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ペスト

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ペストPlague

  • 北里柴三郎とYersinにより独立して発見
  • 記録が残されている最初発生は紀元前12世紀(聖書)
  • 有史以来3回のpandemicな流行
  • わが国では1926年以来発生はない。
  • ヒトのペストには必ず野生げっ歯類が必要
  • 現在、アフリカ、アジア、南アメリカから年間1,000から3,000名の発生。
  • アフリカの発生が患者の75%、死者の80%を占める。

病原体

  • 原因菌はYersinia pestis
  • 腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌。極染色性を示し芽胞と鞭毛を欠く。
  • 病原因子として、莢膜抗原(F1抗原)、ペスチシン、線維素分解因子、VW抗原が知られている。
  • 自然界において、主に野ネズミ、野生げっ歯類を宿主とし、これに吸着する主にネズミノミにより媒介される。
  • ヒトのペスト菌感染経路は、ノミ刺咬に基づく感染(78%)、感染小動物の体液からの感染(20%)ー獣ペストzootic plague。肺ペスト患者から飛沫感染
    • ヒトペストdemic plague。

 

世界におけるペスト

  • 野生げっ歯類で持続的な感染が起こっている地域
    • (1)南アフリカ地方及びマダカスカル
    • (2)ヒマラヤ山脈からインド地方
    • (3)中国の雲南地方から蒙古地方
    • (4)北米南西部ロッキー山脈地方
    • (5)南西北西部アンデス山脈地方

症状

  • ヒトは臨床像から3つの病型に分類
  • (1)腺ペスト
    • ペスト患者の80~90%。1~数個のリンパ節が炎症を起こして腫脹し、疼痛のあるブボ(buboはギリシャ語で鼠径部)を形成。鼠径部、腋窩、鎖骨、頚部、耳介、膝窩、咽頭など。
    • 2~6日の潜伏期の後、発熱、頭痛、悪寒、激しい倦怠感。菌の侵入部位に時に水疱、膿疱、潰瘍。
  • (2)敗血症型ペスト
    • ペスト患者の約10%。通常は致死的。発熱、悪寒、疲労感、腹痛、ショック、皮膚や臓器内出血。汎発性血管内凝固症候群が現れ、皮膚、しょう膜、実質臓器の出血や組織壊死。末端部の皮下出血は黒化し、黒死病の語源。
  • (3)肺ペスト 
    • 原発性の肺ペストは劇症で最も致死率が高い。潜伏期は1?3日。症状が現れると同時に次の感染源(エアロゾル)となる。

動物における症状

  • げっ歯類は急性死から無症状のものもある。
    • 急性死したネズミではリンパ節の出血、巨脾。
    • 亜急性型ではリンパ節の乾酪変性があり、脾臓、
    • 肝臓、肺に小壊死巣。
    • 肉食獣の感受性は低い。

診断

  • 疫学的状況
    • 流行地に滞在経験。死んだ野性動物と接触。
  • 菌分離
  • 免疫組織化学的検査(蛍光抗体法)
  • 抗体検査
  • PCR法
  • 鑑別診断
    • 野兎病、類鼻疽、レプトスピラ症など。

治療・予防

  • 治療
    • マクロライド系、テトラサイクリン系抗生物質が有効。
    • 治療により死亡率が5~20%に低下。迅速な治療が必要。
  • 予防的治療
    • 流行地でのノミの刺咬防止。
    • ヒト用不活化ワクチン
      • 研究者などのhigh risk集団に使用。
      • 輸入規制による感染動物の国内侵入防止。
    • エキゾチックアニマルの検疫が課題。