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セレナイト基礎培地

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サルモネラ増菌培地

  • セレナイト基礎培地(Selenite Broth Base) [#je7ab333]

サルモネラ増菌用

    • 詳細 [#t983de0e]

亜セレン酸ナトリウム(セレナイト)は 大腸菌(Escherichia coli)に対して有毒で,これをチフス菌(Salmonella Typhi)の検索に応用し,亜セレン酸ナトリウムを加えた増菌培地である。 本培地の大腸菌およびグラム陽性球菌に対する抑制作用はそれほど強いものでなく,培養8~12時間以内は大腸菌の発育を阻止し,むしろその数を減少させるが,それ以後は徐々に大腸菌数の増加が見られる。一方, Salmonellaは培養の最初からかなり急速に増殖する。したがって本培地をSalmonellaの増菌培地として使用するときは,検査材料接種後,遅くとも18時間以内に分離培地に移植する必要があり,他のSalmonella増菌培地のように長時間培養をつづけると,大腸菌の過度の増殖のため増菌培地としての効果を示さないことがある。 亜セレン酸ナトリウムの大腸菌に対する有害作用はpH7.0~7.4でもっとも強く,pH8.0以上ではその作用が著しく減弱するので,本培地の至適pH保持には特に考慮がはらわれている。亜セレン酸ナトリウムの大腸菌に対する作用は,肉エキスおよび食塩の存在下では著しく低下するので,本培地にはこれらが加えられていない。また,その作用は酸素圧の高いところでは減弱されるので,培地調製の際,少なくとも液の高さが6cm以上になるように,試験管に分注しなければならない。なお,亜セレン酸ナトリウムは動物の体に対して有害で,しばしば奇形児を出産することが報告されているので,本培地の取扱いには厳重な注意が必要で,とくに女性は本培地の秤量に際しては粉末を吸引しないようにしなければならない。 Salmonella増菌培地として,本培地とMuellerのテトラチオネート培地, Kauffmannのテトラチオネート・ブリリアントグリーン・胆汁培地などとの優劣については,チフス菌(S. Typhi)には後二者よりも優れており,他の一般のSalmonellaに対してはその価値はほとんど同等である。また獣医学領域では,ヒナ白痢菌(S. Gallinarum-pullorum)には本培地はKauffmannの増菌培地よりも著しく優れていると報告している。ただし,本培地では豚コレラ菌(S. Choleraesuis)は発育を抑制されるので,この菌の検出には適さない。 大腸菌のほかShigella, Alcaligenesなども本培地で発育を抑制されるが,Proteus, Citrobacter, Pseudomonas,一部のKlebsiellaなどはほとんど影響をうけない。したがってこれらの菌も本培地中で急速に増殖し,Salmonellaの検出を阻げる。このため,本培地にさらに胆汁酸およびブリリアントグリーンを加えてこれらの菌種の増殖を阻止し,Salmonellaに対する選択性をいっそう強化したSBGスルファ培地がある。

    • 組成(精製水1リットルあたり) [#g3b77156]

-ペプトン      5 g -乳糖        4 g -リン酸2ナトリウム 10 g -pH7.2±0.2 -亜セレン酸ナトリウム4gを添加して使用する。