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内分泌系:下垂体

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Category;生理学

  • 下垂体は前葉、中葉、後葉に分かれる。
  • 発生学的に異なる二つの原基に由来する。
腺性下垂体(ラトケ嚢より) 神経性下垂体(漏斗突起より)
下垂体茎 隆起部 漏斗 正中隆起
 漏斗柄
下垂体部 前葉 中葉 後葉 ←この3つに分けられている


(1)下垂体前葉ホルモン



分泌細胞

ホルモン名

作用

好酸性

(ソマトマンモトロピン)

α細胞

成長ホルモンGH

成長、泌乳

ε細胞

プロラクチンPRL

乳汁分泌、母性行動刺激

好塩基性

(糖タンパクホルモン)

β細胞

甲状腺刺激ホルモンTSH

甲状腺ホルモン分泌↑、成長促進 ♀卵胞発育↑

γ細胞

卵胞刺激ホルモンFSH

♂精子形成↑

♀卵胞成熟、排卵誘起、黄体形成

黄体形成ホルモンLH

♂テストステロン分泌↑

色素

嫌気性

(プロオピオメラノコルチン)

ACTH細胞

副腎皮質刺激ホルモン ACTH

s




a.成長ホルモン

-下垂体前葉から分泌される単純蛋白質ホルモンで、化学構造や活性の点で種特異性が強い。 -分泌調節は視床下部からの放出促進子のGRHと抑制因子のGHIHで調節される。 -IGF-�は下垂体のGH分泌を直接抑制し、さらに、GHIH分泌を促進してGH分泌をフィードバック抑制する。 --☆促進:低血糖、飢餓、運動、出血、ストレス、インスリン投与など --☆抑制:GHIH

作用

GHは直接又はソマトメジンor IGFを介して作用する。 --成長促進作用 ---若い動物の下垂体を摘出すると成長が止まり、GHの投与で成長が刺激される。骨端軟骨形成が促進され、骨の成長が進む。筋、心、肝、腎などの諸臓器の増殖、肥大も促進される。 ---GHの投与を長時間続けると巨人症になる。 ---骨年齢が成人に達し骨端が閉鎖する(アンドロゲン、エストロゲンの作用)と長骨の長軸方向の成長は起こりえない。GH投与で先端巨大症になる。 --たんぱく質と電解質代謝に対する効果 ---GHはたんぱく質同化ホルモンなので、筋などのアミノ酸輸送促進→血中N濃度減少 ---赤血球生成促進 ---消化管でのCa吸収促進 --炭水化物と脂肪の代謝に対する効果 ---GHは肝臓のグルコース放出量を増加させ、筋肉に対し抗インスリン作用をあらわし、血糖値を上昇させる。 ---脂肪組織に働いて中性脂肪の分解を促進し、血中FFA値を上昇させ、ケトン体の生成促進

(2)下垂体中葉ホルモン

-中葉からはα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)、β-MSH、γ-リポトロピン(γ-LPH)が分泌される。 -これらはプロオピオメラノコルチンに由来する。 -MSHは皮膚でメラニン形成を促進し、皮膚の色を黒くする。


(3)下垂体後葉ホルモン

-バソプレッシン:抗利尿ホルモン(ADH) -オキシトシン:乳汁射出反射 -後葉ホルモンは室傍核と視索上核の大細胞性ニューロンの細胞体で合成され、軸索中を流れ、後葉の軸索終末に貯蔵後、終末からホルモンが分泌する。 -多くの哺乳類はアルギニンバソプレッシンを、カバと豚はリジンバソプレッシンを分泌。 +a.バソプレッシンの作用機序 ++バソプレッシンの主な生理作用は抗利尿作用で、腎の集合管細胞の水の透過性を高める作用がある。結果、水の再吸収が増加し、尿の排出量が減少する。 ++このときの受容体はV2受容体で、G蛋白を介してcAMPを増加
→PKAを活性化することで水チャネル(アクアポリン)を含む小胞がリン酸化される
→リン酸化された小胞が膜に組み込まれて水チャネルから水が流入 ++バソプレッシンには血圧上昇作用もある。
→細動脈の平滑筋にはV1受容体があり、PLCの活性化によるIP3産生を介してCa濃度を上昇させ、平滑筋を収縮させて動脈圧を上昇させる。 +b.バソプレッシンの分泌作用 ++浸透圧による変化 +++飲水や発汗により血漿の浸透圧が変化すると、ADHの血漿中濃度も変化する。 +++正常血漿濃度280-310mOsm/kg(イヌ、ネコ) +++血漿浸透圧が閾値を越えると分泌が増加する。 +++前視床下部にある終板脈管器官に浸透圧受容器があり、分泌を調節している。 ++血液量、血圧による変化 +++血液量が増加(血圧up)すると、左心房壁にある容量受容器が興奮
→迷走神経中を上行するインパルスが増加
→ADH分泌抑制 ++血液量が低下(血圧down)すると
→抑制性のインパルスが減少
→ADH分泌増加

バソプレッシンの分泌異常

尿崩症
原因:視索上核、室傍核、視床下部-下垂体経路、下垂体後葉の障害による、ADHの分泌不足
症状:多飲、多尿。
飲水量が十分ならば健康を保てるが、不足すると脱水状態になり致命的


+c.オキシトシンの作用 ++乳汁射出反射 +++乳児が乳首を吸うと皮膚感覚刺激が脊髄中を上行 →室傍核、視索上核にあるオキシトシン細胞を興奮させ、後葉から分泌 →乳腺の筋上皮細胞に作用し収縮 ++分娩時の子宮収縮作用 +++子宮筋のオキシトシン感受性はエストロゲンにより高まるため、妊娠末期はエストロゲンの血中濃度が上昇しているので感受性が高まり、分娩時に子宮平滑筋を収縮させる。