クリエイティブ・コモンズ・ライセンス北野成昭(キタノナルアキ) 作『獣医志Wiki』はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

「血清蛋白分画」の版間の差分

提供: 獣医志Wiki
移動: 案内検索
(α1分画)
行16: 行16:
 
本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。
 
本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。
  
*α2分画 [#pfcc99aa]
+
== α2分画 ==
 
;Haptoglobin (Hp)
 
;Haptoglobin (Hp)
 
:フェノタイプとして、Hp1*1、Hp2*1、Hp2*2 の 3 種類がある。  ヘモグロビン (Hb)のキャリアなので、体内で溶血が起こるとHbと結合して消費され測定限界以下にまで激減する。 また、急性肝炎など肝臓での合成障害があっても低値となる。一面、代表的急性期反応物質としてあらゆる炎症の場合に数倍にも増加する。
 
:フェノタイプとして、Hp1*1、Hp2*1、Hp2*2 の 3 種類がある。  ヘモグロビン (Hb)のキャリアなので、体内で溶血が起こるとHbと結合して消費され測定限界以下にまで激減する。 また、急性肝炎など肝臓での合成障害があっても低値となる。一面、代表的急性期反応物質としてあらゆる炎症の場合に数倍にも増加する。
行25: 行25:
 
:高脂血症、ネフローゼで増加する。ネフローゼのときは基準値の 3 倍ほどにも達することがある。本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。
 
:高脂血症、ネフローゼで増加する。ネフローゼのときは基準値の 3 倍ほどにも達することがある。本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。
 
α2 分画の量は炎症のときは Hp の増加、ネフローゼ、高脂血症では α2*M の増加によって増える。ネフローゼのときは Hp もしばしば増加する。一方、低下については、α2*M が減少する病態はまれなので、この分画の減少はほとんどの場合Hp の減少が原因である。
 
α2 分画の量は炎症のときは Hp の増加、ネフローゼ、高脂血症では α2*M の増加によって増える。ネフローゼのときは Hp もしばしば増加する。一方、低下については、α2*M が減少する病態はまれなので、この分画の減少はほとんどの場合Hp の減少が原因である。
 
  
 
== β分画 ==
 
== β分画 ==

2014年11月25日 (火) 22:18時点における版

category;臨床検査

血清蛋白
血漿中に含まれる輸送蛋白、急性相蛋白、胎児性蛋白、抗体、補体、酵素、ホルモン、凝固因子、糖蛋白、リポ蛋白の総称
  • 臨床的意義
    • 血清の濃度の調節や、色素・薬剤の運搬。
    • 血液凝固に関連。
    • リポ蛋白、ビタミン、ホルモンなどの運搬。
    • 病原体に抵抗する抗体

α1分画

α1* anti*trypsin (α1*AT)
α1 分画のほとんどは α1*AT であるから、α1 分画の増減はこの蛋白によって決まる。

急性期反応物質として炎症のとき 2*3 倍程度まで容易に増加する。 まれなことであるが遺伝性の若年性肺気腫の原因となるこの蛋白の欠損症が知られている。 本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。

α2分画

Haptoglobin (Hp)
フェノタイプとして、Hp1*1、Hp2*1、Hp2*2 の 3 種類がある。  ヘモグロビン (Hb)のキャリアなので、体内で溶血が起こるとHbと結合して消費され測定限界以下にまで激減する。 また、急性肝炎など肝臓での合成障害があっても低値となる。一面、代表的急性期反応物質としてあらゆる炎症の場合に数倍にも増加する。

炎症と溶血が共存するときは溶血の影響をより多く受け、増加が鈍るか又はときによると炎症があるのにもかかわらず減少する。

α2*macroglobulin (α2*M)
高脂血症、ネフローゼで増加する。ネフローゼのときは基準値の 3 倍ほどにも達することがある。本来の機能はプロテアーゼ・インヒビターである。

α2 分画の量は炎症のときは Hp の増加、ネフローゼ、高脂血症では α2*M の増加によって増える。ネフローゼのときは Hp もしばしば増加する。一方、低下については、α2*M が減少する病態はまれなので、この分画の減少はほとんどの場合Hp の減少が原因である。

