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本製剤を使用する場合以下の三点をチェックする
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*CBC検査(腎性貧血は正球性正色素性貧血)
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*血清鉄の測定
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*血液塗沫による再生性の評価(腎性貧血は非再生性)
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余裕があれば網状赤血球数の算定や血清エリスロポエチン濃度の測定を行う
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鉄欠乏してるのにダルベポエチンとか打っても意味ないです。
 
== 薬品名 ==
 
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*エリスロポエチン(Epo)
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*エリスロポエチン(Epo):Erythropoietin
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*エポエチン
 
*ダルベポエチン
 
*ダルベポエチン
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;erythro:赤、血のという意味
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;poietin:細胞の増殖や発育を刺激するという意味
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== 商品名 ==
 
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*エポジン
 
*エポジン
*エスポー
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*エスポー(エポエチン)
 
**長時間作用し、抗体ができにくいと言われている。
 
**長時間作用し、抗体ができにくいと言われている。
 
**長時間作用するので一週間に一回の注射で良い。
 
**長時間作用するので一週間に一回の注射で良い。
 
== 適応 ==
 
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== 薬の作用機序 ==
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*貧血
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**[[蛋白同化ステロイド]]よりも有効。
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**高価であることと、抗体が産生されることが欠点。
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*一部の[[骨髄異形成症候群]](MDS)←あくまで人(200IU/kgの高用量で使用されている)
  
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== 薬の作用機序 ==
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*骨髄での赤血球産生を促進
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*酸素分圧が下がった際に腎臓から分泌
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*腎皮質の間質にある線維芽細胞から合成
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*肝臓でもEpoは作られる(胎児期)
 
== 薬用量 ==
 
== 薬用量 ==
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Ht20%から使用を考慮する。HCTを30<を目標にする
 
エリスロポエチン
 
エリスロポエチン
 
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*100IU/kgから始めてみる(個人的なおすすめ)
 
*100IU/kgから始めてみる(個人的なおすすめ)
 
*PCV(Hct)モニタリングしながら週1-2回に減量していく
 
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* ダルベポエチン1μgはエポエチン200IUと同等
 
* ダルベポエチン1μgはエポエチン200IUと同等
 
* 週に一回でいいが三回分の量を一回で注射するという考え方で200IU打っている
 
* 週に一回でいいが三回分の量を一回で注射するという考え方で200IU打っている
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*半減期25時間
  
*動物種ごと
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*猫の慢性腎不全での使用に際して
**各動物種の補足事項
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**尿毒症による消化管出血を原因が考えられる場合、鉄の補充だけでなく消化管粘膜の保護(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤etc)が必要
 
== 注意事項 ==
 
== 注意事項 ==
 
*エリスロポエチンは連続で使用すると抗体ができて効果がさがる
 
*エリスロポエチンは連続で使用すると抗体ができて効果がさがる
 
**Hctが20以下になってから使用する。目標とするHctは35-40
 
**Hctが20以下になってから使用する。目標とするHctは35-40
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**あくまで参考だが6-8週で50%の動物で効果がなくなる
 
*人のエリスロポエチン製剤を獣医学領域では用いる。リコンビナント製剤はない
 
*人のエリスロポエチン製剤を獣医学領域では用いる。リコンビナント製剤はない
  
 
== 毒性 ==
 
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*腎細胞癌がEpoを大量に産生し赤血球増多症を引き起こす事がある
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**腎臓を摘出する場合片側の腎臓のEpo産生はおそらく低下している、よって摘出後Epo不足で貧血を起こさないように管理するべきである
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== 代謝 ==
 
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== その他 ==
 
== その他 ==
 
*エリスロポエチンが免疫で効きが抑制されるならステロイドと同時に打つという発想→ステロイドは異化亢進し、蛋白源が減って造血の効率悪くなる?
 
