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2015年5月5日 (火) 14:49時点における最新版
ペストPlague
- 北里柴三郎とYersinにより独立して発見
- 記録が残されている最初発生は紀元前12世紀(聖書)
- 有史以来3回のpandemicな流行
- わが国では1926年以来発生はない。
- ヒトのペストには必ず野生げっ歯類が必要
- 現在、アフリカ、アジア、南アメリカから年間1,000から3,000名の発生。
- アフリカの発生が患者の75%、死者の80%を占める。
病原体
- 原因菌はYersinia pestis
- 腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌。極染色性を示し芽胞と鞭毛を欠く。
- 病原因子として、莢膜抗原(F1抗原)、ペスチシン、線維素分解因子、VW抗原が知られている。
- 自然界において、主に野ネズミ、野生げっ歯類を宿主とし、これに吸着する主にネズミノミにより媒介される。
- ヒトのペスト菌感染経路は、ノミ刺咬に基づく感染(78%)、感染小動物の体液からの感染(20%)ー獣ペストzootic plague。肺ペスト患者から飛沫感染
- ヒトペストdemic plague。
世界におけるペスト
- 野生げっ歯類で持続的な感染が起こっている地域
- (1)南アフリカ地方及びマダカスカル
- (2)ヒマラヤ山脈からインド地方
- (3)中国の雲南地方から蒙古地方
- (4)北米南西部ロッキー山脈地方
- (5)南西北西部アンデス山脈地方
症状
- ヒトは臨床像から3つの病型に分類
- (1)腺ペスト
- ペスト患者の80~90%。1~数個のリンパ節が炎症を起こして腫脹し、疼痛のあるブボ(buboはギリシャ語で鼠径部)を形成。鼠径部、腋窩、鎖骨、頚部、耳介、膝窩、咽頭など。
- 2~6日の潜伏期の後、発熱、頭痛、悪寒、激しい倦怠感。菌の侵入部位に時に水疱、膿疱、潰瘍。
- (2)敗血症型ペスト
- ペスト患者の約10%。通常は致死的。発熱、悪寒、疲労感、腹痛、ショック、皮膚や臓器内出血。汎発性血管内凝固症候群が現れ、皮膚、しょう膜、実質臓器の出血や組織壊死。末端部の皮下出血は黒化し、黒死病の語源。
- (3)肺ペスト
- 原発性の肺ペストは劇症で最も致死率が高い。潜伏期は1?3日。症状が現れると同時に次の感染源(エアロゾル)となる。
動物における症状
- げっ歯類は急性死から無症状のものもある。
- 急性死したネズミではリンパ節の出血、巨脾。
- 亜急性型ではリンパ節の乾酪変性があり、脾臓、
- 肝臓、肺に小壊死巣。
- 肉食獣の感受性は低い。
診断
- 疫学的状況
- 流行地に滞在経験。死んだ野性動物と接触。
- 菌分離
- 免疫組織化学的検査(蛍光抗体法)
- 抗体検査
- PCR法
- 鑑別診断
- 野兎病、類鼻疽、レプトスピラ症など。
治療・予防
- 治療
- マクロライド系、テトラサイクリン系抗生物質が有効。
- 治療により死亡率が5~20%に低下。迅速な治療が必要。
- 予防的治療
- 流行地でのノミの刺咬防止。
- ヒト用不活化ワクチン
- 研究者などのhigh risk集団に使用。
- 輸入規制による感染動物の国内侵入防止。
- エキゾチックアニマルの検疫が課題。