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+ | **1)一般と畜場:1日に10 頭を越える獣畜or生後1 年以上の牛・馬をと殺・解体する規模を持つと畜場 | ||
+ | **2)簡易と畜場:1日に10 頭までの範囲で小型の食用獣畜or生後1 年未満の子牛・子馬・豚・綿羊・ヤギだけを処理するもの排水処理施設と排水処理、と畜場からの排水はBOD(生物化学酸素要求量)負荷量が著しく高く、腐敗・変質する傾向が高い | ||
+ | ***排水処理:活性汚泥法 | ||
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+ | == と畜検査 == | ||
+ | === 1)生体検査 === | ||
と殺目前に望診、検温、触診などをによって行う臨床検査で、獣畜を次の3種類に区別することが目的である | と殺目前に望診、検温、触診などをによって行う臨床検査で、獣畜を次の3種類に区別することが目的である | ||
− | + | *a.獣畜に異常が認められないもの→ 一般と室でと殺解体 | |
− | + | *b.多少の異常が認められるが、解体後の所見と総合して判断する必要があるもの(条件付と殺) | |
− | + | **→一般と畜場:病と畜室でと殺解体 | |
− | + | **→簡易と畜場:他の獣畜の処理の終了後、と殺解体 | |
− | + | *c.炭痘・豚丹毒などの伝染病に羅患していたり、高度の黄痘・水腫が認められるため、食用不適としてと殺を禁止するもの。 | |
− | + | **生物学的製剤を注射して20日以内の獣畜のと殺申請は受理されない | |
− | + | **抗菌剤を投与された牛・馬・豚は3~30日間出荷制限 | |
− | + | **抗菌剤が添加された飼料を給与された牛・豚は7日間出荷制限 | |
− | + | === 2)解体前の検査 === | |
− | + | *と体の外部検査 | |
− | + | **一般のと畜:主として血液性状を観察(天然孔、皮膚、可視粘膜) | |
− | + | **いわゆる切迫と畜:生体検査を欠くので、一般外部検査を入念に行い、天然孔、排出物、可視粘膜の検査、血液の染色鏡検を行う | |
− | + | === 3)解体後の検査 === | |
− | + | *と体の内部検査 | |
− | + | **肉眼検査、必要があれば精密検査を行い、生体・解体前の検査の結果と総合して、枝肉、内蔵などを次の3 種類に区分することが目的である。 | |
− | + | ***a.なんら異常がなく、食用に適するもの | |
− | + | ***b.伝染病、寄生虫病、非伝染性の全身病で全部廃棄するもの | |
− | + | ***c.限局した病変があり、一部廃棄、残りは食用に適するもの | |
− | + | === 4)廃棄(と畜場施行法規則第Ⅲによる) === | |
生体検査の結果と殺禁止、解体前の検査の結果解体禁止となる疾病名 | 生体検査の結果と殺禁止、解体前の検査の結果解体禁止となる疾病名 | ||
− | + | *牛疫 | |
− | + | *牛肺疫 | |
− | + | *口蹄疫 | |
− | + | *流行性脳炎 | |
− | + | *狂犬病 | |
− | + | *牛の流行性感冒 | |
− | + | *Q熱 | |
− | + | *炭疽 | |
− | + | *気腫疽 | |
− | + | *出血性敗血症 | |
− | + | *悪性水腫 | |
− | + | *レプトスピラ病 | |
− | + | *ヨーネ病(全身症状) | |
− | + | *ピロプラズマ病 | |
− | + | *アナプラズマ病 | |
− | + | *トリパノゾーマ病 | |
− | + | *白血病 | |
− | + | *鼻疽 | |
− | + | *仮性皮疽 | |
