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「犬狂犬病」の版間の差分

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== 人獣共通感染症としての狂犬病 ==
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この項目は岐阜大学の名誉教授であられる源宣之(みなもと のぶゆき)先生が大学にきて授業をしてくれた事をまとめた物である。
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=== 家畜伝染病予防法における狂犬病の家畜種 ===
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*牛、馬、めん羊、山羊、豚
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*犬猫は含まない
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=== 狂犬病予防法における狂犬病の対象動物 ===
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*犬
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*猫その他の動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏及びあひる(次項において「牛等」という。)を除く。)であつて、狂犬病を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるもの
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=== 狂犬病とは? ===
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人を含めたすべてのほ乳類が罹患するもっとも致命率が高いウイルス性人獣共通感染症である。
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=== 撲滅は可能か? ===
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天然痘はすでに撲滅宣言をWHOにより行われています。今の所それが唯一撲滅に成功した例です。そしてポリオももうすぐ撲滅される予定です。&br;これら二つの共通点は自然宿主を持たない、つまり症状をしめさない個体がいないと言う共通点が有ります。狂犬病はこれに当てはまりません。
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=== 獣医関係の人が一般の人から意見を求められる場合 ===
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狂犬病は咬傷による伝播が明らかにされています。また咬まれた部位から末梢神経に移行した場合1日10cmの早さで中枢性に上向していき脳に達します。また伝播様式は咬傷以外に経口感染や経気道感染も疑われていますが、詳しい伝播様式は明らかにされていません。<br />
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''「野良犬に咬まれた、海外に行った時犬に咬まれた、自分は狂犬病になっていないでしょうか?」''と言われた場合に大事な事は二点。
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*いつどこで咬まれたのか?
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*その咬んだ犬(もしくは狸や狐)が一週間以内に狂犬病が発病しているか?
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を聞かなければなりません。<br />
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*1つめの理由は、日本国内なのか?それとも国外なのか?その場所が狂犬病がフリーであるのか?フリーでないならば咬まれてから暴露後免疫を行うために医療機関に報告する事が法律上義務づけられています。&br;
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*2つめの理由は、少し混乱しそうですが一般的に潜伏期は1~2ヶ月くらいあります(13年間の潜伏期があった報告もあります)。しかし、潜伏期間から発症する前に唾液へのウイルス排泄は3~5日前から始まります(注:過去に一例だけ13日前からウイルス排出していた犬がいたそうです)。つまり一見発症してなさそうな犬に咬まれても実際には唾液にウイルス排出していると言う事になります。よって噛み付いた動物の一週間後の経過を観察し狂犬病が発症していないかを確認する必要性があります。ウイルスの増殖する部位は神経と唾液腺組織で行われますが、感染後すぐにウイルスを排泄する訳ではないので伝播力はそれほどないが、致死性は著しく高いのが狂犬病の特徴と言えます。
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=== 病原体 ===
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==== リッサウイルス属分類 ====
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|~遺伝型|~ウイルス|~分離宿主|~分布地域|h
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|1|狂犬病|すべてのほ乳類|全世界|
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|2|ラゴスバッド|食果コウモリ|ナイジェリア、中央アフリカ|
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|3|モコラ|とがりネズミ、人、猫|ナイジェリア、ジンバブエ|
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|4|ドーベンハーゲ|人|南アフリカ|
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|5|EBL1|食虫コウモリ|欧州|
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|6|EBL2|~|欧州|
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|7|ABL|~|オーストラリア|
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|その他|Aravan(ARAV)|~|キルギスタン|
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|~|Khujyand(KHUV)|~|タジキスタン|
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|~|Irkut(IRKV)|~|ロシア|
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|~|West-Caucasian-bat(WCBV)|~|ロシア|
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==== 狂犬病ウイルス二大別 ====
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;街上毒:野外分離ウイルス、病原性あり
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;固定毒:動物脳継代ウイルス、弱毒。ウサギ等を使って脳から脳へ分離継代を行う事で潜伏期間が固定短縮化され、唾液腺で増殖しなくなるため、感染性の減弱を起こす。潜伏期間を固定されるため固定毒と言われる。

2016年2月3日 (水) 19:44時点における版



病名

原因

伝播・疫学

症状(臨床・病理)

診断・類症鑑別

予防・治療

重要事項

その他メモ

和名:

狂犬病

和名:

狂犬病ウイルス

街上毒(野外分離ウイルス:病原性あり)

固定毒(動物脳継代ウイルス:弱毒)に大別

感染様式:

唾液中に排出されたウイルスが咬傷を介して感染

潜伏期(3~8w):

挙動異常・不安症状→発症

診断:

・ウイルス分離→脳乳剤→マウス脳内摂取→死亡を確認

・蛍光抗体法→アンモン角の灰白質、小脳プルキンエ細胞

・アンモン角のネグリ小体の検出

予防:

1.最も重要な人獣共通感染症の一つで,発病すれば100%死亡

2.犬を介した感染環と,野生動物を介した感染環

潜伏期:平均1カ月(1週間から1年4カ月)

予後:発病すれば100%死亡。

しかし感染後すぐにワクチンをうって暴露後免疫で助かる可能性はある。

長い潜伏期のおかげ!

