クリエイティブ・コモンズ・ライセンス北野成昭(キタノナルアキ) 作『獣医志Wiki』はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

エキノコックス

提供: 獣医志Wiki
移動: 案内検索

エキノコックス

宿主の違いからみたエキノコックス症



終宿主

中間宿主

主な動物

キタキツネ、犬、猫、オオカミ、コヨーテなど主に補食動物

人間、野ネズミ、豚、馬、羊、山羊、らくだ。主に補食動物

感染経路

幼虫の寄生した動物を食べて感染。

虫卵を食べても感染しない

終宿主同士(キタキツネや犬等)が接触しても感染しない

虫卵が口から入って感染

汚染された川の水を飲む、汚染された地域の野菜を生で食べる、犬やキタキツネの被毛についた虫卵が口に入る等

中間宿主同士が接触しても感染しない

寄生状態

小腸内で幼虫の原頭節が生育し、成虫となる

腸管内で孵化した仔虫が肝臓へ移動し、幼虫となり、無性増殖

検査方法

糞便検査(抗原検出)→検出された虫卵の特定にはDNA検査が必要

血液検査

症状

少数寄生では無症状。

多数寄生では、下痢など。

人:感染後5~10年は無症状。徐々に肝機能障害が進み、末期には重度の肝機能不全になる。黄疸や腹水、浮腫などが現れる

治療方法

駆虫薬の投与

寄生部位を外科的に切除


エキノコックスとは

  • 世界的に重要な寄生虫性の人獣共通感染症
  • 従来は礼文島の風土病
  • 2002年12月に北海道の室内飼育犬に陽性例
  • ヒト(中間宿主)の場合、放置すると致死的
  • キツネや犬(終宿主)はほとんど無症状
  • 終宿主の治療は容易
  • 原因寄生虫種によって、単包性エキノコックス症(単包条虫)と多包性エキノコックス症(多包条虫)がある。
  • 1983年 網走管内で豚多包虫症を確認。
  • 近年、多包性エキノコックス症が北海道東部から北海道全域に拡大傾向
  • 4類感染症

病原体

  • エキノコックス属(4種)
  • 公衆衛生上重要な種
    • E.multilocularis(多包条虫)
    • E.granulosus(単包条虫)

疫学

  • 20世紀になってヒトと物の交流によって北方諸島から侵入。
  • 最初の流行は毛皮と野ネズミ駆除目的に導入されたキツネに多包条虫感染個体があり礼文島で発生。1937年から1965年までに島民約8,200人のうち114名(1.4%)の患者。
  • 1965年以降の北海道東部の発生は感染キツネが流氷を介して北海道に侵入したと推定。この流行は1997年までに累計146名に達し、毎年数名の新しい患者が発生。1998年までに累計383名の患者。
  • 北海道以外での患者は77名。51名は国外での感染と推定。その他の感染ルートは不明。

日本での発生

  • 1999年4月から届けられたのは全国で40例。その内、35例が多包条虫で5例が単包条虫。
  • 単包性エキノコックス症は1881年の熊本が初発生。現在まで70例の発生があり、その1/3は国外での感染が示唆。

伴侶動物での感染

  • 1997~2002年 北海道の犬1,650頭で糞便内抗原陽性18頭(1.1%)、虫卵陽性6頭(0.4%)。
  • 2002年12月 札幌市内の室内飼育犬で虫卵陽性例確認。
  • ネコについては170頭検査して抗原陽性4頭(2.4%)ただし、多包条虫卵の排出は認めていない。
  • アンケート調査で、市部より郡部での飼育や、放し飼いと感染の関係あり。

人の症状・診断・治療

  • 主に肝臓で病巣。肝臓がんと診断される場合もある。肺、脾臓、腎臓、脳、腸間膜、骨髄などに転移。放置すると90%以上が死亡。
  • 通常は以下の3期に分けられる。
    • 無症状期;成人で約10年、小児で約5年。
    • 進行期;胆管や血管を塞ぐたね肝機能障害。
    • 末期;通常6ヶ月で重度の肝機能不全、黄疸・腹水・浮腫を合併。さまざまな臓器に転移。
  • 診断;臨床的診断、ELISA法(第一次診断)、ウエスタンブロット法(第二次診断)。
  • 治療;外科的切除。自覚症状が出た後では治癒率低い。

