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大腸菌

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大腸菌症

  • 1982年 腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli ;EHEC)は米国で発生したハンバーガー食中毒事件の原因として分離されたO157;H7が最初の分離例。
  • 1984年以降、米国やカナダで集団食中毒事例発生。
  • 1985年 溶血性尿毒症症候群(hemolutic uremic syndrome;HUS)との関連が明らかとなる。
  • 1996年5月 岡山県でO157;H7の食中毒発生。
  • 1996年7月 大阪府堺市で大規模な食中毒発生。有症者9,451名、入院者1,808名、死者12名。
  • 二次感染もあり食中毒越えた感染症。

大腸菌の種類

  • 一般大腸菌
  • 病原大腸菌 下痢原性大腸菌
    • 腸管病原性大腸菌(EPEC)
    • 毒素原性大腸菌(ETEC)
    • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
    • 腸管凝集性大腸菌(EAEC)
    • 志賀毒素(Vero毒素)産生性大腸菌(STECまたはVTEC)
      • COLOR(FF0000);腸管出血性大腸菌(EHEC)
      • non*pathogenic EHEC

病原体

  • 通性嫌気性のグラム陰性桿菌。
  • 菌体抗原(O抗原)でO1~O153、易熱性抗原(H抗原)でH1~H57に分類。莢膜抗原(K抗原)もある。
  • EHECの血清型;O26,O103,O111,O118、O128,O145,O157。国内分離株の80%がO157。
  • 病原因子
ベロ毒素/志賀毒素様毒素(VT/SLT)
O157はVT1(=志賀毒素)とVT2産生。現在では毒素はSTX1とSTX2、遺伝子はstx1 と stx 2。遺伝子はファージ上。STX1個のAサブユニットと5個のBサブユニットからなる。  
接着に関与する因子
eaeA遺伝子産物であるintiminを介して細胞に付着。付着した粘膜上皮の微絨毛は伸長・萎縮・消失し、上皮細胞内にアクチン線維の集積がある(AE病変;attacing& effacing)
溶血素(hemolysin)
プラスミド上のehx1遺伝子がコード。

O抗原とH抗原

H抗原
鞭毛保有菌は培地上を遊走して培地表面全体に広がる現象(hauchbildung)を示すことから鞭毛抗原をH抗原と呼ぶ。
O抗原
鞭毛非保有菌はこのような現象が起こらない(ohne hauch)

細菌における遺伝子の取り込み

細菌ゲノムの15%は外来性の遺伝子である。→Ochman H.et al., Natrure,405;299*304, 2000

  • 異化経路 Catabolic pathways
  • 病原因子 Virulence determinants
  • COLOR(FF6633);薬剤耐性 Antimicrobial resistance

外来遺伝子を取り込む仕組み

+接合伝達 conjugation +形質導入 transduction +形質転換 transformation +トランスポゾン transpozon +インテグロン integron

A*B成分毒素

A成分(active subunit)
毒性を発揮する成分
B成分(binding subunit)
細胞のリセプターに結合する成分

牛のEHEC感染症

  • 2週齢以内の子牛で混合感染例が多い。
  • 水様性下痢、粘血便、血便、脱水
  • 血清型;O5;H*,O26;H11,O103;H2,O111;H*,O118;H16,O121;H19,O145;H*など。
  • stx遺伝子、eaeA遺伝子を保有。
  • 小腸下部及び大腸にAE病変。
  • 腸粘膜にSTXリセプターがないので、AE病変形成に伴う組織障害で下痢発現。
  • 無症状で保菌するものもある。日齢が進むと抵抗性。
  • ウシ飼育農場汚染率 11.8%、ウシの保菌率 0~13.5%。
  • 米国ではウシの保菌率 27.8%、と体表面汚染率 43.4%。
  • 間欠的に1*2ヶ月排菌。菌数は100*104/g。

人のEHEC O157感染症

  • 感染経路;加熱不十分な食肉、二次汚染食品、水系感染、患者との接触
  • 感染菌量 10~100個。
  • 潜伏期;2*14日
  • 発熱、倦怠感、下痢、疝痛性腹痛、血便、鮮血性下痢。
  • 出血性腸炎 38*60%
  • 合併症 
    • 溶血性尿毒症症候群(HUS)
      • 出血性腸炎から10%。小児や高齢者で多い。
      • 血小板減少、溶血性貧血、急性腎機能障害
    • 脳症
      • HUSで認められる。


リンク

大腸菌に感染してマラリアから生体をまもる

An enteric virus can replace the beneficial function of commensal b... - PubMed - NCBI

  1. 大腸菌に感染するとマラリアの糖鎖蛋白に対する抗体が産生される
  2. 自然免疫を誘導するため「リガンド」や「アジュバント」を加える必要がある