世界:

世界中。例外的に過去10年発生がないのは(日本)

,オセアニア・太平洋地域,

スカンジナビア各国,

英国など少数。

狂躁型:

興奮、凶暴→昏睡状態を経て死亡

日本:

1957年以降,発生はない。

しかし2006年11月に日本人がフィリピンで感染

麻痺型:

麻痺、嚥下困難→死亡

血清学的診断:

英名:

rabies

英名:

Rhabdoviridae, Lyssavirus

宿主:

人を含むすべての哺乳類

病理:

アンモン角,小脳,大脳皮質などの神経細胞の細胞質内に好酸性封入体(ネグリ小体)、

ただし確実に出る訳ではないので確定診断には用いない。

類症鑑別:

治療:



人獣共通感染症としての狂犬病

この項目は岐阜大学の名誉教授であられる源宣之(みなもと のぶゆき)先生が大学にきて授業をしてくれた事をまとめた物である。


家畜伝染病予防法における狂犬病の家畜種

  • 牛、馬、めん羊、山羊、豚
  • 犬猫は含まない

狂犬病予防法における狂犬病の対象動物

  • 猫その他の動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏及びあひる(次項において「牛等」という。)を除く。)であつて、狂犬病を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるもの

狂犬病とは?

人を含めたすべてのほ乳類が罹患するもっとも致命率が高いウイルス性人獣共通感染症である。

撲滅は可能か?

天然痘はすでに撲滅宣言をWHOにより行われています。今の所それが唯一撲滅に成功した例です。そしてポリオももうすぐ撲滅される予定です。&br;これら二つの共通点は自然宿主を持たない、つまり症状をしめさない個体がいないと言う共通点が有ります。狂犬病はこれに当てはまりません。

獣医関係の人が一般の人から意見を求められる場合

狂犬病は咬傷による伝播が明らかにされています。また咬まれた部位から末梢神経に移行した場合1日10cmの早さで中枢性に上向していき脳に達します。また伝播様式は咬傷以外に経口感染や経気道感染も疑われていますが、詳しい伝播様式は明らかにされていません。
「野良犬に咬まれた、海外に行った時犬に咬まれた、自分は狂犬病になっていないでしょうか?」と言われた場合に大事な事は二点。

  • いつどこで咬まれたのか?
  • その咬んだ犬(もしくは狸や狐)が一週間以内に狂犬病が発病しているか?

を聞かなければなりません。

  • 1つめの理由は、日本国内なのか?それとも国外なのか?その場所が狂犬病がフリーであるのか?フリーでないならば咬まれてから暴露後免疫を行うために医療機関に報告する事が法律上義務づけられています。&br;
  • 2つめの理由は、少し混乱しそうですが一般的に潜伏期は1~2ヶ月くらいあります(13年間の潜伏期があった報告もあります)。しかし、潜伏期間から発症する前に唾液へのウイルス排泄は3~5日前から始まります(注:過去に一例だけ13日前からウイルス排出していた犬がいたそうです)。つまり一見発症してなさそうな犬に咬まれても実際には唾液にウイルス排出していると言う事になります。よって噛み付いた動物の一週間後の経過を観察し狂犬病が発症していないかを確認する必要性があります。ウイルスの増殖する部位は神経と唾液腺組織で行われますが、感染後すぐにウイルスを排泄する訳ではないので伝播力はそれほどないが、致死性は著しく高いのが狂犬病の特徴と言えます。


病原体

リッサウイルス属分類

|~遺伝型|~ウイルス|~分離宿主|~分布地域|h |1|狂犬病|すべてのほ乳類|全世界| |2|ラゴスバッド|食果コウモリ|ナイジェリア、中央アフリカ| |3|モコラ|とがりネズミ、人、猫|ナイジェリア、ジンバブエ| |4|ドーベンハーゲ|人|南アフリカ| |5|EBL1|食虫コウモリ|欧州| |6|EBL2|~|欧州| |7|ABL|~|オーストラリア| |その他|Aravan(ARAV)|~|キルギスタン| |~|Khujyand(KHUV)|~|タジキスタン| |~|Irkut(IRKV)|~|ロシア| |~|West-Caucasian-bat(WCBV)|~|ロシア|

狂犬病ウイルス二大別

街上毒
野外分離ウイルス、病原性あり
固定毒
動物脳継代ウイルス、弱毒。ウサギ等を使って脳から脳へ分離継代を行う事で潜伏期間が固定短縮化され、唾液腺で増殖しなくなるため、感染性の減弱を起こす。潜伏期間を固定されるため固定毒と言われる。