狐、犬、猫での症状・診断・治療

  • 通常は無症状。まれに下痢や血液を含む粘液塊を排泄。
  • 診断;剖検、糞便検査、糞便内抗原検出法。
  • 治療;プラジクアンテルは最も効果的。ただし、虫卵に対する効果なし。


以下参考程度にwikipediaより引用

単包条虫 (Echinococcus granulosus)

形態
  • 虫卵は直径約35μmで、六鉤幼虫が中に入っている。虫卵の形態は単包条虫の物も多包条虫の物も類似しており、両種の虫卵の区別は困難である。
  • 成虫は約7週間で体長2.5mm*9.0mmに成熟し、終宿主の腸内に虫卵を放出し始める。終宿主に大きな病害を与えることはない。
生活環(ライフサイクル)

終宿主(=イヌ、オオカミ、ジャッカル、コヨーテ、ハイエナ、ディンゴ、キツネといったイヌ科の肉食獣)
→終宿主の糞便中に虫卵が排出され、周囲の地面や水や植物等を汚染する。
→虫卵が粉塵、飲水、食物などとともに中間宿主に経口摂取される
→中間宿主(=ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、トナカイといった草食獣や、ヒト)
→宿主の十二指腸・小腸上部で孵化。
→終宿主が単包虫を含む中間宿主の臓器を食べる。

ヒトへの感染経路
  • 病態
    • 虫卵から放出された六鉤幼虫が腸壁に侵入し、血流もしくはリンパ流にのって諸臓器 (肝、肺、脳など) に運ばれ幼虫期である単包虫を形成する。単包虫は様々な大きさの球形の限局性嚢胞性病変を形成する。嚢胞は漿液性の包虫液で満たされており、その中に多数の原頭節が生じる。


多包条虫 (Echinococus multilocularis)(日本(北海道)に生息)

形態
  • 虫卵は虫卵は直径約35μmで、六鉤幼虫が中に入っている。
  • 包虫は嚢に包まれ、包虫嚢胞を形成する。包虫嚢胞内の包虫には頭部しかない。
  • 成虫の体長は単包条虫より短く1.2mm*3.7mmであり、体節が数個という小ぶりな条虫である。
生活環(ライフサイクル)

終宿主(=イヌ、キツネ、オオカミ、コヨーテ、タヌキ、ネコ)
→糞便中に虫卵が排出され、周囲の環境を汚染
→虫卵が粉塵、飲水、食物などとともに中間宿主に経口摂取される
→中間宿主(=本来自然界におけては野ネズミ(北海道において重要な役割を果たしているのはエゾヤチネズミ)であるが、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシなどの家畜哺乳類やヒトを含む霊長類)
→虫卵は小腸で孵化して、多包虫という幼虫になる
→終宿主が多包虫を含む中間宿主の臓器を摂取する
→小腸内で原頭節は約5週間で成熟成虫となり虫卵の放出を始める 多包条虫の成虫が終宿主に大きな病害を与えることはない。 終→中間→終→…という形でしか感染しないので、終宿主であるイヌやキツネに虫卵を食べさせても通常は感染は成立しない。しかし少数例であるが、幼虫がイヌやキツネの内臓に寄生したことが報告されている。

ヒトへの感染経路

虫卵に汚染された飲水や食物を摂取したり、成虫が感染している犬との接触によって虫卵が経口摂取されることによって、感染が成立する。経皮感染はしない。幼虫が感染している中間宿主の食肉や内臓をヒトが食べても感染は成立しない。終→中間→終→…という形でしか感染しないので、ヒト同士の接触によっては感染しない。

病態

虫卵から放出された六鉤幼虫が腸壁に侵入し、血流もしくはリンパ流にのって諸臓器 (肝、肺、脳など) に運ばれ包虫を形成する。多包条虫は小嚢胞が多数集合した蜂巣状構造を形成する。まれに脳、骨、骨格筋、腎臓、脾臓、その他の組織からも検出される。