*エリスロポエチンが免疫で効きが抑制されるならステロイドと同時に打つという発想→ステロイドは異化亢進し、蛋白源が減って造血の効率悪くなる?
**上記のないように関してなにか知見ありましたら教えていただけると幸いです。
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**上記のないように関してなにか知見ありましたら教えていただけると幸いです。(よく考えたら自己免疫性溶血性疾患ではPreとか使うことはありますね)
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*猫の血中Epo濃度
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**12.0~32.0mU/mL
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*腎臓の機能
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** レニン

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* カルシトリオール
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*分子量34000の糖タンパク
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*悪性腫瘍を有する患者で炎症性サイトカインが産生されるためトランスフェリンの産生を抑制したり、Epo分泌を抑制される
  
*腎臓
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== その他 ==
* レニン
* エリスロポエチン
* カルシトリオール
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赤芽球癆(PRCA)は免疫学的破壊のターゲットが赤芽球の前駆細胞(BFU-E, CFU-E)やエリスロポエチンなどに切り替わり。赤芽球系 細胞すべてが著明に減少することによりおこる貧血である

2017年4月28日 (金) 18:20時点における最新版

本製剤を使用する場合以下の三点をチェックする

  • CBC検査(腎性貧血は正球性正色素性貧血)
  • 血清鉄の測定
  • 血液塗沫による再生性の評価(腎性貧血は非再生性)


余裕があれば網状赤血球数の算定や血清エリスロポエチン濃度の測定を行う
鉄欠乏してるのにダルベポエチンとか打っても意味ないです。

薬品名

  • エリスロポエチン(Epo):Erythropoietin
  • エポエチン
  • ダルベポエチン
erythro
赤、血のという意味
poietin
細胞の増殖や発育を刺激するという意味

商品名

  • エポジン
  • エスポー(エポエチン)
    • 長時間作用し、抗体ができにくいと言われている。
    • 長時間作用するので一週間に一回の注射で良い。

適応


薬の作用機序

  • 骨髄での赤血球産生を促進
  • 酸素分圧が下がった際に腎臓から分泌
  • 腎皮質の間質にある線維芽細胞から合成
  • 肝臓でもEpoは作られる(胎児期)

薬用量

Ht20%から使用を考慮する。HCTを30<を目標にする エリスロポエチン

動物種 薬用量 注意項目
犬・猫 50~150IU/kg
  • 100IU/kgから始めてみる(個人的なおすすめ)
  • PCV(Hct)モニタリングしながら週1-2回に減量していく

エポエチン

動物種 薬用量 注意項目
犬・猫 100 IU/kg 週三回sc
  • 半減期5-7時間

ダルベポエチン

動物種 薬用量 注意項目
犬・猫 1 μg/kg
  • ダルベポエチン1μgはエポエチン200IUと同等
  • 週に一回でいいが三回分の量を一回で注射するという考え方で200IU打っている
  • 半減期25時間
  • 猫の慢性腎不全での使用に際して
    • 尿毒症による消化管出血を原因が考えられる場合、鉄の補充だけでなく消化管粘膜の保護(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤etc)が必要

注意事項

  • エリスロポエチンは連続で使用すると抗体ができて効果がさがる
    • Hctが20以下になってから使用する。目標とするHctは35-40
    • あくまで参考だが6-8週で50%の動物で効果がなくなる
  • 人のエリスロポエチン製剤を獣医学領域では用いる。リコンビナント製剤はない

毒性

  • 腎細胞癌がEpoを大量に産生し赤血球増多症を引き起こす事がある
    • 腎臓を摘出する場合片側の腎臓のEpo産生はおそらく低下している、よって摘出後Epo不足で貧血を起こさないように管理するべきである

代謝

その他

  • エリスロポエチンが免疫で効きが抑制されるならステロイドと同時に打つという発想→ステロイドは異化亢進し、蛋白源が減って造血の効率悪くなる?
    • 上記のないように関してなにか知見ありましたら教えていただけると幸いです。(よく考えたら自己免疫性溶血性疾患ではPreとか使うことはありますね)
  • 猫の血中Epo濃度
    • 12.0~32.0mU/mL
  • 腎臓の機能
    • レニン

    • エリスロポエチン
  • 
* カルシトリオール
  • 分子量34000の糖タンパク
  • 悪性腫瘍を有する患者で炎症性サイトカインが産生されるためトランスフェリンの産生を抑制したり、Epo分泌を抑制される

その他

赤芽球癆(PRCA)は免疫学的破壊のターゲットが赤芽球の前駆細胞(BFU-E, CFU-E)やエリスロポエチンなどに切り替わり。赤芽球系 細胞すべてが著明に減少することによりおこる貧血である