メトロニダゾールの中毒の場合
    • 治療は投薬の停止で5-14日位で元に戻る事がある
    • 積極的治療を行なう場合以下のプロトコールを個人的に行なっている
      • GABAを介して神経症状が誘発されているので点滴を流して相対的に濃度を減らす
      • ジアゼパムを0.4mg/kg IV shotで投与する
      • その後ジアゼパムを0.5mg/kg PO TID

その他

  • 昔の報告で免疫調整機能があることが報告されているが、後追い研究の結果を見ている限り免疫調整機能はあるように思えない。結論として免疫調整機能はないと考えられている。