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蛋白漏出性腸症
提供: 獣医志Wiki
- 蛋白漏出性腸症 (PLE:Protein Losing Enteropathy)
- なにかしらの原因で腸からタンパク質がもれ、血液検査でTPが低かったり、低アルブミン血症を引き起こす。また消火器症状がないPLEであることもしばしばあるため注意です。
なお血清タンパクについての知識がある程度ある前提で下記解説を行っています。
ER対策
来院時既往歴でオーナー自ら病名をいってくれる場合もあるが、夜間救急で低アルブミン血症を見つけることやその時にPLEだとわかるケースがある。
- まず意識レベルの状態をチェックしておく事とDICや低血圧になっていないかを確認する。
- 基本的に蛋白漏出性疾患で胸腹水は抜かない(低アルブミン血症が増悪するので)が呼吸状態が悪いときは抜いて反応をみる。
できればアルブミン製剤を点滴することがいい(かもしれない)
病因・病態生理
リンパ管拡張症、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、 パルボウイルス感染症、リンパ腫、寄生虫感染症、異物による刺激、腸重積症などが原因として考えられている。
疫学
管理人の働いている地域ではウェルッシュコーギーやピンシャーが多い傾向にあります。
臨床症状
診断
- 低アルブミン血症の確認
- Alb<1.5g/dLで胸水・腹水・浮腫が現れる(胸水・腹水は沈渣で確認しておく、CBCの機械に通しておくのもよいかも)
- Alb≤2.0g/dLの段階で、胸水・腹水の貯留がある場合は、消化管以外の基礎疾患をルールアウトしておく
- アルブミンが吸収できないのか、合成できないのか、外に出すぎているのか?を考える
- 吸収の過程を疑う例→飢餓、若齢動物で給餌量が適切でないなど
- 合成ができない→肝不全がないか?NH3や胆汁酸があがっていないか?血液検査と画像検査
- アウトプットが増える→本疾患以外にも蛋白漏出性腎症など。尿蛋白/クレアチニン比の測:定正常は<1
- 上記検査を通してPLEを疑う場合以下の鑑別診断を行う(以外に見落とされている事があるので)
- リンパ管拡張症
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 腫瘍
- 消化管潰瘍
- 寄生虫症(鉤虫、鞭虫)
- 慢性腸重積(若齢)
- 内視鏡は病理診断をする上で必要になる場合があるが十二指腸や結腸〜直腸に病変がない場合もあるためエコーで場所を事前にわかっている必要がある。
- 試験開腹は全域や臓器チェックに役に立つが、低アルブミン血症での癒合不全や麻酔管理の難易度が若干高い。全層生検や問題となっている個所がとれるのは非常に魅力的だが。。。
尿検査
血液検査
画像検査
エックス線
胸腹水などのためコントラストがつかず判断材料にならないこともある。
エコー
CT・MRI
治療
低脂肪食 低鎖脂肪酸の給餌→最近はあまり評価されなくなってきている
余後
かなりケースバイケースで何とも言えない 体感的に対処療法をやっていても一般状態が下がって行く子やステロイドに反応が悪い場合あまりよくない気がする。