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「伝染病学総論:細菌細胞の構造」の版間の差分
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細 (→鞭毛) |
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2015年6月4日 (木) 11:14時点における版
||~鞭毛|~線毛|h |機能|運動器官|付着| |数|1?数十本|多数| |太さ|20?50nm|2?10nm| |長さ|3?20μm|l?3μm| |染色|可能|不可能| |組成|フラゲリン(蛋白)|ピリン(蛋白)|
目次
莢膜
もつ菌種と持たない菌種がある。
- 大きさ:菌種によって異なる。
- 化学組成:多くの細胞の莢膜は多糖質で構成される。
- 機能:栄養素の貯蔵、分泌物の蓄積、食菌作用や殺菌物質から菌体を保護し、また組織細胞への付着、菌相互の凝集などに関係する。
鞭毛
スピロヘータを除き、運動性のある菌には一本以上の繊維状の付属物があり、これを鞭毛という。
a. 鞭毛による菌の分類
- 極毛菌:菌端に鞭毛の付着するもの。付着する数によって次の2種に細分する。
- 単毛菌:一端に一本付着する。
- 両毛菌:両端に一本ずつ付着する。
- 側毛菌:菌の側面に一本ないし数本付着する。
- 周毛菌:菌体の周囲に多数付着する。(ex.サルモネラ、プロテウス)
b. 一本の鞭毛は二重または三重の右巻き又は左巻きのらせん構造を持っている。また一本の鞭毛は鞘のようになっており、その中を一本の繊維が走っている。
c. 化学的組成
その大部分または全部がタンパク質で構成されている。
d. 機能
細菌の運動器官である。運動速度は15?75μmである。
e. H抗原
鞭毛にある抗原
線毛
多くのグラム陰性菌および一部のグラム陽性菌には鞭毛とは異なった繊維状の構造物が菌体に付着している。これ械毛という。
- a. 線毛と鞭毛との相違
- 線毛は鞭毛より細くて短い。一個の 細菌細胞における線毛の数ははるかに多く、100?500本を数える。
- b. 機能
- 付着(普通)線毛は菌の宿主細胞への接着に閑与している。
- モルモット・ニワトリ、ウマまたはブタの赤血球を凝集する。
- c. 機能
- 付着(普通)線毛は菌の宿主細胞への接着に閑与している。モルモット・ニワトリ、ウマまたはブタの赤血球を凝集する。
- 性線毛(接合線毛、F線毛、R線毛)は細菌の接合に関係し、遺伝子(プラスミド)を伝達する。
- F抗原|線毛にある抗原。F4(K88)、F5(K99)、F6(987P)(かっこ内は旧名称)など。(毒素原性大腸菌の線毛)
細胞壁
細包質を囲む厚さ5?80μmの鞘状の構造物で、その内側は細胞膜と接する。 ===a. 構造===表面は顆粒状で、ふるいの目のようになっており、その目は直径 1nmより小さい粒子を通過させうる大きさであろうと考えられる.
b. 化学組成
細胞壁構成の違い
グラム陽性 | h | |
---|---|---|
外膜 | なし | あり |
ペプチドグリカン層 | 厚い | 薄い |
アミノ酸 | 多い | 少ない |
脂質 | 少ない | 多い |
タイコ酸 | あり | なし |
c. 機能
- 菌体の形を保つ。
- 浸透圧の維持。
- 栄養分その他の選択透過。
- O抗原:細胞壁にある抗原。外膜のリポ多糖体(LPS)の糖鎖が関与
d. プロトプラスト
- 細胞壁を完全に失い細胞質と細胞質膜のみになったもの。
- 球形
- グラム陽性菌に見られる。
- リゾチーム、ペニシリンなどの作用により細胞壁の合成が阻害され形成される。
e. スフェロブラスト
- 細胞壁を不完全に失ったもの(ペプチドグリカンを失い、外膜が残る)
- 球形
- グラム陰性菌に見られる。
- リゾチームなどでペプチドグリカンは溶けるが、外膜は残る。
f. L型菌
- 細胞壁を欠いた細菌細胞のこと。
- ペニシリンを作用させると容易に生成される。
- ペニシリンを加えない培地に培養すると、細胞壁を持つ元の菌に戻る。
細胞質膜
細胞壁の直下にある厚さ5?10nmの半透膜の性状を持つ膜
- 化学組成:すべての細胞においてほとんど同じでタンパク(40?50%)、リン脂質(20?30%)から構成される。
- 機能:細胞の栄養及び代謝産物の選択通過。
- メソソーム:細胞内の代謝が活発に行われるときに常に見られる。分裂や芽胞形成に関与している。
核
細菌は仁と核膜を欠く原核細胞である。
細胞質
有機及び無機物の溶解したゼリー状の溶液で、その中には多数のリボソームが存在する。
細胞内顆粒
多くの菌種では細胞質内に円形の小顆粒が認められる。通常この小顆粒はエネルギー源となる栄養素の豊富な状態のときに最も多く含まれ、細胞が飢餓状態にあるときは著しく減少または消失する。
- ボルチン顆粒:異染小体とも呼ばれ、直径0.1?1.0μmの顆粒で多くの菌に見られる。特にジフテリア菌ではこの顆粒が菌の全体に散在しPasteurella、Haemophilus、Actinobacillus属の菌においてもボルチン顆粒は両端に集まって極染色性を示す
芽胞
バシラス属とクロストリジウム属の桿菌に観察され、発育環境の不良、陳旧培養時などの条件下で芽胞といわれる小体を作る。
- 芽胞の形と形成位置
- 芽胞は一個の細胞の内部に一個ずつ形成され、その形は球状、卵円形または楕円形である。また細胞内における位置は菌端または中央のいずれかであるが、これらの形および位置は菌種によって特徴的である。
- 芽胞形成と発芽
- 芽胞形成は栄養の欠乏した状態の時に起こり、十分なあいだは起こらない。芽胞が十分な湿度と栄養の中におかれると、発芽して普通にみられる栄養型細胞となる。
- 芽胞の生存力
- 100~120℃の湿熱で数分間以上加熱しないと死滅しない。放射線、化学薬品などに対して強い耐性を示し、長時間生存することができる。