− | + | *馬伝染性貧血(全身症状) | |
− | + | *リステリア病 | |
− | + | *痘病 | |
− | + | *豚コレラ | |
− | + | *豚丹毒 | |
− | + | *アフリカ豚コレラ | |
− | + | *豚水胞病 | |
− | + | *トキソプラズマ病 | |
− | + | *サルモネラ病 | |
− | + | *結核病(全身性、重症、著しい栄養障害、2個以上の臓器・リンパ節にまん延、著しい病変を呈する急性症) | |
− | + | *ブルセラ病(全身症状) | |
− | + | *破傷風 | |
− | + | *膿毒症 | |
− | + | *敗血症 | |
− | + | *尿毒症 | |
− | + | *黄痘(高度) | |
− | + | *水腫(高度) | |
− | + | *腫瘍(肉、臓器、骨、リンパ節に多数発生) | |
− | + | *旋毛虫病 | |
− | + | *有鈎嚢虫症 | |
− | + | *無釣嚢虫症(全身にまん延) | |
− | + | *中毒諸症(人体に有害) | |
− | + | *熱性諸症(著しい高熱) | |
− | + | *注射反応(生物学的製剤による著しい反応) | |
− | + | **総計43種 | |
− | + | === 5)解体後の検査の結果全部廃棄、又は部分廃棄となる疾病 (前記諸疾病は全部廃棄 (疾病→廃棄となる部分)) === | |
− | + | *ヨーネ病(病変が腸の一部に限局)→腸・腸間膜・血液 | |
− | + | *馬伝染性貧血(病変が臓器に限局)→当該臓器 | |
− | + | *結核病(病変が乳房・一臓器・リンパ節に限局し、病変が2 個以上の臓器・リンパ節に蔓延していても小部に限局し急性症を呈していない) | |
− | + | **→乳房・当該臓器・当該リンパ節・血液 | |
− | + | *ブルセラ症(病変が乳房・生殖器の一部に限局)→ 乳房・生殖器・そのリンパ節・血液 | |
− | + | *寄生虫症(旋毛虫症・有鈎嚢虫症・無鈎嚢虫症を除く)→寄生虫の分離できない部分 | |
− | + | *住血胞子虫症では血液 | |
− | + | *その他 | |
− | + | **黄痘・水腫・腫傷・放射菌症・ブドウ菌腫→当該病変部分・血液 | |
− | + | **外傷・炎症・変性・萎縮・奇形→当該病変部分 | |
− | **6)検印 | + | === 6)検印 === |
肉・内蔵・皮膚に検印を押されて、と畜場外に搬出可能となる検印は、消費者に安全な食肉であることを保証検印により“検”の字・都道府県名・と畜場番号が押される | 肉・内蔵・皮膚に検印を押されて、と畜場外に搬出可能となる検印は、消費者に安全な食肉であることを保証検印により“検”の字・都道府県名・と畜場番号が押される | ||
− | + | == と畜場外と殺 == | |
− | + | *1)切迫と殺:不慮の災害により負傷したり、難産、産褥麻痺、急性膨腸症で直ちにと殺する必要がある場合に限定 | |
− | + | **解体はと畜場内 | |
− | + | **検査申請書の提出 | |
− | + | ***a.獣畜が不慮の災害により、負傷し、または救うことのできない状態に陥った場合 ex)交通事故による獣畜の外傷 | |
− | + | ***b.獣畜が難産、産褥麻痺、急性膨腸症にかかった場合 | |
− | + | *2)自家用と殺:主として営業目的ではなく自己およびその同居者の食用に供する目的で、生後一年未満の牛および馬、豚、めん羊および山羊をと殺すること | |
− | + | **検査申請書の提出 | |
− | + | *3)船舶内と殺:遠洋航路航行中の船舶内と殺(食用に供する目的) | |
− | + | *4)その他: | |
− | + | **a.災害などでと畜場が滅失し、設備がき損した場台 | |
