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悪性黒色腫

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メラノーマ(Malignant Meranoma)はメラニン細胞に由来する腫瘍である。 口腔内(歯肉や舌)や粘膜に頻繁に発生するが、皮膚にも発生する。 メラノーマは悪性度の高い腫瘍。(メラニンが含有していないほど悪性度が高い傾向)→肥満細胞腫もそうだがあるべきものがない様な異形成には注意を払う。

  • 紫外線によってチミン二量体が形成 (DNA が損傷)されるため起こる(皮膚の話)。
  • 転移率はステージにより異なるが大体症状がでて来院している段階だと80%であると考えられている。
  • 転移はリンパ行性か血行性どちらもありえる。
  • 本腫瘍は病理学での分類上非上皮性かつメラニン産生細胞の腫瘍である。良性のメラノーマも存在するが良性黒色腫の解釈が臨床医と病理医で錯綜している。
    • 例えば皮膚のメラノーマは良性であることがあるが良性黒色腫の(病理学の)定義から外れている。←この事に関して管理人は調べたけどわかりませんでした。ご教授頂けるとありがたいです。
  • 肛門周囲に発生することもある
  • 肺に転移するのは甲状腺癌・血管肉腫・黒色腫・骨肉腫・悪性の乳腺腫瘍などを押さえておこう。
メラニン転移
細網内皮系細胞によるメラニン貪食
  • MRI(脳)ではT1/T2=白/ 黒( 高信号/ 低信号) パターンを示す

ER対策

病因・病態生理

疫学

  • 黒色腫は犬豚馬に多い
    • 犬は口腔内での発生は悪性度が高い
      • 犬では皮膚・口腔内・爪床に原発するが、皮膚では良性のものが多く、口腔内と爪床では悲性度が高い。
      • 猫では、眼球、眼瞼に発生する割合が多く、悪性度は高い。扁平上皮癌と鑑別がいつも気になります。
    • 犬と猫での全体での発生割合は「犬5%で猫1%以下。」
    • 犬の発生頻度:眼性黒色腫<皮膚黒色腫<口腔黒色腫
    • 猫の発生頻度:皮膚黒色腫、口腔黒色腫<<眼性黒色腫
    • 馬は芦毛に多い。会陰部や尾根部に発生しほとんど悪性である。また無メラニン色素性は特に悪性度が高い。
  • 眼の黒色腫は犬猫ラットで確認されている。
  • 猫は前部ぶどう膜黒色腫が多い

  • 上記動画では病理検査のために虹彩を採材している。最終的に眼摘
悪性度
口> 手足> 体幹 (肺やリンパ節に頻繁に転移する)

臨床症状

診断

  • 血液検査
  • 尿検査、
  • 局所リンパ節の FNA
  • 胸部レントゲン
  • 非顆粒性のメラノーマは軟部組織肉腫との区別が困難な場合があり、病理検査が返ってきた時に確認しましょう。
    • 病理医の先生にはメラン A や S100、チロシナーゼや PNL2の免染や、フォンタナマッソン(メラニン顆粒は黒く染まる)などの特殊染色まで行ってくれる先生もいらっしゃるので鑑別できることもあるそうです。
  • 胸水があるなら念のため塗沫を確認し、メラニンを貪食しているMφがないかみておく
  • 東レからガンマーカーが出ている模様。まだ発売なし?

尿検査

メラニン尿(暗褐色〜黒色)が認められることがある(人)→管理人は見たことないです。人では肝転移した方で発現しているようです。

血液検査

画像検査

エックス線

少ないですが念の為に腹部もチェックしています。

エコー

CT・MRI

CT

単準CT
造影CT

MRI

T1強調画像
T2強調画像
FLAIR画像

治療

  • 化学療法は補助的に使う。まずは外科的に切除。
  • 約30%の症例が部分寛解、約60%の症例が完全寛解する(放射線療法も良いそうです)
  • 補助療法は化学療法と免疫療法。免疫療法は資料がないので本ページでは割愛→人ではIL-2 療法というワクチン療法がある模様です。
  • 小林正行先生(農工大)がフィロコキシブで症状緩和目的でのコントロールを発表されていました(出典忘れました)
  • カルボプラチン、チロシンキナーゼ阻害剤、メトロノミック療法が補助療法として用いることができる。
    • カルボプラチン 150~200 mg/m2を250ml以上の5%ブドウ糖液に希釈し1hで静脈内投与
      • 犬:初期150~200mg/m2で開始
      • 小型犬:~250mg/m2まで漸増
      • 中型犬:250~ 300mg/m2まで漸増
      • 大型犬:300~350mg/m2まで漸増
      • 猫:200~225mg/m2
    • ドキソルビシン
      • ドキソルビシン30mg/m2 100mL生食に希釈し60分かけて静脈内投与
      • 犬(BW10kg以下): 1mg/kg
      • 犬(BW10kg以上): 30mg/m2
      • 猫: 1mg/kg~25mg/m2
        • カルボプラチンもドキソルビシンも使用期間中は週一回は血液検査を行い、好中球数が3000/μL以上、あるいは血小板数が75000/μL以上であることを確認して骨髄抑制がないかを確認(特に猫)
  • DNAワクチン

ONCEPT™

‎www.petcancervaccine.com/Pages/default.aspx

原発腫瘍の外科的切除に続くイヌにおける口腔悪性黒色腫のための補助的な処理としてのヒトチロシナーゼをエンコードする異種DNAワクチンの安全性と効果 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター

A retrospective analysis of the efficacy of Oncept vaccine for the adjunct treatment of canine oral malignant melanoma

2015年8月のコラム|コラムのバックナンバー|南大阪動物医療センター|大阪市平野区の動物病院

予後

  • 裁判事例を見ている限りでは焦点は「完治せず治療期間中に死亡」というケースで飼い主さんたちがきちんとインフォームされていない、もしくは受け入れられないという事があるようです。これを防ぐため治療に対して意欲がある飼い主さんへの確認作業をしたほうが良いかもしれません。
  • 外科手術のみ→平均生存期間は150−318日、1年生存率は35%以下。
  • 無治療の平均生存期間は65日

その他

  • イヌ悪性黒色腫におけるエンドセリン受容体拮抗薬の有効性の検討 (福本真也,永本哲朗,打出 毅) 酪農学園大学獣医内科学教室