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カテゴリ:糖尿病

3,662 バイト追加2017年10月16日 (月) 23:24
/* 治療 */
== 治療 ==
[[インスリン]]については別ページでまとめています。
=== 治療上の注意点 ===
*インスリン治療の目的は、DKA、HONKの予防だけでなく、合併症発生の可能性(犬;白内障、猫;神経障害からの回復、腎不全の進行抑制、糸球体腎症、慢性膵炎)を低くする。
*治療目標
**尿糖(-)
**血糖値の維持範囲;犬;80~200mg/dl(←白内障がない場合。白内障があれば~250mg/dl)
**猫;100~300mg/dl
*インスリン投与後数時間~次の食餌までの時間に低血糖昏睡が必ず起こる可能性があることを飼い主に知らせておく。
*糖尿病での合併症は高血糖による障害であるため、低血糖によるリスクを考えると、厳格な血糖コントロールは推奨されない。
*超持続型インスリンを用いる小型犬や猫では、食物からのエネルギー流入が終わった時間帯の10~12時間にインスリンが作用する。
*猫やヒトの糖尿病の発生において、β細胞の機能不全はβ細胞の破壊よりも重要な影響を与えている。β細胞の機能不全を導く機序は複雑であり、高血糖による直接的な影響の他に、異常脂質血症、レプチン、サイトカインなどの多くの要因が関与している。
*猫の糖尿病では、症例の30~80%(NIDDMの症例。血中インスリン濃度の測定でIDDMとNIDDMとの鑑別が可能)が適切な治療でインスリン療法から離脱できたとの報告がある。治療開始後約4~6週間で正常に戻る。
*猫では状態が安定し、血糖値が350mg/dl未満であれば食餌療法のみで治療を開始する。
*猫ではインスリン抵抗性が存在するので、抵抗性の軽減のため、各種感染症の管理、ストレスの除去、膵炎制御、肝リピ、肥満猫の減量を考慮する。
*猫に最も多くみられる長期経過後の合併症は、糖尿病性神経障害とDKAである。
*NIDDMの猫の治療目的は、グルコース毒性を可逆化し、進行性のβ細胞の破壊を遅延または停止させ、末梢組織のインスリン抵抗性を改善すること。
;グルコース毒性:高血糖の程度に依存する、不可逆的なインスリン分泌障害。病理組織学的所見は、グリコーゲン沈着および細胞死。
=== 食餌療法の注意点 ===
*猫では食餌のみで管理が可能なことがある、もしくは食餌療法によってインスリン治療から離脱できる・インスリンの必要性を低下させる可能性があるため、食事管理は非常に重要。もし、食餌療法のみでは反応がみられない猫は、β細胞が回復不能な機能不全状態に陥っていると考えられる。
*重要なのは適切な体重にすることです(体重の減少率は、1週間に全体重の1~2%にするのが望ましいです)。
*ヒトと犬では、高線維食は食後の高血糖を軽減することが証明されている(食物線維の割合が増えると、腸管からの炭水化物の吸収が抑制される)ため、猫でも推奨される。
*肥満防止食、低カロリー食、血糖値の変動が少ない食餌が望ましい。ただし、確実に食べるフードにする。
*猫は他の動物よりも炭水化物の消化吸収が緩徐・代謝能力が高くないと言われており、標準的なキャットフードは炭水化物含有量が多くない。
*蛋白質を多量に含む食餌を与えると、インスリン投与量を抑えられることが明らかにされている。
== 関連疾患 ==
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