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腎臓生理学

7,308 バイト追加2016年2月16日 (火) 16:08
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== 腎臓の構造 ==

|~腎単位|~ 腎小体(マルピーギ小体) |尿細管|
|~|~|ヘンレ係蹄|
|~|~近位尿細管|遠位尿細管|
|~|~|ボーマン嚢 |
|~|~|糸球体 |

-腎動脈、腎静脈、尿管が走行している。
-皮質と髄質に分けることが出来る
-髄質では、腎杯が集まって腎盂を形成し尿管へと移行して膀胱へと尿を送る。
-両側の腎臓はそれぞれ100~200万の腎単位(ネフロン) から成り立っている。
-糸球体は20~40の毛細血管の束で出来ている。
-この毛細血管を血液が通過する間に血液は濾過され、原尿が産生される。

== 腎臓の血流走行 ==
|弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→糸球→輸出細動脈→|~尿細管周囲毛細血→小葉間静脈→|腎静→弓状静脈|
|~|~直細動脈→髄質毛細血管→直細静脈→|~|

== クリアランス ==
:クリアランス|クリアランスとはある物質を尿中に完全に排泄するのに必要な腎血漿流量のこと。

== 腎血漿流量 ==
濾過および分泌に関与した血漿流量のこと。腎を一回循環する間に糸球体での濾過と尿細管からの分泌によって尿中に完全に排泄される物質(パラアミノ馬尿酸:PAH)のクリアランスである

== GFR(糸球体濾過量) ==
:GFR|分泌も再吸収もされず、濾過のみで排泄される物質のクリアランス。
つまり腎血漿流量のうち糸球体から濾過されて尿細管に出る量(/分)をあらわす。GFRの測定に利用可能な物質の性質
-自由に濾過される
-尿細管で分泌も再吸収もされない
-腎で代謝されない
-腎に蓄積されない
-無毒
-GFRに影響しない
-血漿および尿中の濃度が容易
&br;に測定可能
例:イヌリン、クレアチニン(ヒト、ラットでは再吸収や排泄があるために正確にGFRを反映しない)

== RPF ==
:RPF|腎血漿流量(RPF)を(1-Ht*)で割ったもの。
*Ht: ヘマトクリット(%→Htが牛で34%なら0.34に換算)

== 選択的透過能 ==
:選択的透過能|毛細血管壁は選択的透過能を持つ。
*(1) 透過性を決定する因子 [#y8f7c0db]
+大きさ
++半径が4nm以上→濾過されない
++半径が2nm以下→制限なしに濾過される
+分子の正味の電価
++陽イオンの形は透過されやすい

|~濾過される|~濾過されない|
|グルコース|血小板|
|ヘモグロビン|赤血球|
|ミオグロビン|フィブリノーゲン|
|クレアチニン||
|尿素||
|アミノ酸||
|ベンスジョーンズ蛋白||

== 糸球体濾過量の維持 ==
腎臓は、全身の血液や腎血流量が変化しても、GFRを比較的一定のレベルに維持することが出来る

== 糸球体濾過量の調節 ==
*(1) 腎内性調節 [#x04c4c5d]
-a.筋原性反射
--糸球体の細動脈が細動脈壁の張力の変化に反応する
---細動脈壁の張力増加→収縮
---細動脈壁の張力減少→拡張
-b.尿細管-糸球体フィードバック
--遠位尿細管の液体量(Cl-輸送量)が減少すると、そのネフロンのGFRが減少させられる
--仲介物質・機序は不確定

