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水の環境
ミルズ・ラインケ現象
病原微生物による水系感染症の制御が公衆衛生の最重要課題のひとつであり、1893年、Reinke,J.J.とMills,H.F.はそれぞれ河川水を砂濾過処理して供給するように改善した結果、水系感染症の発生のみならず一般死亡率までも激減することも認めた。これをミルズ・ラインケ現象という。この概念はわが国における近年水道の導入においても大きな役割を担った。以降、水道の普及と共に塩素消毒も行われるようになり、病原微生物の制御が可能になってきた。 なお本国においては先進諸国の中でもまれに見る大腸菌(ほぼ)フリーの水道水である。
水系感染症
人が病原体で汚染された飲料水や環境水と接触することによって感染が成立し、疾病となることをいう。病原体としてはウイルス、細菌、原虫および寄生虫がある。 |~ウイルス|~細菌|~原虫および寄生虫| |アデノウイルス|Campylobacter(C.jejuni, C.coli)|Cryptosporidium(C.parvum)| |コクサッキーA群ウイルス|病原大腸菌|Cyclospora| |A型肝炎ウイルス|Legionella属(L.pneumophilaなど)|Echinococcus| |E型肝炎ウイルス|非定型抗酸菌(Mycobacterium avium Complex)|赤痢アメーバー| |ポリオウイルス|Salmonella属|ランブル鞭毛虫| |ロタウイルス|チフス菌、パラチフス菌|| |小型球形ウイルス|赤痢菌|| ||コレラ菌、非O1コレラ菌||
浄水処理
原水は多くの場合、粘土や微生物、植物性色素、化学物質など不純物を含みそのままでは水道水として利用できないために浄水処理される。処理は取水、沈殿、濾過、消毒の順になされる。取水した原水の汚濁が著しい場合は、沈殿の前に、活性炭添加や前塩素処理がなされる場合がある。浄水法には緩速濾過法と急速濾過法の2方法がある。
- 取水|各種水源から原水を浄水処理施設へ導入する。
- 凝集|急速濾過法では沈殿操作前に凝集剤が注入される。凝集剤としては硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムなどが注入され、集塊(フロック)を形成される。このフロックには細菌や浮遊物質なども吸着される。
- 沈殿|緩速濾過法では、原水を30cm/min以下か静止状態で8~12時間滞留させて浮遊物質を沈殿させる。急速濾過法では形成させたフロックを沈殿池において40cm/min程度の流速で3~4時間かけて浮遊物質を沈殿させる。濾過:濾過池の砂層の厚さや濾過速度の違いによって緩速濾過法と急速濾過法に分けられる。
-緩速濾過法(英国式) --沈殿処理水を砂層からなる濾床を3~5m/日の速度で濾過する。 --濾床には微生物が増殖し、コロイド状の濾過膜を形成する。 --濾過膜の物理的・生物化学的作用により、浮遊物質、細菌類などが除去され、アンモニア性窒素、鉄、マンガンなども除かれる。 - 急速濾過法(米国式) --砂利層の濾床を120~180m/日の速度で濾過する。水中の懸濁物質を濾材表面に付着させて取り除く。
- 消毒|塩素が用いられる。塩素は水と反応して殺菌に有効な次亜塩素酸(HOCl)と塩素酸イオン(OCL-)を形成する。これを有利有効塩素という。給水栓における遊離残留塩素を0.1ppm(結合残留塩素の場合0.4ppm)以上、また感染症流行時には0.2ppm(結合残留塩素の場合1.5ppm)以上とするよう省令で定められている。なお、クリピウトスポリジウムなど耐塩素性廃液微生物対策は、濾過装置などでの対応があげられている。
水質基準
水道水は「水質基準に関する省令」(厚労省第101号)で定められた基準に適応する必要がある。水質基準は50項目ある
水質基準省令の改正等について 平成26年4月1日施行 |厚生労働省 |
水
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~項目 | ~基準値 |
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1 一般細菌 | 1ml の検水で形成される集落数が100以下であること |
2 大腸菌 | 検出されないこと |
3 カドニウム及びその化合物 | カドミウムの量に関して、0.01mg/l 以下であること |
4 水銀及びその化合物 | 水銀の量に関して、0.0005mg/l 以下であること |
5 セレン及びその化合物 | セレンの量に関して、0.01mg/l 以下であること |
6 鉛及びその化合物 | 鉛の量に関して、0.01mg/l 以下であること |
7 ひ素及びその化合物 | ひ素の量に関して、0.01mg/l 以下であること |
8 六価クロム及びその化合物 | 六価クロムの量に関して、0.05mg/l 以下であること |
10 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 10mg/l 以下であること |
11 フッ素及びその化合物 | フッ素の量に関して0.8mg/l であること |
22 クロロホルム | 0.06mg/l 以下であること |
24 ジブロモクロロメタン | 0.1mg/l 以下であること |
26 総トリハロメタン | 0.1mg/l 以下であること |
28 ブロモジクロロメタン | 0.03mg/l 以下であること |
29 ブロモホルム | 0.09mg/l 以下であること |
37 塩化物イオン&br; | 200mg/l 以下であること |
平成17年4月1日から施行 有機物(全有機炭素:TOC) |
5mg/l 以下であること |
45 H17年3月31日までの間 有機物等(過マンガン酸カリウム消費量) |
10mg/l 以下であること |