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神経症状を呈する疾患:牛

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グラステタニー

種々の原因で低Mg血症を起こし、興奮、痙攣などの神経症状を表わす疾病。

  • 原因
    • Mg欠乏でK過剰の土壌への放牧、N含量の多い牧草
  • 症状
    • 知覚過敏、身体各部の振戦、眼球振盪、牙関緊急などの強直性痙攣・間代性痙攣を発して起立不能となる。
  • 臨床病理
    • 低Mg血症を示し、低Ca血症を示すものも多い。
  • 診断
    • 早春、秋期に放牧牛が神経症状を示したときは本症を疑い、血清Mg値の測定を行う。
  • 治療
    • 経過が急速であるため、治療は迅速に行う。Mg、Ca の補給が極めて有効。硫酸マグネシウム溶液を静脈内または皮下に投与。
  • 予防
    • 十分な放牧馴致を行う。放牧前にマグネシウム剤を飼料に添加する。


伝染性血栓塞栓性髄膜脳炎(ヘモフィルス脳炎)

Haemophilus somnusの飛沫感染で発症し、脳に血栓を伴う急性化膿性の髄膜脳炎を起こす。

  • 原因
    • Haemophilus somnus(グラム陰性小桿菌)の感染による。基本的には日和見感染症で、発症にはストレスが関与。過去発生があった牛群では不顕性感染牛が存在。血行性に菌が全身の臓器に侵入。
  • 症状
    • 甚急性で発症後8時間以内の急死が多い。体温上昇、運動障害を起こし、起立不能となると症状は急速に進行しSleeper syndrome(意識混濁、閉眼、脱力、昏睡)となる。そのほかに敗血症性に肺炎、関節炎なども起こす。
  • 診断
    • 寒冷時に神経症状と呼吸器症状を伴う疾患が発生したら本症を疑い、脳脊髄液、関節液などから菌の分離を行う。
  • 治療
    • 一般に予後は悪く死廃立が高い。ペニシリン系、テトラサイクリン系が有効。


リステリア症

  • 原因
    • Listeria monocytogenes(グラム陽性桿菌)の感染による。汚染飼料、水中の菌が口鼻粘膜の微小な傷口から」侵入し、神経線維を上行し、脳幹部に達する。腐敗したサイレージに増殖しやすい。
  • 症状
    • 旋回運動、片麻痺(流涎、耳翼の下垂)歩行困難から起立不能に陥る。妊娠後期(牛で7ヶ月前後)に流産。
  • 診断
    • 臨床症状を示す動物の脳、臓器病変から菌分離を行う。
  • 治療
    • 種々の抗生物質(ペニシリン系、テトラサイクリン系など)に感受性がある。
  • 予防
    • ワクチンが無いため、変敗したサイレージを給与しない。