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カテゴリ:糖尿病

4,795 バイト追加2017年10月16日 (月) 23:54
/* 治療 */
===== 超持続型インスリンの投与(ランタス;ノボリンNより作用は弱く、長時間持続) =====
猫の場合、最初の3日間は血糖値がほとんど下がらないことが多いため、インスリングラルギン(ランタス)の投与量は治療開始1週間は増やすべきではない。
 
=== 血糖値のコントロールの指標 ===
*尿糖
**犬;180~200mg/dl、猫;200~300mg/dlを越えた場合に、腎臓でのグルコース再吸収能の閾値を越えて尿中に排泄されるようになる。
**尿が生成されてから排泄されるまでの時間を考慮すれば、尿糖が反映するのは数時間~半日程度の血糖値の状況であるといえる。よって、病院内での一過性の高血糖は尿糖としては現れないため、尿糖の測定は糖尿病と一過性の高血糖の鑑別に有効。ただし、慢性の疼痛などで持続的に高血糖となった場合に尿糖(+)となることがある。
**<解釈>
***常に尿糖(-) ;インスリンを減量
***(-)~(+) ;そのまま維持
***(2+)~(3+);血糖曲線、フルクトサミンなどで再評価
 
*ケトン尿
**インスリンの作用不足を示唆しており、通常は尿糖を伴う。
**尿糖とケトン体の自宅でのモニタリングにより、陰性となった場合は、糖尿病の回復、または低血糖の前兆であることが示唆される。一方、尿糖が増加している場合は、インスリン抵抗性もしくはソモギ効果が生じていることを示唆される。このような場合、血糖値曲線による再評価が必要。
**自宅で週に1~2回検査する。
 
*飲水量(≦80ml/kg);おおむね良好。
*尿量
*体重
*食欲
*活動性
*空腹時血糖値;150~250mg/dl(あくまで理想)
 
*血糖値の最低値
**80mg/dl以下;インスリンの量を25~50%減らし、7~10日後に再評価する。
**80~250mg/dl;
***インスリンの作用時間
****10時間以下;同じ投与量で1日2回;7~10日後に再評価
****10~14時間;投与量を10%減らし、1日2回;7~10日後に再評価
****14時間以上;投与量を25%減らし、1日2回;7~10日後に再評価
**250mg/dl以上;インスリンの量を増やし、7~10日後に再評価。ただし、犬;1.5U/kg以上、猫;8Uもしくは1.5U/kg以上の投与下でも250mg/dlであれば、インスリン抵抗性に対する診断的評価を実施。
 
=== 糖尿病コントロールを妨げる原因 ===
#肥満;インスリン受容体のダウンレギュレーションが起こり、インスリン受容体の結合親和性が低下し、受容体結合後の細胞内シグナルが進まない。
#膵炎;循環血中の糖尿病誘発性ホルモン(グルカゴン、コルチゾル、カテコールアミン、成長ホルモン)が増加する。
#細菌感染;2)と同様。
#腎不全;組織のインスリン感受性の低下。
#下垂体性クッシング(PDH)
#先端巨大症;インスリン受容体数の減少。
#副腎腫瘍
#医原性糖尿病(ステロイド、黄体ホルモン、ソモギ効果)
#甲状腺機能亢進症;インスリン合成を低下させることがあり、インスリンの受容体結合が阻害され、受容体結合後の細胞内シグナルが進まない。
#その他(悪性腫瘍、泌尿器疾患、消化器疾患、血液疾患、皮膚疾患)
 
=== 周術期のインスリン療法 ===
インスリン療法をしている症例で手術を実施しなければならない場合のフロー
==== 手術前日 ====
*普段通りの用量のインスリンと食餌。
*午後10時以降、絶食。
 
==== 手術当日の朝 ====
*<血糖値が>
**<100mg/dl;インスリン投与はしない。2.5%もしくは5%ブドウ糖液開始。
**100~200mg/dl;通常の1/4量のインスリン投与。ブドウ糖液開始。
**>200mg/dl;通常の1/2量のインスリン投与。ブドウ糖液は血糖値が150mg/dl未満になるまで控える。
 
==== 手術中 ====
**術中;30~60分ごとに血糖値測定。周術期の血糖値目標は150~250mg/dl
**低血糖を避けるために、2.5%もしくは5%ブドウ糖液を点滴。
**高血糖を避けるために、レギュラーインスリンを間歇的に投与(?)。
**血糖値が300mg/dlを超えた場合、ブドウ糖液を中止し、30~60分後に血糖値測定。
**300mg/dlを越える高血糖が継続する場合、普段使用している持続型インスリンの20%程度のレギュラーインスリンを筋肉内投与。レギュラーインスリンの投与間隔は4時間以上あける。1回目の結果で2回目以降の量を調節。
 
==== 手術翌日 ====
**普段通りのインスリンと食餌。ただし血糖値の測定は必ずする
**食べられない症例には、ブドウ糖液点滴とレギュラーインスリン6~8時間毎にSCで維持。
== 関連疾患 ==
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