*(2) 腎外性調節 [#d87461ac]
-a. レニン・アンギオテンシン系
|アンギオテンシノーゲン||
|↓|レニン 全身性低血圧に起因する腎血圧の低下により糸球体近接細胞から分泌される|
|アンギオテンシン1||
|↓|アンギオテンシン変換酵素(ACE) 血管内皮に分布|
|アンギオテンシン2|1.血管収縮 &br;2.副腎皮質顆粒層細胞を刺激→アルドステロンを分泌→集合管のNa+吸収を促進→水分を保持|
-b. 全身血液量の調節
--ADHが下垂体から分泌→集合管の水分再吸収を促進
--糖質コルチコイドが副腎皮質から分泌→水排泄促進
--心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP) →腎でのNa+排泄と利尿を促進→血液量低下
-c. 全身血圧の調節
--ADH、カテコールアミン →血管収縮
---α1受容体→腎血管収縮
---β1受容体→レニン分泌促進→ANG系を促進
--血管収縮性物質→メサンギウム細胞を収縮→濾過面積の減少→GFR減少 アンギオテオシノーゲン

== 溶質の再吸収(近位尿細管) ==
*(1) 近位尿細管の機能① [#vae03099]
再吸収において重要な部位で、再吸収には二つの経路がある
-①経細胞経路:尿細管→尿細管上皮細胞→血液側の間質液 細胞表面に微絨毛発達→刷子縁を形成
-②傍細胞経路:大部分は担体を介した輸送 受動的拡散もしくは溶媒牽引による輸送
※溶媒牽引:溶媒の流れに乗って物質が移動すること。

Na+K+ATPaseがNaの濃度勾配を作り出
す。それを利用して、アミノ酸とNa+の共
輸送、Na+とH+の逆輸送を行う。
また細胞膜表面に炭酸脱水酵素(CA)を持
ち、H2CO3を分解することでCO2を再吸
収させる。

*(2) 近位尿細管の機能② [#t19a36ef]
-ペプチドの再吸収
--近位尿細管刷子縁にはペプチダーゼが存在し、小分子ペプチドをアミノ酸に分解する。その後アミノ酸とNa+で共役輸送する
-蛋白質の再吸収
--濾過された蛋白の内、インスリン程度より大きい蛋白は近位尿細管上皮細胞の飲作用によって取り込まれ、リソソームに運搬→酵素により分解、アミノ酸として再吸収される

*(3) ヘンレ係蹄の下降脚(細い脚) [#c1a28e76]
下降脚は水に対して透過性であるが、溶質の透過性は極めて低い
⇔管腔液は、下降脚を下る間に高浸透圧の髄質を通るため、水だけが再吸収されていき次第に高張になる

*(4) ヘンレ係蹄の太い上行脚 [#u83cb0d2]
多数のミトコンドリア、多数のひだを基底外側面細胞膜に持つ。管腔は水分と尿素をほとんど通さないため、上行脚を移動するにつれ、Na+Cl‐が吸収されていき管腔液は低張となっていく。

*(5) 遠位尿細管 [#m0ffd66b]
濾過されたNa+の7~10%、水の5%を再吸収する→尿浸透圧は100mOsm/Lまで低下する(尿希釈)
-Na+、HCO3-および水などの再吸収とNH4、H+、K+ の分泌が行われる
-Cl‐はNa+の吸収で生じた電気的勾配によっても吸収される

*(6) 集合管の機能 [#hb6395cd]
-プロトン(H+)の排泄部位として重要
-三つの形で酸を排泄する(NH4+、H+、H2PO4+)
-濾過された水の10%を再吸収する(最終的な尿濃縮)
*遠位尿細管~集合管に対するホルモンの作用 [#vdf867cc]
:アルドステロン|遠位尿細管(結合分節~集合管)に作用する
-①初期効果 →Na+チャネルの透過性を増加(頂端側) 、Na+-K+-ATPaseの活性化
-②遅発効果 →Na+-K+-ATPaseの合成を促進 ⇔Na+の再吸収とK+の排泄を促進する
:バソプレッシン(ADH:AntiDiureticHormone) |遠位尿細管に作用 →Na+の再吸収を促進 &br;集合管に作用(V2-R)→水分の再吸収を促進
ビューロクラット管理者
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