β分画

Transferrin (Tf)
鉄のキャリアであり、鉄欠乏性貧血で増加すが、増えても 2 倍にまでなることはまずない。ネフローゼでは尿中への漏出によって 10mg/dL 近くまで低下することがある。合成が落ちる肝硬変でも著しく低下する。
補体第3成分 (C3)
炎症で増加するが、200 mg/dL に達することはまれである。SLE でときに測定限界を下り事実上ゼロにまで低下する。

β分画のピークは Tf  である。Tf は 鉄欠乏性貧血、妊娠などで増加し、β のピークが大きく高くなる。 炎症では Tf は増減いずれもある。 炎症では C3 や免疫グロブリンの増加の影響によってβのピークが増高することがある。ネフローゼで Tf は著減し、小さいピークになるが、肝硬変ではβ のピークがつぶれてしまうこともある。なお、ネフローゼでは、α2からβ の領域まで広く泳動される α2*M、β*リポ蛋白の増加のため、α2 と β の間の谷間が埋まるとともに β の底上げが起こって、Tf の減少にもかかわらず β 分画の量としては基準値レベルを維持することがある。 C3 は SLE でほぼ消失するほどの減少があっても、C3 の変化量が増減とも最大約 100 mg/dL以内 なので、泳動図上の β のピークが目立って小さくなることはない。


γ分画

IgG、 IgAおよび IgM: 慢性炎症、慢性肝炎、肝硬変、腫瘍、自己免疫疾患,、HIV 感染などで増加する。 クラス(*)別の変化として、IgA はIgA腎症で、IgM は多くの感染症の初期、急性肝炎の初期などで増加する。 IgA および IgM の増加があるとβ とγ の谷が埋まることをβ*γ リンキングと呼ぶこともある。 原発性および続発性の免疫不全では どのクラスも減少する。 免疫グロブリンの中では分子量が比較的小さい IgG はネフローゼでは尿への漏出により減少することが多い。すべての免疫グロブリンには M 蛋白血症がある。 M 蛋白血症では M 蛋白以外の免疫グロブリンは減少する。(IgG を含め5種類の免疫グロブリンをそれぞれクラスと呼ぶ)

急性炎症型

Albは低下傾向・α1・α2を中心としたグロブリン分画の増加(量的増加)が特徴的。β1・β2も若干上昇。


慢性炎症型

慢性皮膚炎
β↑が多い。特に毛包虫症。⇒β領域のIgG↑↑ 
子宮蓄膿症
高α2、高β、高γ

γグロブリンが増加する(ポリクローナルガンモパチー)。これはAlb分画に比べてはるかに幅広い。 猫伝染性腹膜炎(FIP) 猫免疫不全症(FIV) 一部のリンパ腫


腫瘍性疾患

γグロブリンはAlb分画の幅と等しいか狭い。(モノクローナルガンモパチー)、異常プラズマ細胞の腫瘍性単クローン性増殖・多発性骨髄腫・マクログロブリン血症・髄外性プラズマ細胞腫・一部のリンパ腫などが示す

増加している蛋白
IgG、IgM、IgE、IgAのいずれか。H鎖(γ、α、μ、Σ、ε) L鎖(κ、λ)
M蛋白
単クローン性(モノクローナル)免疫グロブリンのこと。
  • M蛋白型:α2~γ分画にかけて単一クローン性(monoclonal)免疫グロブリン(M蛋白)が増加し、急峻な山のようなピークが見られる。M蛋白は、heavy chain の移動によりkappa(κ)型及びlamda(λ)型に分類される。 
  • 多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、アミロイドーシス等がる


急性肝障害

軽度のAlb↓ 軽度のβ・γ↑

肝硬変

高度のAlb↓とβ―γブリッジの形成を伴う幅広い高グロブリン血症 A/G↓

ネフローゼ

Albのほか、糸球体から通常では濾過されにくいTf、α酸性糖蛋白、αアンチトリプシンなどを主とする低分子蛋白が尿中に排泄される

  • 高度のAlb分画↓とα2、β↑↑