− | + | **b.離島であるため、と畜場以外の場所においてと殺することがやむを得ない場合 | |
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− | **2)食肉製品の保存基準 | + | == 食品の加工と衛生 == |
− | + | === 1)加工衛生(添加物) === | |
− | + | *a.食肉製品の製造基準 | |
+ | **原料肉は鮮度良好で、微生物汚染が少ないこと | ||
+ | **冷凍原料肉の解凍は衛生的な場所で行う | ||
+ | **水を使うときは使用目的の流水で行う | ||
+ | *b.非加熱食肉製品の製造基準 | ||
+ | **原料肉は豚肉(内臓は除く)で、と殺24時間以内に4℃以下に冷却・保持し、pH6.0以下にする | ||
+ | **冷凍原料肉の解凍・原料肉の整形は、肉温が10℃を超えないこと | ||
+ | *c.食肉製品に用いる添加物 | ||
+ | **調味料 | ||
+ | **香辛料 | ||
+ | **発色剤(亜硝酸ナトリウム) | ||
+ | ***合成保存料 | ||
+ | ***粘着補強剤 | ||
+ | ***粘着材料 | ||
+ | ***着色料 | ||
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+ | === 2)食肉製品の保存基準 === | ||
+ | *a.食肉製品は10℃以下で保存する(冷凍食肉製品は*15℃以下で保存) | ||
+ | *b.衛生的容器で密封・ケージング(ハム・ソーセージの形を作るために原料肉を直接詰める包装試料のこと)衛生的な合成樹脂フィルム・合成樹脂・加工紙・硫黄紙・パラフィン紙で包装して運搬する |
2016年2月26日 (金) 06:48時点における最新版
目次
と畜場の定義と種類
- 定義
- と畜場とは、「食用に供する目的で獣畜(牛、馬、豚、めん羊および山羊)をと殺、または解体するための施設」をいう
- 種類
- 1)一般と畜場:1日に10 頭を越える獣畜or生後1 年以上の牛・馬をと殺・解体する規模を持つと畜場
- 2)簡易と畜場:1日に10 頭までの範囲で小型の食用獣畜or生後1 年未満の子牛・子馬・豚・綿羊・ヤギだけを処理するもの排水処理施設と排水処理、と畜場からの排水はBOD(生物化学酸素要求量)負荷量が著しく高く、腐敗・変質する傾向が高い
- 排水処理:活性汚泥法
と畜検査
1)生体検査
と殺目前に望診、検温、触診などをによって行う臨床検査で、獣畜を次の3種類に区別することが目的である
- a.獣畜に異常が認められないもの→ 一般と室でと殺解体
- b.多少の異常が認められるが、解体後の所見と総合して判断する必要があるもの(条件付と殺)
- →一般と畜場:病と畜室でと殺解体
- →簡易と畜場:他の獣畜の処理の終了後、と殺解体
- c.炭痘・豚丹毒などの伝染病に羅患していたり、高度の黄痘・水腫が認められるため、食用不適としてと殺を禁止するもの。
- 生物学的製剤を注射して20日以内の獣畜のと殺申請は受理されない
- 抗菌剤を投与された牛・馬・豚は3~30日間出荷制限
- 抗菌剤が添加された飼料を給与された牛・豚は7日間出荷制限
2)解体前の検査
- と体の外部検査
- 一般のと畜:主として血液性状を観察(天然孔、皮膚、可視粘膜)
- いわゆる切迫と畜:生体検査を欠くので、一般外部検査を入念に行い、天然孔、排出物、可視粘膜の検査、血液の染色鏡検を行う
3)解体後の検査
- と体の内部検査
- 肉眼検査、必要があれば精密検査を行い、生体・解体前の検査の結果と総合して、枝肉、内蔵などを次の3 種類に区分することが目的である。
- a.なんら異常がなく、食用に適するもの
- b.伝染病、寄生虫病、非伝染性の全身病で全部廃棄するもの
- c.限局した病変があり、一部廃棄、残りは食用に適するもの
- 肉眼検査、必要があれば精密検査を行い、生体・解体前の検査の結果と総合して、枝肉、内蔵などを次の3 種類に区分することが目的である。
