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腎臓での水分および酸・塩基平衡

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水分平衡

水分欠乏時 → 濃縮尿

  • 高張性の髄質間質の形成
    • 髄質における浸透圧活性物質の再吸収
    • 直細血管からの水の除去
  • ADH (バソプレッシン:抗利尿ホルモン)分泌増加

水負荷時 → 低張尿

  • 上行脚と遠位尿細管による尿細管液の希釈ADHの分泌低下

各尿細管での水の再吸収

  • 近位尿細管 ~70%
  • ヘンレ係蹄約 約15%
  • 遠位尿細管曲部 約5%
  • 集合管 ~10%

近位尿細管

  • 受動的な水の再吸収、AQ1
  • Na+の再吸収→Cl*の受動的再吸収→毛細血管の高 い膠質浸透圧(毛細血管側に高い水を引っ張るポテンシャルがあると言う事)+尿細管の低い静水圧→水の再吸収

ヘンレ系蹄下行脚

  • 受動的な水の再吸収、AQ1
  • 直細血管と協調して対向流増 幅系を形成

ヘンレ系蹄上行脚

  • 溶質のみの再吸収によって、間質浸透圧が上昇

遠位尿細管

  • 曲部で吸収

集合管

  • 集合管の水と尿素の透過性はADHによって変化する。AQP2=ADH感受性

尿素の役割

  • 髄質錐体における浸透圧勾配の形成
  • 集合管での濃縮された尿の生成
  • 濾過された尿素の約50%に相当する量が、集合管 → 髄質間質 → 遠位尿細管の間を再循環している ⇒ 腎内再循環
近位尿細管
受動輸送で尿管外へ出る(30~40%)
ヘンレ係蹄下行脚
尿素の分泌
髄質内帯集合管
間質液へ出て高浸透圧に寄与→ ADHによってこの働きは促進される

利尿

ADHの分泌抑制(水利尿)

  • 多量飲水→尿量増加:水利尿
  • 全血液量増加 →心房の体積受容器
  • 血圧上昇 →動脈圧受容器(大動脈弓、頚動脈洞)
  • 血液浸透圧低下 →視索上核の浸透圧受容器
    ⇒ 下垂体後葉からのADH分泌減少 ⇒ 水の再吸収抑制


浸透圧利尿

  • 再吸収されない溶質が尿細管内に多量に存在 → 尿浸透圧が維持される
    → 尿の再吸収が妨げられる → 尿量が増加する
浸透圧が大きく再吸収されにくい物質(マンニトール、キシロース、スクロース)、多量の 
NaCl、グルコース、尿素を血液中に入れることによって起こる。 

利尿剤の投与

  • 水銀 ⇒ 近位尿細管を障害 : 再吸収阻害(腎臓毒)
  • カフェイン ⇒ 血管拡張 : 濾過面積の拡大
  • 強心剤 ⇒ 強心利尿作用 : 腎血流量の増加
  • フロセミド・ブメタニド ⇒ ヘンレ係蹄上行脚でのNa+、K +、CL*再吸収を阻害 →
  • 対向流機序阻害 → 強力な利尿作用
  • サイアザイド系 ⇒ 遠位尿細管近位部でのNa+、 CL*の吸収を阻害

酸塩基平衡

酸の排泄
近位尿細管、集合管
重炭酸塩の排泄
集合管
重炭酸塩の再吸収
近位尿細管

酸の排泄&重炭酸塩の再吸収(近位尿細管)

  • 頂端膜と上皮細胞内に炭酸脱水酵素を含む。
  • H+は主にNa+/H+アンチポーターによって管腔内に輸送される。
  • 近位尿細管では濾過されたHCO3*の80~90%を再吸収する。
  • H+分泌の高能力を持つが、低い勾配しか維持することができない。
  • 近位尿細管内でのpH変化は少ない。

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分泌(集合管)

  • 集合管は最終的な尿のpHを決定する
  • 介在細胞は細胞内に炭酸脱水酵素を多量に含む
  • H+はプロトンポンプ(H+ATPase、H+*K+ATPase)によって管腔内に輸送される
  • HCO3*はCl*/HCO3*交換体によって輸送される
  • 集合管のH+分泌能は低いが、高濃度勾配を維持することができる
  • 頂端膜側のプロトンポンプの数を変化させることができる
    • アシドーシス → プロトンポンプ増加 → 酸排泄増加
  • A型介在細胞とB型介在細胞は鏡像関係
    • アルカローシス → B型細胞 → HCO3*を分泌


尿のpH

草食動物

Na+の摂取少・K+の過剰摂取
→ K+の過剰分を排泄、H+の排泄少ない
→ 尿はアルカリ性

肉食動物

Na+と窒素の摂取多い
→ Na+の過剰分、有機酸、アンモニアを排泄
→ 尿はやや酸性