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+ | == 口腔内腫瘍を見逃さないために == | ||
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+ | *図左上:歯科チェックの時に歯肉のチェック。前歯もお利口さんなら見てあげましょう。喉奥、扁桃腺、舌根部は口を開けてできるだけ。全部視るためには鎮静が必要かもしれません。 | ||
+ | *図右上:絵は猫ですが麻酔時に舌の根元や舌の下の軟部組織もチェックしましょう。日常診療ではなかなか見れないかもしれませんが、嚥下障害や喉周りのトラブルが起きた時はできる限りチェックしましょう。 | ||
+ | *図下:単なる印象としてだいたいこのあたりに線維肉腫や扁平上皮癌ができると印象を持っておきましょう。下顎リンパ節は最低限左右差がないかどうかをチェックしましょう。 | ||
+ | *口の中を診察室内でチェックしきる事はなかなかに困難です。ですので歯科チェックと、口腔内腫瘍の臨床像をきっちり押さえた上で視診をする価値が生まれてきます。時にはオーナーが歯肉からの出血などで来院してくれるかもしれませんが獣医師ができるだけ気付いてあげれるようにしましょう。 | ||
+ | *口腔内のチェック | ||
+ | *#歯列→歯との関係はどうなっているか | ||
+ | *#口蓋(硬・軟)にできた場合、鼻腔内に浸潤していないかどうか→CTでチェックできれば | ||
+ | *#咽喉頭にできた場合→頚部や耳に影響していないか | ||
+ | *#舌にできた場合→下顎や咽頭に波及していないかどうか | ||
== 口腔内に原発する腫瘍 == | == 口腔内に原発する腫瘍 == | ||
− | + | === 上皮組織由来の乳頭腫 === | |
− | + | === 扁平上皮癌 === | |
− | * | + | *中高齢、大型犬に多い |
− | * | + | *二割くらいしか転移しない(腫瘤は結構もろいのに) |
− | * | + | *吻側にできたものはいいが、舌や扁桃周辺にできたものは予後が悪い |
− | * | + | *7割の症例は放射線療法に反応するが、1年生存率は10% |
− | *歯肉腫 epuli (Acanthomatous epulis / Periodontal fibroma) | + | *猫では局所浸潤性がきわめて高く、転移する前に死亡する場合も多々あり(下顎に発生した場合は下顎切除と放射線療法で比較的予後はまし) |
− | + | ||
− | + | === 間葉組織由来の線維腫 === | |
− | * | + | === 線維肉腫(Fibrosarcoma) === |
− | *歯原性腫瘍 odontogenic tumors | + | 若齢から中年齢犬の雄犬に多く、大型犬が多い。 |
+ | 他の腫瘍に比べ、若齢(7.3~8.6歳)で発生することが多い。 | ||
+ | 浸潤性は高いが転移はあまりしない→逆に局所でどれくらいコントロールできるかが治療の鍵になることが多い。 | ||
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+ | === 血管腫 === | ||
+ | === 血管肉腫 === | ||
+ | === 歯肉腫 epuli (Acanthomatous epulis / Periodontal fibroma) === | ||
+ | === リンパ腫 === | ||
+ | === 悪性黒色腫(Malignant Meranoma) === | ||
+ | *高齢犬に多く、雄に多い、小型犬によくみられる | ||
+ | *骨浸潤は2/ | ||
+ | *50%でリンパ節・肺転移→リンパ節が腫れていなくても半分は浸潤しているためリンパ節の生検を推奨する。 | ||
+ | *すべてが色素沈着を起こすわけではない。 | ||
+ | *腫瘤は脆弱で出血を伴うものが多く、特徴的な臭気を発する。 | ||
+ | *肺転移;2-6割 | ||
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+ | === 顆粒細胞腫 === | ||
+ | === 歯原性腫瘍 odontogenic tumors === | ||
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など<br /> | など<br /> | ||
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*巨細胞性エプリス | *巨細胞性エプリス | ||
=== 腫瘍性エプリス === | === 腫瘍性エプリス === | ||
− | * | + | *線維腫性エプリス→良性 |
− | * | + | *骨形成性エプリス→良性 |
**棘細胞性エナメル上皮腫←昔「棘細胞性エプリス」と言われていた。 | **棘細胞性エナメル上皮腫←昔「棘細胞性エプリス」と言われていた。 | ||
+ | ***病理学的には良性なのだが臨床像は悪性 | ||