4)廃棄(と畜場施行法規則第Ⅲによる)
生体検査の結果と殺禁止、解体前の検査の結果解体禁止となる疾病名
- 牛疫
- 牛肺疫
- 口蹄疫
- 流行性脳炎
- 狂犬病
- 牛の流行性感冒
- Q熱
- 炭疽
- 気腫疽
- 出血性敗血症
- 悪性水腫
- レプトスピラ病
- ヨーネ病(全身症状)
- ピロプラズマ病
- アナプラズマ病
- トリパノゾーマ病
- 白血病
- 鼻疽
- 仮性皮疽
- 馬伝染性貧血(全身症状)
- リステリア病
- 痘病
- 豚コレラ
- 豚丹毒
- アフリカ豚コレラ
- 豚水胞病
- トキソプラズマ病
- サルモネラ病
- 結核病(全身性、重症、著しい栄養障害、2個以上の臓器・リンパ節にまん延、著しい病変を呈する急性症)
- ブルセラ病(全身症状)
- 破傷風
- 膿毒症
- 敗血症
- 尿毒症
- 黄痘(高度)
- 水腫(高度)
- 腫瘍(肉、臓器、骨、リンパ節に多数発生)
- 旋毛虫病
- 有鈎嚢虫症
- 無釣嚢虫症(全身にまん延)
- 中毒諸症(人体に有害)
- 熱性諸症(著しい高熱)
- 注射反応(生物学的製剤による著しい反応)
- 総計43種
5)解体後の検査の結果全部廃棄、又は部分廃棄となる疾病 (前記諸疾病は全部廃棄 (疾病→廃棄となる部分))
- ヨーネ病(病変が腸の一部に限局)→腸・腸間膜・血液
- 馬伝染性貧血(病変が臓器に限局)→当該臓器
- 結核病(病変が乳房・一臓器・リンパ節に限局し、病変が2 個以上の臓器・リンパ節に蔓延していても小部に限局し急性症を呈していない)
- →乳房・当該臓器・当該リンパ節・血液
- ブルセラ症(病変が乳房・生殖器の一部に限局)→ 乳房・生殖器・そのリンパ節・血液
- 寄生虫症(旋毛虫症・有鈎嚢虫症・無鈎嚢虫症を除く)→寄生虫の分離できない部分
- 住血胞子虫症では血液
- その他
- 黄痘・水腫・腫傷・放射菌症・ブドウ菌腫→当該病変部分・血液
- 外傷・炎症・変性・萎縮・奇形→当該病変部分
6)検印
肉・内蔵・皮膚に検印を押されて、と畜場外に搬出可能となる検印は、消費者に安全な食肉であることを保証検印により“検”の字・都道府県名・と畜場番号が押される
と畜場外と殺
- 1)切迫と殺:不慮の災害により負傷したり、難産、産褥麻痺、急性膨腸症で直ちにと殺する必要がある場合に限定
- 解体はと畜場内
- 検査申請書の提出
- a.獣畜が不慮の災害により、負傷し、または救うことのできない状態に陥った場合 ex)交通事故による獣畜の外傷
- b.獣畜が難産、産褥麻痺、急性膨腸症にかかった場合
- 2)自家用と殺:主として営業目的ではなく自己およびその同居者の食用に供する目的で、生後一年未満の牛および馬、豚、めん羊および山羊をと殺すること
- 検査申請書の提出
- 3)船舶内と殺:遠洋航路航行中の船舶内と殺(食用に供する目的)
- 4)その他:
- a.災害などでと畜場が滅失し、設備がき損した場台
- b.離島であるため、と畜場以外の場所においてと殺することがやむを得ない場合
食品の加工と衛生
1)加工衛生(添加物)
- a.食肉製品の製造基準
- 原料肉は鮮度良好で、微生物汚染が少ないこと
- 冷凍原料肉の解凍は衛生的な場所で行う
- 水を使うときは使用目的の流水で行う
- b.非加熱食肉製品の製造基準
- 原料肉は豚肉(内臓は除く)で、と殺24時間以内に4℃以下に冷却・保持し、pH6.0以下にする
- 冷凍原料肉の解凍・原料肉の整形は、肉温が10℃を超えないこと
- c.食肉製品に用いる添加物
- 調味料
- 香辛料
- 発色剤(亜硝酸ナトリウム)
- 合成保存料
- 粘着補強剤
- 粘着材料
- 着色料
2)食肉製品の保存基準
- a.食肉製品は10℃以下で保存する(冷凍食肉製品は*15℃以下で保存)
- b.衛生的容器で密封・ケージング(ハム・ソーセージの形を作るために原料肉を直接詰める包装試料のこと)衛生的な合成樹脂フィルム・合成樹脂・加工紙・硫黄紙・パラフィン紙で包装して運搬する