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耳血腫

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耳血腫(英:aural hematoma, hematoma auris, orthematoma)
== 原因 ==
*耳介に繰り返し物理的刺激が与えられる。
*耳介の軟骨細胞が活性化
*弾性線維・プロテオグリカンの産生減少、プロテアーゼ・サイトカイン(PGE2)の産生増加
*耳介軟骨の軟化変性
*耳介軟骨の亀裂骨折(弾力性に富むゴムが劣化すると亀裂が入るのと同様)
*亀裂腔内へ露出した血管壁の変性
*洞内の血管が損傷を受ける(血管の破綻)

== 好発犬種 ==
*ラブラドール・レトリバー
*ゴールデン・レトリバー

== 治療法 ==
{| class="wikitable"
|-
! !! 内科的 !! 外科的
|-
|治療の効果発現機序||抗炎症作用による貯留液の産生抑制||持続的排液と癒着促進
|-
|適応||発症初期<br />全身麻酔不可<br />術後管理が困難||慢性経過<br />重度の慢性外耳疾患<br />内科的療法で効果がない
|-
|メリット||全身麻酔・バンテージは不要<br />低コスト<br />処置時間が短い<br />耳介の変形が少ない||再発が少ない
|-
|デメリット||再発の可能性が高い||耳介の変形<br />全身麻酔・バンテージが必要<br />縫合によって耳介動脈の分枝を巻き込むことによる耳介の壊死
|}

== 内科的 ==
=== トリアムシノロン単独 ===
手技
耳血腫の貯留液を除去。すべて除去してしまうと腔が密着してしまい、腔内への薬剤注入が困難になるので、貯留液を少量残量させておく。患者が比較的協力的である場合、生食で腔内を数回洗浄する(腔内の免疫複合体や炎症性メディエーターを除去)。
患部を軽く圧迫し、貯留液の漏出が止まるのを待つ。
ケトコナルト-A水懸注0.5ml(=5mg。血腫腔の大きさと注入薬の用量には相関はない)を耳血腫腔内に全量注入。もし、明らかに血腫腔が大きい場合は、生食などで希釈する。
数日以内(大体が3日以内)に再度貯留するようであれば、再度同じ処置を実施。治療期間中、圧迫・固定などは必要なし。

治療の経過観察
1回もしくは2回目の処置の3~4日後に突然、急速に耳血腫が消失するようである。

予後
1~数ヵ月前後で再発することが多いが、同じ処置を1回行えば、3~4日で治癒する。

トリアムシノロン+Preの併用
手技
吸引除去
トリアムシノロン1mgを腔内に注入
Pre0.125mg/kg、BID、1週間(猫では0.25mg/kg)
上記をSID、1週間

== NSAIDs ==
利点
耳介の変形も非常に少なく、貯留液の吸引も必要としないきわめて簡便な方法。

適応
保定困難な症例
フィステルまでも形成し、数ヵ月以上を経過した症例
外科手術後再発した難治例

方法
本薬剤(リマダイル)を常用量で3週間以上投与。
投与開始後1週間ではなんら改善が認められないことを認識しておく。

== 外科的 ==
適応
フィブリン塊が血腫腔内にできているような慢性経過の症例(内容が吸引できない)
内科療法で改善しなかった場合(4回以上)
患者が非協力的(針で吸引さしてくれない)
耳道の奥を精査・洗浄したい場合や外耳道の手術を同時に行う場合

術式
パンチを用い、血腫の中央とその周辺に耳介凹面側から血腫腔に到達するように数ヵ所を穿孔させ、内容を除去し、生理食塩水で洗浄。
穿孔創の間を非吸収糸で耳介長軸に平行に全層もしくは裂開した軟骨同士を確実に接着させるようにマットレス縫合(耳介の血管を縫合しないように)を数ヶ所行う。

術後管理
抗生剤
バンテージ(交換1~3日間ごと)
エリザベスカラー
抜糸(パンチ孔が塞がる頃)
ビューロクラット管理者
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