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回虫の幼虫移行症

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回虫

  • 線虫
  • 動物にはそれぞれの種で固有宿主(感染後成虫まで発育して次世代の虫卵を排泄するまで)となる回虫がいる。
  • 動物固有の回虫がヒトに侵入すると成虫へ発育できず幼虫ステージのまま体内にとどまることによる疾患を回虫幼虫移行症(larva migrans)という。
  • ヒトに侵入する回虫として、イヌ回虫、ブタ回虫、アライグマ回虫がある。

原因

  • ヒトにおける回虫幼虫移行症の主な原因は、
    • イヌ回虫(Toxocara canis)
    • ブタ回虫(Ascaris suum)
    • アライグマ回虫(Baylisasascaris procyonis)
  • 感染幼虫を含んだ成熟卵の摂取。
  • 成熟卵は熱と物理作用を与えない限り数年は安定。

発育環

  • 固有宿主で維持される回虫の感染環は異なる。
    • イヌ回虫
      • イヌから排出された虫卵の経口摂取と母イヌからの
      • 胎盤感染と乳汁感染。
    • ブタ回虫
      • 成熟卵の直接感染。
    • アライグマ回虫
      • 成熟卵の直接感染と幼虫に感染しているネズミの捕食
  • 非固有宿主に侵入した回虫は固有宿主での移行
    • 経路に加えて全身の臓器に侵入する。
      • イヌ回虫;脳、眼
      • アライグマ回虫;中枢神経系

疫学

  • イヌ回虫
    • 世界各地で発生。
    • 日本でも各地に分布。幅広い年齢層に抗体保有。
    • 感染経路;子犬との接触、砂遊び、野菜の摂取。
  • ブタ回虫
    • 世界各地から報告。
    • 国内では南九州での集団発生報告。各地から豚糞を利用した有機農法との関連による発生報告。
    • 最近ではニワトリやウシのレバ刺しによる感染報告もある。
  • アライグマ回虫
    • 米国で報告。日本での報告なし。

症状

  • 内臓移行型
    • イヌ回虫とブタ回虫で起こる。発熱、倦怠感、咳。
    • 好酸球増多。
  • 眼球移行型
    • 主にイヌ回虫。視力障害、硝子体混濁、葡萄膜炎。
    • トキソプラズマ症との鑑別必要。
  • 中枢神経移行型
    • アライグマ回虫。好酸球性髄膜脳炎。

診断

  • 臨床診断(生食歴、動物飼育歴、好酸球増多、画像診断)
  • 免疫学的診断(ゲル内沈降反応、FA、ELISA)

予防・治療

  • 洗浄の励行。
  • レバ刺し等の生食を避ける。
  • 固有宿主の駆虫は容易(ベンズイミダゾール系製剤、イベルメクチン製剤)
  • ヒトではアルベンダゾールが有効。しかし、中枢神経型の駆虫は困難。