== 口腔内腫瘍が発生した場合の他の組織との関連 == | == 口腔内腫瘍が発生した場合の他の組織との関連 == | ||
− | 歯肉や歯列に発生した場合→歯根骨膜と下顎上顎骨との関係 浸潤しているか否か | + | *歯肉や歯列に発生した場合→歯根骨膜と下顎上顎骨との関係 浸潤しているか否か |
− | + | *硬口蓋・軟口蓋に発生した場合→咽喉頭との関係 | |
− | + | * 咽喉頭に発生した場合→ 頸部軟部組織、耳道との関係 | |
− | + | *舌に発生した場合→ 下顎・咽頭との関係 | |
− | + | *口唇に発生した場合→ 周囲皮膚との関係 |
2017年1月12日 (木) 18:57時点における最新版
口腔内腫瘍の各腫瘍の詳細については腫瘍名リンクから確認をしてください。
口腔内腫瘍を見逃さないために
- 図左上:歯科チェックの時に歯肉のチェック。前歯もお利口さんなら見てあげましょう。喉奥、扁桃腺、舌根部は口を開けてできるだけ。全部視るためには鎮静が必要かもしれません。
- 図右上:絵は猫ですが麻酔時に舌の根元や舌の下の軟部組織もチェックしましょう。日常診療ではなかなか見れないかもしれませんが、嚥下障害や喉周りのトラブルが起きた時はできる限りチェックしましょう。
- 図下:単なる印象としてだいたいこのあたりに線維肉腫や扁平上皮癌ができると印象を持っておきましょう。下顎リンパ節は最低限左右差がないかどうかをチェックしましょう。
- 口の中を診察室内でチェックしきる事はなかなかに困難です。ですので歯科チェックと、口腔内腫瘍の臨床像をきっちり押さえた上で視診をする価値が生まれてきます。時にはオーナーが歯肉からの出血などで来院してくれるかもしれませんが獣医師ができるだけ気付いてあげれるようにしましょう。
- 口腔内のチェック
- 歯列→歯との関係はどうなっているか
- 口蓋(硬・軟)にできた場合、鼻腔内に浸潤していないかどうか→CTでチェックできれば
- 咽喉頭にできた場合→頚部や耳に影響していないか
- 舌にできた場合→下顎や咽頭に波及していないかどうか
口腔内に原発する腫瘍
上皮組織由来の乳頭腫
扁平上皮癌
- 中高齢、大型犬に多い
- 二割くらいしか転移しない(腫瘤は結構もろいのに)
- 吻側にできたものはいいが、舌や扁桃周辺にできたものは予後が悪い
- 7割の症例は放射線療法に反応するが、1年生存率は10%
- 猫では局所浸潤性がきわめて高く、転移する前に死亡する場合も多々あり(下顎に発生した場合は下顎切除と放射線療法で比較的予後はまし)
間葉組織由来の線維腫
線維肉腫(Fibrosarcoma)
若齢から中年齢犬の雄犬に多く、大型犬が多い。 他の腫瘍に比べ、若齢(7.3~8.6歳)で発生することが多い。 浸潤性は高いが転移はあまりしない→逆に局所でどれくらいコントロールできるかが治療の鍵になることが多い。
血管腫
血管肉腫
歯肉腫 epuli (Acanthomatous epulis / Periodontal fibroma)
リンパ腫
悪性黒色腫(Malignant Meranoma)
- 高齢犬に多く、雄に多い、小型犬によくみられる
- 骨浸潤は2/
- 50%でリンパ節・肺転移→リンパ節が腫れていなくても半分は浸潤しているためリンパ節の生検を推奨する。
- すべてが色素沈着を起こすわけではない。
- 腫瘤は脆弱で出血を伴うものが多く、特徴的な臭気を発する。
- 肺転移;2-6割
顆粒細胞腫
歯原性腫瘍 odontogenic tumors
など
口腔内腫瘍は高齢の動物に発生するので、高齢個体の割合が多い犬、猫で最も多く観察される。ただ線維肉腫は大型犬に発生することが比較的多いが、数値的に高齢であるとは限らないので注意。
扁平上皮癌と悪性黒色腫はよく起こる上に悪性度が高いと印象に持っておこう
日本国内のデータでは発生頻度順は以下の様に報告されている。
犬
-悪性黒色腫(30~40%) -扁平上皮癌(20~30%) -線維肉腫(10~20%) -歯肉腫
猫
-線維肉腫 -扁平上皮癌
エプリス(Epulis)と言う言葉
エプリスは本来歯肉上にできた隆起した物体に対する総称であり、単準な炎症での腫れなのか腫瘍であるかの意味は含まれていない。
炎症性エプリス
- 線維性エプリス
- 巨細胞性エプリス
腫瘍性エプリス
- 線維腫性エプリス→良性
- 骨形成性エプリス→良性
- 棘細胞性エナメル上皮腫←昔「棘細胞性エプリス」と言われていた。
- 病理学的には良性なのだが臨床像は悪性
- 棘細胞性エナメル上皮腫←昔「棘細胞性エプリス」と言われていた。
口腔内腫瘍が発生した場合の他の組織との関連
- 歯肉や歯列に発生した場合→歯根骨膜と下顎上顎骨との関係 浸潤しているか否か
- 硬口蓋・軟口蓋に発生した場合→咽喉頭との関係
- 咽喉頭に発生した場合→ 頸部軟部組織、耳道との関係
- 舌に発生した場合→ 下顎・咽頭との関係
- 口唇に発生した場合→ 周囲皮膚との関係
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