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子宮蓄膿症

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雌の生殖器疾患
子宮蓄膿症(pyometra)
パイオ、もしくはパイオメトラと言う先生もいる。牛と犬で起こるが、他の動物種では頻度が少なめ。プロジェステロンの刺激により子宮内膜の嚢胞状増殖が起こり、そこに細菌感染が引き続き起こることにより誘発される疾患である。なお牛は死亡した胎子が二次的に化膿するが犬の場合は発情期後での発症がメインである。
  • 経験上メスシュウナウザー系統は高確率でパイオに陥るので関連犬種のオーナーに強く勧める

ER対策

未非妊とCRPとエコーで確定させておくと早い。またステロイド使用履歴がないかを確認する。夜間で対応する場合主要症状のベースにパイオが影響している事も多く、基本未非妊を見かけたらパイオを疑う様にする。 状態が悪い場合心臓が問題なければ点滴を流して循環の改善を最優先に行う。(ショック対策) 菌血症・敗血症がない限りすぐに外科には持っていかないようにしています。

病因・病態生理

ヒート後二週間経過は「あ、なんかいやだな・・・」程度の感想を持っておくといいかもしれません。 発情期:子宮頸管が弛緩し、細菌の侵入が起こりやすくなる。ただし、発情期には強力な殺菌物質が存在することと全身の免疫反応も働くので感染は成立しない。 発情休止期初期:殺菌物質が働かないということ、リンパ球の働きが低下すること、加齢などによる動物自身の抵抗力の低下が加わって感染成立するといわれる。 本来:胚が着床するために、子宮内膜は嚢胞状に増殖、栄養分も豊富にし、免疫反応も抑えて準備している。それが、胚の代わりに細菌が定着して増えてしまうのである。

疫学

  • 死亡率は約10%前後

臨床症状

  • 外陰部からの排膿
  • 多飲多尿
  • 漠然とした症状
    • 食欲不振
    • 元気消失
    • 嘔吐
    • 下痢 

診断

尿検査

蛋白尿→免疫複合体関連の疾患がパイオの手術後に起こることもある(例えば:糸球体腎炎、無菌性結節性脂肪織炎、免疫介在性溶血性貧血などなど)

血液検査

白血球の増加、左方移動。ただし、慢性経過をとっていたり、重度の感染では正常値もしくは減少。 PCVの低下、TPの上昇 BUN,CREの上昇 ALKPの上昇 DICを起こしている場合、血小板数の低下

画像検査

子宮内の液体貯留がエコーフリーな像として確認されると書いていることがあるが以下で注意書き読んでください。

エックス線

腫大した子宮の確認。 小腸を尾背側に変異させる大きなコイル状または管状に見られる。

エコー

国内だけの現象だが子宮腔がエコーフリーで描出されると言う様に勘違いしている人がまれに存在している。教科書に確かにエコーフリーであると言う記述がなされているが、牛や犬含めて考えても海外の教科書の原文を読む限りではecho源性もある(現場で働いてたらみんな分かることだが)

  • 犬の場合膀胱の背側の管状構造を探す
  • 臨床症状の程度は蓄膿の量や子宮の拡張と相関しない。よってechoで貯まっていないからといって除外するのは早い。

CT・MRI

治療

アグレプリストンが内科治療として考えられるが、ブリーダーか手術が何かしらの理由で厳しいための治療である。

  • 外科
    • 循環改善後に卵巣子宮全摘出手術を実施。
    • 合併症や術後に注意
      • SIRS→DICの併発の危険性がある場合、
      • パイオに限らずだが全身性疾患後に糸球体腎炎などの免疫複合体の関与が疑われる様々な疾患が併発する事がまれにある。
      • 免疫介在性疾患がおこるケースがある→特に血液関連の





牛の妊娠と子宮蓄膿症の鑑別


鑑別点

妊娠

子宮蓄膿症

子宮の膨満

通常単胎のため妊角側が膨満し、

左右不対称

通常左右の子宮角は

対称的に膨満

子宮の収縮性

妊娠3ヶ月まではかなり収縮性がある

収縮性がなく、弛緩している

子宮の波動感

水様性の波動感

粘稠性の波動感

子宮壁

柔軟で弾力がある

非薄あるいは肥厚し、

弾力性を欠く

子宮動脈

妊角側が発達肥大し、

3ヶ月の終わりには特異的震動が発現

左右同等で特に発達せず

胎膜、胎盤、胎子

35日を過ぎると胎膜が触知でき、

3ヶ月を過ぎると胎盤節および胎子が触知できる

触知されない